鳥たちがなかよく暮らしている村で、ある日みんなで鳥の王さまを決めること
 になりました。村はおおさわぎです。
  だれもがみんな王さまになりたがり、一生懸命、はねをととのえおしゃれ
 をしました。
  「みんなむだよ。私が選ばれるに決まっているわ」
  くじゃくが、美しい羽を広げて言いました。
  「いいや。ぼくに決まってるさ!」はくちょうは負けずに言い返しました。
  川では他の鳥たちも、水をあびてきれいに体をみがいています。
  カラスも川にはいりました。水面に映る自分の姿を見てつぶやきました。
  「ぼくは真っ黒だ。すこしもきれいでない。ぼくなんか選ばれるはずがない。」
  カラスはみんながいなくなった川にひとりで残り、どうしたら王さまになれる
  か考えていました。
 
 いよいよ王さまを決める日になりました。一番きれいな鳥が王さまになれる
 のだとだれもが思い、みんなおしゃれをしてきました。
  そこへ、今までみたこともないようなとってもきれいな、色とりどりの羽をつ
 けた鳥があらわれました。
  「なんてきれいな羽だこと!」みんなは口々に言いました。
  大きな拍手がおこり、色とりどりのこの鳥に王さまを決めようとしたときです。
  くじゃくが突然言いました。
  「あら? これは私の羽だわ」
  他の鳥たちも言い始めました。よく見ると、この鳥はみんなの羽を自分の
  からだにつけていました。
 
 みんなから羽をとられてほんとうの自分の姿をあらわしたのは、真っ黒な
 カラスでした。
  カラスは川に落ちていたみんなの羽を拾って自分のからだにつけていたの
 でした。
 
                                 おわり
 
 
「王さまになりそこなったカラス」

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