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T(磁石の不思議)では強磁性体とは何かということを学びました。
すなわち、強磁性体とは個々の構成原子が磁気モーメントを持っており、それらが同じ方向に整列したものです。このページでは強磁性体の基本的性質を説明し、強磁性体に磁場をかけた時の反応(磁化過程)や永久磁石・電磁石の特徴を説明します。
さらに詳しいことを知りたい方は、拙著「磁性入門−スピンから磁石まで−」をご覧下さい。
こんな内容です。
キュリー温度、磁気異方性と磁歪、磁壁の構造とエネルギー、磁壁の移動と磁化過程、不純物による磁壁トラップ、
強磁性体の磁化曲線、 ヒステリシス曲線、反磁場、軟磁性体における反磁場の影響とトランス、軟磁性材料、
硬磁性体における反磁場の影響、減磁曲線とBH積、強い永久磁石を作るための工夫、代表的な永久磁石材料、
磁気記録と磁気記録材料、 代表的な磁気記録材料
低温では同一方向に整列していた原子の磁気モーメントは、温度を上げると熱エネルギーの影響で方向が揺らぎ始めます。そのため、全体の磁気モーメント(自発磁化)が少しずつ減少します。さらに温度を上げると磁化の減少が急激に進行しある温度で以上では完全にバラバラになり、自発磁化は0となります。この温度のことをキュリー温度とよびます。キュリー夫人の旦那さん、ピエール・キュリー氏が発見した現象なのでこの名がついています。図のようにキュリー温度を, TC と表すことがあります。
磁性材料として使える強磁性体はキュリー温度が室温より十分高いことが条件となります。
ちなみに、鉄のキュリー温度は770℃、ニッケルは 354℃ です。
強磁性体において原子の磁気モーメントは、互いに平行に整列するだけでなく、結晶のある特定の方向に向こうとします。例えば、鉄は立方晶ですが、磁気モーメントは立方体の稜の方向を向こうとします。この方向のことを磁化容易方向と呼びます。従って、外から磁場がかかっていない場合、鉄の自発磁化は結晶の軸方向を向いています(左図青矢印)。外からの磁場などにより、磁化方向が、この方向からずれると(左j図赤矢印)エネルギーが増加します。このエネルギーを磁気異方性エネルギーと呼びます。
さらに、強磁性体の結晶は磁化方向にわずかに歪んでいます。鉄の場合、磁化方向にわずかに伸びています。この現象を磁歪といいます。磁歪の量はごくわずかですが、磁気異方性とともに強磁性の性質に大きな影響を与えます。
磁気異方性や磁歪の原因は図のように鉄族原子の形状が球形でなく、ラグビーボールのような回転楕円体でその回転軸が磁気モーメントの方向と一致しているためです。 Nd(ネオディウム)やSm(サマリウム)のような希土類元素はもっと歪な型をしており、このような元素を含む強磁性化合物は大きな磁気異方性エネルギーを持ちます。(永久磁石の項参照)
T(磁石の不思議)では、磁区の境界である磁壁では突然磁気モーメントが180度回転するような図を示しましたが、実際には左図のように、磁壁内で磁気モーメントは少しづつ回転しています。そのため、磁気異方性エネルギーの損などで、磁壁は磁区内よりエネルギーの高い状態になっています。磁壁のエネルギーは磁気異方性エネルギーの平方根に比例し大きくなります。
ただ、そのエネルギーの値は、純粋な物質中であれば何処にあっても同じなので、磁壁は容易に動くことが出来ます。
鉄などの普通の強磁性体は、磁場がかかっていないと、静磁エネルギーを最小にするため左図左下のように、外部に磁力線を出さないような磁区構造を持ち、磁化は0となっています。外から磁場がかかると、磁場方向に磁化が生じたほうがエネルギーが下がるので(注1)磁壁が移動し、磁場方向を向いた磁区が大きくなり、磁化が発生します(図中央)。 さらに、磁場を強めると、結晶全体が磁場方向の磁区のみになり、これ以上増加しません(上図)。これを飽和といい、このときの磁化を飽和磁化といいます。飽和磁化の値は自発磁化とほぼ等しい値を持ちます。このとき、この強磁性体が純度の高い金属であれば、磁壁移動は容易に起こり、わずかの磁場で飽和に達します。しかし、不純物を含んでいると、次項で説明するように、磁壁移動がじゃまされ、飽和に達するのにより大きい磁場が必要となり、また、飽和後磁場を0にしても、磁化は0に戻らず、残留磁化が残ります。
