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その日は嵐の夜だった。アフリカ南部ナミビアのキャンプ場にいた僕は風を避けるために便所の脇ぴったりにテントを張っていた。日も暮れて寒くなりテントの中で風の唸りを聞いていると一台のキャンプカーの明りがテントを照らした。外に出てみると白人のオバさんが仁王立ちしていて、いきなり『アンタいつ出ていくの?』という。

何言うとんの、このオババは!と思いながらも我慢して『今来たとこですけど』と答えると『フン!じゃ仕方ないわね』と言ってそのオババは子供二人と無言で僕のテントの真ん前にテントを立てた。こんな露骨な差別を受けたのは初めてだった。その時僕は南アフリカ人のマイクとアパルトヘイトについて話した事を思い出した。『マンデラが黒人と白人は平等だというのは良く分かるし正しいと思う。しかし俺らはジイサンの世代からそんな教育は受けてないんだ。理屈じゃ分かってもできないんだよ。』と彼は言った。そしてその目は白人以外のすべての人種にも向けられているとも。今大人達の抱えているジレンマを僕を汚い物を見るような目で見ていたあの子達もやがて抱えるようになるんだろう。そう思うとなんとも複雑な気分だった。

いきなりハードな出だしになったけどその国の抱える事情に因って国民性というのはやはりある。そしてそれは個人を超えてバイク乗りやバックパッカーという特殊な人達にも現れている。そもそもすべてをひっくるめて旅行者が発生する環境とはどんな条件なんだろう?1、まずは海外に行けるだけの経済的余裕。2、国が政治的に安定していて旅行制限が少ない事。3、海外の風景や文化に興味がある事。などだが、だとしたらアラブ人やインド人や黒人の大富豪ライダーとかがいないのはなぜなんだろう。

いや、それ以前に京都の観光地に集団でうろつくアラブ人とかがいないのはなぜだ?。このテーマについては旅行中良くバックパッカーの間で議論したものだ。しかしあんまり凡庸な答しか出てこないので黒人やアラブ人の学生にその質問をぶつけてみた。

彼等がいうにはお金を持っているくせにそんな汚いバスに乗ったり安宿に泊まったりする方が不可解だ。だいたいそんなお金があるならなぜもっといい家に住むとか仕事に投資するとか有意義な使い方をしないんだ。というのが大半だった。どうもお金や時間の問題じゃないらしい。

じゃ白人のバックパッカーはどうだろう。良く旅行者の間で僻地で旅行者と会ったらドイツ人か日本人だといわれているが僕もそうだと思う。ドイツ人は好奇心旺盛なのか完全主義なのか、なぜこんな所にって場所に良くいる。しかも結構ひとり旅が多い。以前アフリカで一度も国に帰らずに14年間走り続けているドイツ人カップルに会った事がある。彼等のバイクを見た時すぐにこのオーナーはドイツ人に違いないと思った。おもしろい事に見慣れてくるとバイクを見ただけでオーナーの人種が分かるようになってくる。他のヨーロッパ人のバイクとの違いの説明は難しいけどドイツ人はというとまずBMWが多い。やたら大排気量車を使う。荷物はアルミBOXを使いたがる。車載工具が完璧などだ。

じゃ逆にバックパッカーしてる白人が少ない国はどこの国かというと、これが意外な事にアメリカ人なのだ。確かにアメリカ国内を旅するアメリカ人はいくらでもいるし有名な観光地なら世界中でアメリカ人と会う。しかしこれがバックパッカーになると急に減るのはなぜだろう?。広大な土地を持っている国の人は敢えて他に行こうと思わないのだろうか?

以前ウガンダのキャンプ場でおもしろい光景にであった。そこはアフリカを旅するオーバランドトラック(1週間から1か月ぐらいの期間で国境を越えながら旅する旅行者用のワイルドなトラック、テントの設営やメシは基本的には全員でやる。)の中継地だった。ある日そこに来たドイツ人の集団は素人ばかりなのに全員で協力してあっというまに計ったような間隔でテントを立てた。しかし翌日に来たフランス人集団はみんな好き勝手にテントを立て、お互い協力しないので妙に時間がかかっていた。毎日違う国籍の集団行動みてるとやっぱ国民性っておもろいなぁとしみじみ感じた。

 

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