旅立ちまで/日程  11/22(木)  11/23(金)  11/24(土)  11/25(日)  11/26(月)


■ 仏教に思うこと、そして、雨 11/25(日)
※)文中、「CLICK!」と書いてある画像は、
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■コベント・ガーデン

 ロンドンに来たら、ここは絶対に外せない。小物の土産が見つかるし、大道芸も堪能できる。ただし去年は雨が降っていて、大道芸については屋内の楽器演奏に限られた。今日も朝から小雨模様で、あまり期待できないと思っていた。
 ところが行ってみると、地下鉄の駅からショッピングモール「ザ・マーケット」へと続く通りの左右で、それこそ競うように賑やかなパフォーマンスが繰り広げられていた。人の出も去年とは比べ物にならないほどであるが、理由はすぐに判明した。去年来たのは月曜日、今日は日曜日だからだ。違いはこれだけであり、天気にはあまり関係がない。
 まっすぐに歩き、ザ・マーケットにたどり着く。去年は外にも小物を売る屋台が出ていたが、今日は一軒もない。
 ザ・マーケットの中を歩く。至る所で聞こえる路上演奏の音色がうまくBGMになり、いかにも哀愁のヨーロッパという雰囲気が高まる。
 もしかして、ロンドンに来るのはこれが最後かもしれない、とふと思った。高揚した気持ちを抱いて歩きながら、昨日から考えつづけていることに頭を巡らせる。

 僕にはたぶん、受け入れることのできないものが多すぎるのだろう。自分の身に振りかかる悲しいことや、自分の嫌なところ、そして楽しいことや自分の長所さえも。10年前、そして去年訪れた場所を必死になって追い続けているのも、それらを「あの時限りの楽しかった思い出」として胸におさめておくことができないからだ。
 折り合いをつける、ということを最近よく考える。最上のものを期待しても、決して得られることはない。現実を見つめ、その中で自分の希望するものとどう折り合いをつけていくかということしかない。それなのに僕はいつも等身大の自分を認識することができず、過大評価と過小評価を行ったり来たりしている。
 この間少しだけ聞きかじった仏教の話を思い出す。
 テレビでやっていた番組でのこと。四苦八苦という言葉がある通り、世の中は実に多くの苦しみに満ちている。生老病死をはじめ、愛する人と別れる愛別離苦、嫌な相手と会う怨憎会苦(おんぞうえく)、求めることが得られない求不得苦(ぐふとくく)、そして極めつけ、全て一切は苦であるとする五陰盛苦(ごおんじょうく)というものさえある。
 釈迦が説くこれらの話を聞くと、世の中には苦しみばかりなのかと絶望してしまう。しかし、そうではないのだ、と番組は語る。これらは全て、人の力ではどうすることもできないものばかりだ。なのにそれを自分の手でどうにかしようとするから、あらゆることが苦になってしまうのだ、と。
 これを聞いた時、ものすごく納得した。そして、自分がいつもどこか生き苦しいと感じることが多い理由もわかった気がした。ただし、わかったからどうにかできるものでもないのだけれど。


■今日はこれで終了…か?

 今朝、ホテルを出た時点で10時半を過ぎていた。昨日までに比べると、1時間以上も遅い。昨日の夜に更新するはずだったこのページがまだ出来上がっていなかった。朝7時過ぎには目を覚ましていて、それからずっと文章を書いていた。
 これが体には良くなかったらしい。コベント・ガーデンを歩き回るうち、どうにも疲れて動きたくなくなってしまった。12時を過ぎていたので、とりあえず何かちゃんとしたものを食べようと思い、しばらく探した末、イタリアンレストランらしき店に入る。食事が運ばれてくるまで、廃人のように椅子にへたり込んでいた。これからのことも何も考えることができず、今日はもうホテルに帰ろうかとさえ思った。
 頼んだスパゲティナポリタンは、麺は小学校の給食並みだったが味付けは悪くなかったので、残さず食べ尽くした。食後のコーヒーを飲み終える頃、どうにか気力が復活してきた。やはり朝からの書きものは体にこたえる。これからは控えることにしよう。


■シティ初体験

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 シティと呼ばれるロンドン金融の中心街には、これまで来たことがなかった。思い出巡りばかりでなく新しい所も挑戦すべしと、足を伸ばしてみることにする。
 金融とは全く関係はないが、行きたいところがあった。セント・ポール大聖堂である。ガイドブックには必ず載っている有名スポットだが、場所が少し辺鄙なのでこれまでに行ったことがなく、僅かに去年、観光バスから一瞬だけその姿を目にした程度だった。今回はちゃんと、外からじっくりと眺めるつもりだ。

 狂ったように鐘の音が響いていた。地下鉄の駅から地上に出てすぐに、音が耳に飛び込んできた。いつもこうなのか知らないが、頭の奥までねじこまれるような響きがいつまでも絶えず、鳴り続けている。
 建物の周囲をぐるりと回ってみる。改めて見ると、本当に巨大で威圧的だ。形もいい。あまりにも大きすぎるため、観光バスで道路から眺めた時には外観がうまく把握できなかった。かなり離れた場所から、その姿を写真に収める。

 セント・ポール大聖堂から、シティの中心へと向かって歩く。超近代ビルと呼ばれる、ロイズ・ビルが目当てだ。
 にぎわうロンドンの金融街とは言っても、今日は日曜日である。閑散として人の気配がない。4月に行ったニューヨークのウォール街を思い出した。ロイズ・ビルも、気をつけていないと通り過ぎるぐらい地味に存在していた。モダンな造りの外観で、名物になるのもわかる気はする。しかし、ここはパリのモンパルナス・タワーと同じだ。その町を知るには新しいところも受け入れなければいけないとは思うが、僕にはどうも興味が湧かない。早々に立ち去る。


■タワー・ブリッジ

CLICK!
 今日の締めくくりはここ、タワー・ブリッジである。ロイズ・ビルから移動して入ったロンドン・ダンジョンについては、あまりにも内容が悪かったので、書かない。
 雨はまだ降り続いていた。昨日珍しく一日中晴れていたので、その分を取り戻そうとしているかのごとく、やまない。
 ロンドン・ダンジョンから東に向かい、歩く。この辺りに、実は探している店があった。また回想バージョンになるが、10年前、「クリスマス・ショップ」という年中クリスマス用品を売っている店を見つけ、買い物をした。
 店はすぐに見つかった。ロンドン・ダンジョンから歩いてすぐの場所にあった。前回はタワー・ブリッジ側からかなりの距離を歩いたものだった。
 懐かしい思いがこみあげる。こういう時には、ずうずうしいながらも「自分のために残っていてくれた」と思ってしまう。ただし、売っているものはそれほど大したことはない。今回は何も買わず、外に出る。
 タワー・ブリッジは、大掛かりな工事がテムズ川沿いに行われていたためなかなかその姿が見えなかったが、近くまで歩いてようやくライトアップされた全貌が見えてくる。
 息を呑む美しさ。昨日はビッグ・ベンのことを書いたが、ロンドンでは双璧だろう。まだ見たことがない人を目隠しして近くまで連れて行き、いきなりこれを見せたなら、声をあげて立ち尽くすに違いない。
 ロンドンの街は、美しい。雨と激しい風の中、少しも霞まない堂々たる姿を見ながら、またそう思う。

 明日は早くも、ロンドン最終日。夜のスターライトに備え、日中はゆっくりと公園で過ごすつもり。晴れて、あったかくなればいいのだが。

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