注1 磁場 H 中に 磁気モーメント M があるとき、そのポテンシャルエネルギー E は E = −M・H となります。
不純物が無ければ磁場をかけることにより磁壁はスムーズに動きますが、空隙や炭素のような非強磁性不純物にぶち当たると、左のアニメのようにそこで一時トラップされます。さらに磁場を強めると束縛を離れ、また移動し始め、飽和に達します。また、磁場を小さくしていくと、逆のプロセスをたどり磁化は減少しますが、障害物のため、同じ磁場に戻しても、最初の過程よりも少し磁化が大きくなります(上図の赤線)。これをヒステリシスといいます。また、磁場を0に戻しても、まだ、トラップされた磁壁が残り、磁化は完全に0には戻りません。これを残留磁化と言います。残留磁化のある状態は永久磁石になっているといってもいいでしょう。
たとえば、針や、カッターナイフの刃のように、炭素を多く含んでいる鋼は、一度磁石にくっつけると、離した後も弱い磁気を帯びているのは、残留磁化のためです。それに対し、釘やねじのように比較的純度の高い鉄は、一度磁石につけても、磁石から離すとほとんど磁気は残りません。
実際の強磁性体の磁化過程はもう少し複雑です。上のアニメで、初期状態では磁壁は不純物にトラップされていませんが、実際はトラップされているほうがエネルギーが低いので、どこかでトラップされています。弱い磁場をかけても、磁壁はトラップされたまま伸びて磁化が増加するので、磁化の増加は比較的わずかです。これが、左図の初透磁率範囲です。さらに、磁場が増加すると、磁壁が不純物の束縛を逃れ自由に動くようになり、磁化の増加は急激になります。不可逆磁壁移動範囲です。このとき、磁化曲線を詳しく見ると、磁壁が束縛を逃れるときに、上のアニメでもわかるように磁化が急激に増加し、左図の拡大図のように、ギザギザを描きながら増加します。これをバルクハウゼン効果と呼びます。そのため、オーディオ用の出力トランスなどに使うとノイズを発生することがあり、これをバルクハウゼン・ノイズといいます。
一つ上の図は、単結晶強磁性体の磁化容易方向に磁場をかけた時の図で、この場合は、磁壁移動だけで、飽和に達しますが、実際の材料は多結晶なので、結晶の方向はバラバラで、磁壁移動だけでは飽和に達せず、最後は磁化方向が磁化容易方向からずれ、磁気異方性エネルギーに逆らいながら回転し飽和に達します。この過程を回転磁化範囲と呼びます。
なお、不純物による磁壁のトラップ力は磁壁のエネルギーに比例し、磁壁のエネルギーは磁気異方性エネルギーの平方根に比例するので、また、磁化回転に要する磁場は磁気異方性エネルギーに比例するので、磁気異方性エネルギーの大きい強磁性体を飽和させるには強い磁場を必要とします。逆に、磁気異方性エネルギーの小さい材料はわずかの磁場で飽和に達します。
強磁性材料は、トランスの鉄心や、磁気ヘッドのように、交流で使われることが多く、その特性を評価するのに、左図のように、磁場を逆方向も含め交互にかけた時の磁化曲線を用います。これをヒステリシス曲線と呼びます。このとき、縦軸は、磁化 I ではなく、磁束密度 B =I + μ0H を使います(磁場の項は普通小さいので、 I を使った場合とあまり変わりません)。 透磁率は B =μH で定義されるので、ヒステリシス曲線の勾配が透磁率になります。残留磁化に対応する磁束密度を残留磁束密度 Brといいます。 逆方向に磁場をかけ、残留磁化が0となる磁場を 保持力(抗磁力ともいう) Hc といいます。
さて、トランスの鉄心や磁気ヘッドに使う磁性体は出来るだけ小さな磁場で、大きく磁化することが望まれます。すなわち、大きな透磁率を持つことが必要です。そのためには出来るだけ
