木下黄太氏インタビュー
「放射能防御」と脱原発を巡る、もろもろの事情
「情報戦」とは 目の前のカネより情報の方が圧倒的に価値がある
木下 テレビって、報道できることが限られているので、せっかく取材しても報道できないことがよくあるんです。そうすると持ってる情報の行き先がなくて困ってしまうことがあります。
運営者 そういう優秀な記者は、各局に何人かいると思います。だいたい平均点の編集長とかデスクというのは、これまで報道されているパターンに、はまっているニュースであれば、これは報道しても大丈夫だと判断するわけです。
ところがそれまでにないパターンのネタだと、「これは載せられないよ」というのがいちばんの安牌なわけです。そうすると木下さんのような人が取って来たネタというのは上司としては困るわけですよ。
それでどうします?
木下 そういうものばかりではないですよ。テレビにあわない話も多いのです。勿論自分の取材した情報のみです。そこで初めて活字メディアとのお付き
合いが発生するんです。でもそれは、あくまで情報の遣り取りです。
でも情報を横流してお金に変える人たちも、業界には多いのでしょうね。
そういえば、ある会社の社長が「この内容がなぜスポーツ紙に漏れたのか。情報を知っている人間の通帳を全部出させてスポーツ紙からの振り込みがないかどうか調べろ」と命じたケースがありました。
運営者 雑誌はネタ元に金を振り込む時は、本人の口座に入金するなんてまぬけなことをやるわけはなくて、違う人の口座を使うのが普通ですよ。ましてや僕なんか大蔵省批判をやってたから、税務署が使えますからね。敵が権力の場合は細心の注意を払わないと、こっちがやられます。そんなのは基本の「キ」で。
木下 だから通帳を調べて、雑誌やスポーツ紙の入金を確認しても意味がないと思うんですが。。。
運営者 でもそういうレベルの低い奴はいますよ。僕なんか、「僕にかかってきた電話については、絶対に相手の名前を聞くな。すぐ繋げ」と言ってあるんですけど、どうしても聞きたがる取り次ぎの女性とかいるんですよね。何回言っても。あれは困ったなあ。
木下 まあ、僕は情報を渡すことで、代わりに受け取る情報の方が、はるかに価値があると思います。だから、僕は週刊誌などからお金をもらう必要など全くないと思っています。金をもらったら、情報が手に入らない。金より情報の方が圧倒的に価値があるんです。
運営者 そうですね。これはそういう仕事をしたことがない人にはなかなかわからないかもしれないけど、現場の人間はそう考えますね。
木下 情報を知っているやくざほど、実はメリットがあるのと同じ理屈ですよ。どんなにネットが普及したとしても、リアルにあるコアな情報の価値はまったく落ちてないんです。
そこに考えが行かない人はアホだなと思います。
運営者 田中角栄は、自分が渡した金を受け取る政治記者しか信用しなかったそうです。逆に言うと、その裏側が分かっているからそういうやり方をしたんでしょうね。
木下 ある意味、よくわかります。僕が多少付き合いがあった中では、野中氏とか、村上正邦氏といった人たちの文化です。この方たちは賢くて、カネだと問題が生ずるので、食べ物を送るという方法もとりますね。
それも5000円位で、わざわざ返せないレベルで、尚且つ、貰ったなという感じがするようなものを贈るんです。うまいですよね。そうじゃなくて、カネや金券を渡そうとする別の方の話もありますが、こういうのはもらうと面倒なので、ただ全部、突き返しますけどね。
運営者 書留で返してたなぁ。送料は自腹で(笑)。それに対する防衛策としては、早めに自分の名前の著書を書いて、それをお礼として送り返すという手を使っていた新聞記者がいますね。
木下 そういうやりとりや情報戦は日常的にやってるんです。そういう渦の中に入っていない何がいくら攻撃してきても、何とも思わないですよ。そして、「週刊新潮」以外の意味あるメディアが僕に攻撃してきているかというと、今に至るまで特にはないんです。