4のツボ 食
旅する冒険ライダー 坪井伸吾のページです

 

 

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読者からこのコーナーはツーリングがテーマなのにバイクの話が少ないという手紙が来た。確かにそうだけど、お金や言葉の話とツーリングを結び付けるのはひじょうーに難しい!そういうわけでどうぞご勘弁を。


さて今回のテーマは食。バイクと食の関係とは?みなさんは自炊を続けるようなツーリングをしたことがあるだろうか?もしあるなら荷物が増えてきっと苦労しただろうと思う。というのもバイクには荷物を積める限界があるからだ。快適に走るには荷物は少ないほどいい、しかし途上国を含む海外ツーリングにはどうしても自炊道具を含めたキャンプ用品が欲しい。なぜならいつ予期せぬ野宿があるかもしれないからだ。僕は地図で見てキツそうなルートだなと思ったら水と米を荷物に加えて走っている。

米は経験から言えば、世界中たいがいの所で手に入る、しかもかさばらず長持ちするし、それ自体で充分メンデッシュになる。例えば野菜が余っていたら一緒に煮れば雑炊がつくれるし、また何もないなら塩をふりかければ、それはそれでまたいける。 でも塩ゴハンなんかじゃイヤ!という少しリッチなアナタのためにオカズについて考えてみよう。

まず食材を安く仕入れるにはスーパーより市場に行くことをお勧めする。多分ほとんどの国では日本の物価と比べるとあきれるほど安いと思う。しかし!喜んですぐに買ってはいけない。さもないと後でもっと安い店を見つけて後悔するだろう。最初にすべきことはとりあえず歩き回って物の相場を知ることで、それから値段交渉に入るのが正攻法だが、ここでひとつタダで食材を手に入れる方法を紹介しよう。

まず旅行者があまり来ないような庶民の市場にまぎれこむ。そうすると周囲は異邦人のアナタに熱い視線を注ぐだろう。そこで作戦1、まず話かけて来た人と友達になり、市場を案内してもらう。人の良さそうなオヤジの店で立ち止まり『これ何?こんな果物初めて見た。日本にはこんなのないよ』と驚いてみる。するとかなりの確率で『ちょっと食ってみるか』と言ってくれる。

作戦2、海外の市場では物はキロ単位で売られていることが多い。そこで店の前で『おいしそうだな、これ。でもこんなにいっぱい買っても持っていけないしなー、一個だけでいいんだけどなー』と考えるフリをしながらボヤくとこれまた案外もらえたりする。

ちなみにこれらの技は僕が猿岩石状態に陥った時に編み出したものだ。さてここで考えて欲しいのは市場の人は僕に喜んで食べ物をくれた事実だ。なぜだろう。立場を変えてアナタが町で出会った聞いた事もないような国の人を市場に案内したとしよう。彼が例えばミカンを見て『このオイシそうな果物は何ですか?私は初めて見ました』と言ったらアナタはどうしますか?僕ならきっと「ミカン」について知ってるかぎりの事を説明し『ひとつ食ってみろよ、うまいから』と彼に食べさせるだろう。そしてもし彼が『うまい』って言ってくれたらすごくうれしいと思う。今、例としてミカンをだしたが、これがもっとより日本的な物、例えばイカの塩からだったら僕はもっとうれしい『なぜか?』きっと食がその国の文化だからだろう。

彼がミカンを『うまい』といった瞬間に『やった!分かってくれた』という安堵感と日本を共有したような感情が僕の中に起こったのだ。たったこれだけの共有感でも僕はきっと彼が好きになるだろうし、もっと日本について知って欲しくなる。僕が前にアフリカのとある部落に迷い込んだ時、村人に取り囲まれて裁判にかけられたことがあった。もうダメかと思ったがしばらくして出されたゴミバケツに入った緑色の液体を飲んだら、僕を囲んでいた人達の表情が急にほぐれ無罪放免になったことがあった。この時彼等もきっと僕との共有感を体験したから許してくれたんだろう。どうも国や人を知りたいなら本を読むより一緒に何か食べるほうが近道みたいだ。

ウーム、またもやバイクに関係ない話になってしまった

 

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