Hc の小さい材料がいいわけです。 Hc を小さくするには、(1) 純度の高い材料を使い、磁壁トラップのサイトを無くする。(2) トラップ力の小さい材料を使う。そのためには、磁壁のエネルギーの小さい、すなわち、磁気異方性の小さい材料を使う。(1) の方法は価格的に高くつくので (2) の方法で高い透磁率を実現します。このような材料を軟磁石材料といいます。なお、ヒステリシス曲線で囲まれた領域(図の紫色の部分)の面積は、1サイクルの磁化過程で失われるエネルギーで『鉄損』といい、電力用トランスなどに使った場合エネルギーロスとなります。
一方、永久磁石(硬磁石)を得るためには、一見大きな残留磁束密度があればいいように思われますが、次項で述べる反磁場の効果を考えると、大きな Hc を必要とします。大きなHc を得るためにはさまざまな工夫が必要ですが、これは項を改め説明します。
強磁性体が磁化した状態は表面にN(+)極、S(-)極が現れた状態で、この磁極が外部に磁力線を発生させるのですが、同時に、磁性体内部にも磁場を作ります。これが反磁場です。反磁場の大きさは、磁化の大きさに比例すると同時に、磁化方向の形状に依存します。 式で示せば、μ0HD = −D・I で与えられます。D を反磁場係数といい、左図のように、棒状磁石の長手方向に磁化した場合が一番小さく(無限に長い棒では D=0 )、板状磁石の厚さ方向が最大となります。
磁性体の内部に働く磁場(有効磁場 Heff )は、外部からかけた磁場を Ha とすると
Heff = Ha + HD = Ha−D・I/μ0 で与えられ、これが強磁性体を磁化する原動力となります。 したがって、磁化方向を正方向とすれば Heff > 0 でなければなりません。
反磁場は、電磁気学の問題ですが、磁性材料を使うにあったって、重要な因子であり、常に注意しておく必要があります。
左図左は、反磁場が無いときの、或いは、横軸を有効磁場としたときの、理想的な軟磁性体のヒステリシス曲線です。Hc が小さく、ごく弱い磁場で飽和に達します。 しかし、反磁場があると、左図右のように、大きな外部磁場をかけないと飽和しません。 その勾配は、材料の種類によらず、反磁場係数のみで決まってしまいます。すなわち、
Heff = Ha ー D・I /μ0 > 0 でなければならず、かつ Hc が小さい材料では、 Heff 〜 0 なので、 I 〜(μ0/D )・Ha となり、反磁場係数が大きい形状で使うとせっかくの高透磁率の材料もその役目を果たせません。 十分長い形状で使えばいいわけですが、実際的でなく、トランスでは右図のように、鉄心を閉じた形にして、表面に磁極が現れないようにして、反磁場の効果を免れています。
材 料 | 成分 (%) |
比透磁率 | Hc | Is | Tc | 特 徴 | 用 途 |
A/m | Wb/m2 | ℃ | |||||
鉄 | 0.2 不純物 | 5000 | 80 | 2.15 | 770 | 最も手近な材料 | 電磁石、トランス鉄心 |
純鉄 | 0.05不純物 | 200000 | 4 | 2.15 | 770 | 高価なのであまり使われない | |
ケイ素鉄 | 4 Si + Fe | 7000 | 40 | 1.97 | 690 | 大きな磁化、安価 | 電力用トランス |
パーマロイ | 78.5 Ni +Fe | 100000 | 4 | 1.08 | 600 | 透磁率が大 | 小型トランス、磁気ヘッド |
スーパーマロイ | 5Mo 79Ni +Fe | 1000000 | 0.16 | 0.79 | 400 | 透磁率最大 | 高級トランス |
パーメンジュール | 50 Co +Fe | 5000 | 160 | 2.45 | 980 | 最大の磁化 | |
アモルファス | 8B 6C +Fe | 3000 | 8.0 | 1.73 | 334 | 磁気異方性がない | 磁気ヘッド |
