3のツボ 言葉
旅する冒険ライダー 坪井伸吾のページです

 

 

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「バイクで世界、まわってきました」と言うと、かならず「それじゃ英語ペラペラなんですね?」と聞かれる。「はあ、まあ、それなりに」と答えると「やっぱりね。だからそんな事、出来るんですよ私は英語出来ないから無理なんです」いったい何度この会話をしただろう。英語が出来る出来ないと海外旅行に行けると言うのは全く別の話だ。にもかかわらず一番にこの質問がくるのは、みんな英会話学校のコマーシャルに洗脳されてるんじゃない? とまあ、なんかいきなり偉そうな出だしをしてしまったが僕らは自覚していないだけで案外、日常生活の中で当たり前のように英語を使っている。


例えばバイクの部品なんて、ほとんど英語だしバイクに乗らないオバちゃんでもハンドルとかブレーキが何か分からない人はいないだろう。国際会議の通訳を目指すなら話は別だが、単なる旅行ならそれで充分あとはアイサツの一つでも出来れば言うことなしだ。だから、もっと自信を持って大丈夫だ。

僕が10年前シドニーで免税店の面接に行った時、もう一人日本人が先に面接を受けていた。イタリア人のマネージャーの質問に彼はハキハキ答え、そして最後のDO YOU HAVE CONFIDENCE?にも彼は自信を持ってOFF COURSEと言い切った。そして次に僕の番になり、同じ質問がされた。しかし!CONFIDENCEってなんや?ともかく彼に負けるわけにはいかないので僕も自信を持ってSURE!と答えた。

面接修了後、彼に「あのー、CONFIDENCEってなんですか?」と聞いてみたら「いやー、僕もわかんないんです、でも何かあの雰囲気だとYESって言った方が良さそうだったんで」なんじゃ、そら!ハッタリやったんか。帰って辞書で調べてみるとそれは自信という単語だった。確かに、あの時僕らにはその単語の意味は分からなかった、でもマネージャーの求めている答はYESだという事はなぜかわかった。結局、あの時自信を持って答たのが良かったのか二人とも無事採用された。その彼が、もうすぐタイの外務次官になるとは世の中、何が起こるかわからない。

ちょっと話がそれてしまったが、要するに何が言いたいのかというと相手が何を言いたいのか、何を求めているのか感じ取れる能力が非常に重要だということだ。この場合、使われている言葉が英語なので一応の会話は成立しているが当然、世界には無数の言語があるから全く言葉が通じない場所もある。でも良く考えて欲しいのは、相手が人間だという事だ。会話はできなくてもコミニュケーションは出来る、例えばバリバリの青森弁のおばあちゃんの言葉を石垣島のおじいちゃんは多分分からないと思う、でも何を伝えたいのかはきっとわかるはずだ。同じ事は人種が違ってもいえる、僕がナミビア北部のヒンバ族の部落のはずれを通りがかった時、背の高いヒンバの戦士が手を上げて僕にアイサツした。同じアイサツをかえすと彼はそばに来て部族語で話し掛けてきた、しかしそれが通じないと分かると彼はちょうど頭上に来ていた太陽を指差し、次に僕の時計を指差し最後に腹をポンポンと叩いた。それから今度は僕を指差し、また腹をポンポンと叩き、次に自分の村を指差し手招きした。総合すると「昼だから腹が減った、お前は腹減ってないのか?腹減ってるなら俺の村に来い」という事だった。

海外を走っている間に僕のバイクは何度も壊れた。道端で苦労しているといつも誰かが助けてくれた。そんな時、言葉は通じなくても「なんとか彼を助けてあげたい」という気持ちは痛いほど伝わってくる。もちろん言葉が出来るほうがいいに決まっている、でも本当に大事な事は言葉が出来なくてもちゃんと分かるのだ。

 

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