14のツボ ツワモノたち 2

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先月の逞しい女性旅行者の記事が思ったより評判が良かったので今月もそのネタでもう一本。

今から三年前、ケニヤの首都ナイロビはまっ昼間の大通りでいきなり強盗に襲われるようなそんな町だった。昼間ですらその状態なので夜ともなると通りの向かいにあるバーに飲みに行くのすら相当怖い。そこで自衛のため人を集めグループで行っていたのだが、、僕らがびびりながら飲みに行く店にはいつもひとりで飲んでいるハタチぐらいの茶パツの女の子がいた。

いい度胸してるなっと思って話してみるとサイトウさんというその子は、以前ロスのバーでホステスをやっていたという。ところがある日、強盗に襲われたという噂とともに彼女の姿は夜の酒場から消えた。もともと僕らは気まぐれな旅行者の集まりなので、ある日突然誰かがいなくなる事はべつに珍しくもないんだけど、彼女の場合、消え方があまりに唐突だったし、強盗に襲われたって話も真相を知る者がいないだけに何かすごく気になっていた。

それから10日後、肝炎で静養中の関根さんと『きのうまた日本人が強盗に襲われたらしいよ』と話をしてるところに強烈なレゲエ頭になったサイトウさんがあらわれた。そのあまりのインパクトに一瞬言葉を失いながら『久し振り、どうしてたん。?』』と聞くと『いやー、ちょっとあの店のオッサンともめて「お前覚えてろよ、絶対殺してやるからな。」とか言われちゃつて、ちょっとヤバいからこの辺に近付けなかったの。まあ今日ロンドンに飛ぶからいいんだけどね。』

一体何やったんだこいつ。『そのヤバイって何?前の強盗に何か関係あるの。』『ええ、まあ良く分からないけどあれってひょっとしたらあのオッサンが仕組んだ仕返しみたい。こっちのヤツって結構執念深いから。』『その強盗ってどんなヤツらだった。ちょっと聞かしてよ。』『うん、あの日私あの店でミニボトル注文したら、あのオヤジ180シリングなんて言うのよ。180って妙に高いじゃない。それで回りにいたケニヤ人にこのボトル本当に180もするのかって大声で聞いてやったの。

そしたらあのオヤジ「お前は酒屋か?」なんて言うもんだかアタシ頭にきちゃってボトル、オヤジの目の前でドボドボって床にひっくり返して「ウルセエナ!もういらねいよ、へっこんな店誰がもう二度とくるかっ!」って怒鳴って出ていってやったのね。そしたら後からあのオヤジ「お前覚えてろよ絶対殺してやるから!」とか言いやがって、それで一度ホテル帰ったんだけど気分悪いから夜中の三時頃ホテルのボーイ連れて飲みに行こうと階段降りたの。そしたらいきなりボーイが四人組の強盗に襲われて。私慌ててそのうちのひとりにケリ入れたら、後から棒で殴られて、これはヤバいと思って大声で叫んだの。

そしたらそいつら逃げてったんだけどそれって腹立つじゃない。それでポリス呼んでその辺さがしたら強盗の一人が浮浪者に混じって寝たふりしてるの見つけたのよね。それでさポリスにこいつだって言ったんだけどそいつがまたトボけるのね。で、頭にきたんでポリスとボーイと三人でさ、そいつフクロにしてやったの。ざまあみろって思ったけど、これじゃまたいつ仕返しされるか分かんないし、あのオッサンにもニラまれてるしでちょっとこの辺から避難してたってわけ。

で、明日ロンドン飛ぶし今日でケニヤも最後だから一緒に飲みに行こうかなと思って来たんだけどな。これからどう?坪井さん。』『いや待ってよサイトウさん、それでその強盗の一味に会ったら僕も一緒にヤラれるんじゃないの??。』『大丈夫だってやっつけちゃえばいいじゃない。』『ウーン、関根さんどうします。?。』『イ、イヤ、私は肝炎で療養中ですから酒は』『えー、関根さんズルいっすよ。・・・・仕方ないか、サイトウさんちょっと待ってて犠牲者集めてくるから』

こうして集められた何も知らない旅行者達を連れ僕は今まで最も恐ろしい送別会に付き合ったのでした。その後、噂ではなぜかケニヤが気にいった彼女はまたナイロビに帰ってきたという。彼女とその周囲の人が無事か今も気になる今日この頃だ。

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