センダスト | 5Al 10Si +Fe | 30000 | 1.6 | 1.0 | 500 | 比較的大きな磁化、硬い | 磁気ヘッド |
MnZnフェライト | 50Mn 50Zn | 2000 | 8 | 0.25 | 110 | 絶縁体である | 高周波用トランス、磁気ヘッド |
永久磁石を使う目的は、まわりに強い磁場を作ることですが、このとき当然反磁場も大きくなります。従って、着磁するための外部磁場を0にしても、それ自身の残留磁化の作る反磁場により、逆方向に磁場がかかり、自分の磁化を打ち消そうとします。このとき、Hc が小さいと、すぐ消磁してしまいます。実現する残留磁化 Ir は、左図に示すように、有効磁場に対するヒステリシス曲線と、直線 I = - (μ0/D)・H の交点で与えられます。このため、永久磁石は Hc が大きくなければなりません。永久磁石の性能は、Hc と 飽和磁化 の積で評価されます。
より正確には、下項のBH積で評価されます。
上の項で述べたように、永久磁石を使うときには、磁石の性能を最大限引き出すための最適の形状があります。
磁石の不思議 III で述べたように、永久磁石は高い静磁エネルギーを持った状態で、そのエネルギーは (1/2)・B*H で与えられます。
そのため、永久磁石材料の性能を表すため、ヒステリシス曲線の第2象限(B > 0、H < 0) と B、H の積が書いてあります。(左図)
その磁石が蓄えることの出来る最大の磁気エネルギーは当然、BH積が最大の値でこれを、最大エネルギー積 (BH)MAX といい、永久磁石の性能を表す値となります。
で、実際に磁石を使うときには、BH積が最大になる反磁場が得られるよう形状を決める必要があります。 (詳しくは、ここを参照)
普通の強磁性体は残留磁化も抗磁力も小さく、永久磁石となりません。永久磁石を作るには特別の工夫が必要です。その工夫として、(1) 適当な不純物を混ぜ、磁壁を動きにくくする。
(2) 磁壁をなくす(単磁区磁石)。(3) 磁壁が発生しないようにする。 などが考えられています。
(1) は古くから使われた方法で、鋼は炭素を不純物として多く含み弱いながら永久磁石になります。教材として使われる棒磁石や、馬蹄形磁石がそれです。永久磁石としての性能は劣るので、現在ではおもちゃくらいにしか使われません。
(2) 強磁性体を細かく砕き、磁壁の厚さくらい(数十ナノメートル)の微粒子にすると、磁区を形成することによる静磁エネルギーの得よりも、磁壁エネルギーの損が大きくなり、磁壁が発生しなくなります。このような強磁性体粒子を単磁区磁石といいます。この場合、外部磁場が無ければ、磁化方向はどちらかの磁化容易方向を向いていますが、右図のように、磁化を外部磁場により反転しようとすると、磁壁移動には頼れず、磁化方向が磁気異方性エネルギーに逆らって、結晶中で回転しなければなりません。そのため、磁気異方性エネルギーの大きい物質を単磁区化すると、大きな抗磁力が得られます。文具屋に売っている磁気クリップなど黒っぽい磁石がそれで、バリウムフェライトといい、酸化鉄の一種の粉末を固めたものです。フェリ磁性体なので磁化の値は大きくありませんが、Hc が大きく、何よりも安価なので、永久磁石として最も広く使われています。 その他、アルニコ磁石といって、鉄、アルミ、ニッケル、コバルトの合金で、適当な熱処理で、非強磁性性合金の中に強磁性合金を析出させたもので、微粒子ではありませんが単磁区磁石の一種です。 以前は高級な磁石(BH)max の大きい磁石)として使われましたが、ネオジム磁石が開発された後はあまり使われなくなりました。
(3) 磁壁のエネルギーが極めて大きい場合、初期状態では磁壁が存在しても、一旦飽和し磁壁が無くなると、磁場を0にしても磁壁が生じなくなることがあります。最近日本で発明され開発されたネオジム磁石がこれだといわれています。(BH)max が巨大で、小さな磁石でも強い磁場が取り出せるので、小型モーターなどに使われ、最近のIT機器の小型化に大いに貢献しています。
