イスタンプールにいた頃、金角湾に面したフェリー埠頭で売っていたサバサンドが好きだった。サバのサンドイッチというとなんか気色悪く聞こえるかもしれないが、その場に置かれた取り放題のタマネギと一緒に食べるとこれが思いのほかウマいのだ。
そしてサバサンドをほおばると僕はいつも埠頭を行く人に混じってガラタ橋を渡り、暇そうなトルコ人のオジさん達と一緒に釣糸をたれていた。この国にはおもしろい事に日本と同じサビキ仕掛けがありオジさん達はこれで橋の上からアジを狙っている。
しかしただのサビキ釣りのはずなのにこれが意外にも奥が深く、釣れる人には4連、5連と釣れるのに僕にはなぜかさっぱり釣れない。ともかくこうなったら一匹でも釣らないと悔しいので何度か通っているとそのうち釣れる人との違いが分かってきた。
よく見ると釣れる人は仕掛けを真下に沈めないで少し投げている。その方がアミカゴや撒き餌を使わないサビキ釣りではよりギジエとしての効果を発揮するようだ。僕の手持ちの竿では短すぎてなかなか投げるのは苦しいけど何度かやっているうちについに僕にもイスタンプールのアジが釣れた。釣りの楽しみのひとつは釣れない魚を研究して釣ることかもしれない。苦労して釣ったアジだったが一匹釣れたらもうなんか満足してヤル気がなくなってしまった。
そこで別の魚を釣ってやろうとアジアとヨーロッパを隔てるボスポラス海峡にバイクで行く。ヨーロッパ側の岸沿いを走りながら観察するがこの水深もあり潮通しのいい水道には魚市場でみた長さより幅の方がある変なヒラメがいかにもいそうだ。もしそうならなんとか釣ってみたいと地元の釣人達に聞いて回るが残念ながら何の情報も得られない。
それでもこりずに調べながら岸沿いを走っていくとそのうち黒海まで行ってしまった。もっと本格的な投げ竿とリールがあればボスポラス海峡は絶対大物が釣れるはずだ。今度来る時はきっと投げの道具を持ってこよう。そう思いながらイスタンプールを後にした。 |