15のツボ 出会い

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バイクの魅力のひとつは機動力だと思う。行きたい気になればどこにでも行ける。だから観光地めぐりだってできるし、逆に何の情報もないミシュランの地図にすら破線で示されている所にだって行ける。そしておもしろいのは何も知らない所には予想できない発見や出会いがある事だ。ケニヤ北部のツルカナ族と出会った時もそうだった。


ご存知の方も多いと思うがアフリカ東部には大地溝帯と呼ばれる地殻の溝が走っている。そしてこのエリアは人類発祥の地でもあり文化人類学や地質学、考古学などの貴重な資料の宝庫でもある。とまあ偉そうに言ってみたけど当時はそんな事は知らなかった。ただ公共の交通機関が全くないそのエリアを走ってみたかったのだ。

しかし実際走ってみるとまるで4WDの競技用にでも作られたような道はなかなかきついし、ひょっこり現れるマサイ族以上に強烈な人達ともどう接したらいいか検討もつかなった。バラゴイという村についた日、夜、暇なので星を見ていると英語のできる二枚目の青年が『今日、私の村で結婚式があるから遊びに来ないか。』と話しかけてきた。
『そんな場によそ者の僕が行ってもいいのか?。』と聞くと『私のお父さんは酋長だから大丈夫だ。』という。本当に大丈夫かなと思いつつもせっかく誘ってくれているのでついていってみる事にした。

彼についてブッシュを進むと5分もするとロウソクしかない村はもうどこにあるのか分からなくなった。二人で満月に照らされた平原を進むこと一時間、イバラの柵に囲われた集落は突然現れた。青年に紹介され酋長に恐る恐る紙タバコをプレゼントすると酋長は青年を呼んで何か言った。どうやら村の中を歩いてもいいという許可が出たようだ。酋長は家の中から牛の皮を出してきて『そこに座れ』と身振りでしめしサツマイモとお茶を出してくれた。

酋長の許可が出たのをみて子供達が喜んで僕の回りに集まってきた。良く見ると男の子は裸に近い格好だが女の子は首にビーズを何重にも巻き付けて首長族みたいなファッションをしている。その時だった。いきなり酋長が怒りだしひとりの少年を杖で打ち据えた。おどろいた僕に青年が「この村ではお客さんの後に回る事は失礼にあたるんだ。」と説明してくれる。それにしてもなぜ彼等は僕を歓迎してくれるのだろう?

このオープンな雰囲気は、外人が良く来るのかと思って聞いてみると十三年前に日本人の学者が来たのと、時折イギリス人の学者が来るだけらしい。ますます訳が分からない。話をしてると酋長は『お前は独身か?』と聞いてきた。う!この質問はまさか!と思いつつ『そうだ。』と答えると酋長はニッコリして『どうだ。どれでもいいからひとり嫁にどうだ?。』と言った。参ったなと思いつつ謹んで遠慮したら酋長は少し寂しそうに『嫁は何人いてもいいもんなのに、そうか残念だな』と言う。すかさず青年が『酋長には4人の奥さんがいる。』と耳打ちした。

少し僕らの間に沈黙が流れた時、向こうで子供達の踊りが始まった。様子を見に行くといきなりお前も踊れと輪の中に放り込まれた。彼等の踊りを真似て手拍子に合わせてジャンプするとみんなの間に大爆笑がおこった。踊りには子供の踊り、女性の踊り、嫁取りの踊りといろいろある中には日本の民謡にある「どの子が欲しい、OOちゃんが欲しい」そっくりの踊りもあり、参加すると僕はなぜかツルカナ女性に大モテで次々と指名を受ける。

その時、茂みからヤリを持ったひとりの戦士が現れたのが見えた。ギクッとして見渡すと他にも銃を持った兵士やら戦士やらが僕らを取り囲んでいる。ヤバイと思った。しかし彼等はただ隣村から遊びに来た戦士達でやがて彼等も踊りの輪に入ってきた。

それにしても一体いつになったら結婚式は始まるのだろうか?。青年に聞くと『心配しなくても朝までには始まる。式の後は有志を募ってお祝いも兼ねてツルカナ湖まで歩くんだ。お前も来いよ。』という。しかしツルカナ湖ってここからだと100キロはある筈だ。その事を青年に聞くと彼は『そうだ。遠い2日かかる。』と言ってニッコリ笑った。ちょっと100キロはキツイので残念だけど僕は再び青年の道案内で一時間かけてバラゴイ村に帰った。

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