材 料 | 成 分 | Br | Hc | (BH)max/2 | 密度 | Tc | 特 徴 |
Wb/m2 | A/m ×102 |
J/m3 ×103 |
g/cc | ℃ | |||
炭素鋼 | 0.9C 1Mn +Fe | 1.0 | 40 | 0..8 | 7.8 | 770 | 昔の磁石 おもちゃの磁石 |
アルニコ磁石 (AlNiCo) |
14Ni 24Co 8Al 3Cu +Fe | 1.2 | 438 | 20 | 7.3 | 850 | 少し前の高級磁石、スピーカー等に使われていた。 |
フェライト磁石 |
BaO・6Fe2O3 SrO・6Fe2O3 |
0.4 0.4 |
1600 2500 |
13 17 |
5.3 5.0 |
470 480 |
最もポピュラーな磁石、安価 |
サマリウム磁石 | Sm2Co17+X | 1.1 | 6000 | 100 | 850 | ネオジム磁石よりTcが高い | |
ネオヂム磁石 | Nd2Fe14B | 1.2 | 7900 | 180 | 310 | 最も強力な磁石、Tcが比較的低いので高温になる場所では使えない。 |
強磁性体のもう一つ重要な用途は磁気記録です。左図は、最も古くから使われているテープレコーダーの原理図です。磁気ヘッドに巻かれたコイルに流れる音声(またはディジタル)信号に比例する電流により、軟磁性体で出来た磁気ヘッドが磁化し、先端のギャップの所から出る磁場が、これに接して移動する磁気テープを磁化していきます。これが記録です。信号は交流なので、テープに記録される磁化は交互に方向が逆の磁化領域が連なっています。この磁化が作る磁極は、領域内には反磁場として、隣接する領域にはその磁化を打ち消す方向の磁場を発生します。これらを減磁力とよび、せっかく記録した磁化を互いに打ち消すような働きをするわけです。従って、磁気記録材料も大きな抗磁力
Hc を持つ材料を使う必要があります。すなわち、磁気テープは小さな永久磁石がプラスティックのテープに塗布されたものと考えていいわけです。磁気記録材料に期待される性能は単位面積あたりに書き込める情報量、すなわち記録密度が大きいことです。記録密度を高くしようとすると、磁化領域を小さくする必要があり、磁化領域が小さいと、減磁力がより強くなり(反磁場の大きい形状に相当)より大きな Hc が求められます。ただ、永久磁石とは異なり、小さな磁気ヘッドが発生する磁場の強さには限度があり、記録材料のHc が大きすぎると、磁化出来ないというジレンマが生じます。従って、磁気ヘッドの性能が許す範囲の
Hc を持った材料を選ばねばなりません。 なお、最近進歩が著しいパソコン用のハードディスクもほぼ同じ原理の磁気記録装置ですが、磁気ヘッドは薄膜で出来た極めて微小なもので、記録媒体と接触し壊れないように、特殊な方法で僅かな(1μm以下)間隔を保ちながら、金属またはプラスチック製のディスクに塗布した記録媒体を磁化して、情報を書き込んでゆくという方法を取っています。なお、記録された情報を読み取るのは、磁化した領域が発生する磁場を、記録用と同じ磁気ヘッドが検知しコイルに発生する誘導起電力を電気信号として読み取ります。最近の、高密度ハードディスクでは磁化領域があまりにも小さく、発生する磁場が小さいので、磁場により電気抵抗が変化する性質(磁気抵抗効果)を使うヘッドも開発されています。
媒 体 | σs | Is | Hc | 備 考 |
Wb・m/kg | Wb/m2 | kA/m | ||
γ-Fe2O3 | 1.0×10-4 | 0.1 | 20-31 | 最も安価、普及型磁気テープ |
Co含有 γ-Fe2O3 |
1.0 | 0.1 | 20-80 | ヴィデオテープなど |
CrO2 | 1.1 | 0.15 | 16-64 | いわゆるクロムテープ最近は使われない |
Co-Ni薄膜 | >2.5 | 1.0 | 8-80 | メタルテープ |