旅立ちまで/日程  11/22(木)  11/23(金)  11/24(土)  11/25(日)  11/26(月)


■ はじまり…なのに 11/23(金)
※)文中、「CLICK!」と書いてある画像は、
クリックすると更に大きな画像が見られます。

■チケット購入

アポロ・ヴィクトリア劇場
「THE FINAL COUNTDOWN」という
表示が見える

 予定していたチケット購入は、午前中で終了する。
 朝ホテルを出てから地下鉄の駅までに少し迷ってしまった。たどり着いたのは、「グロスター・ロード」駅だ。しかしこの後地図でよくよく見ると、「アールズ・コート」駅のほうが近くて便利なことに気付く。
 地下鉄一本で、ヴィクトリア駅に着く。去年も訪れた馴染みの場所である。すぐにアポロ・ヴィクトリア劇場を発見する。ここで念願の「スターライト・エクスプレス」のチケットを3枚、購入した。
 そう、3枚。3回見るのだ、一人で。
 もともとそう決めていた。これが最後の機会だもの。今日の夜と明日のマチネー、そして月曜日の夜。明日の分は少し安い席にしたが、それ以外は最高額のチケットだ。それでも全部で87ポンド(日本円で約1万5千円)と、日本で見るミュージカルに比べれば格安だ。
 再度、地下鉄でウォータールー駅まで移動し、ユーロスターのチケットを購入する。フランスレイルパスを持っているので、パリまでの2等が45ポンド(約8千円)で済む。


■それにしても…

 どうにもなんか、へなちょこだ。ロンドンに着いたというのに、どうにも旅の調子が出ない、というか。カードの支払いの際、日本語のサインをするべきところ、英語で書いてしまった。しかも、2回続けて。2回目にも気付かないとは、よほどどうかしている。
 極めつけは、ヴィクトリア駅でのこと。景色をビデオで撮影しようとバッグから取り出すが、動かない。まさか、と思い見ると、バッテリーが装填されていなかった。ホテルのスーツケースに入れたままなのだ。旅行に出て、今までにこんなことはなかった。ショックのなか、荷物を減らしたいこともあり、いったんホテルに戻ることにする。
 どうにも緊張感が足りない。確かに今回の旅行はパリがメインであって、ロンドンは「スターライト・エクスプレス」を見に来ただけとは言えるが、それにしても海外にいるという非日常の中にあってこれだけ覇気が沸いてこないのも珍しい。人が話す英語もあまり聞き取れず、「Pardon?」を繰り返す。こうなると余計、人としゃべるのが億劫になってしまう。ちょっと危険だ。何とかしなければ。


■ケンジントン・ガーデンズ

CLICK!
 ホテルで荷物を減らし、少し軽くなったリュックを背負い直す。部屋にいる間に、外が明るくなってきた。夜の観劇の前に、どこか公園に行きたいと思った。
 幸い、近くにケンジントン・ガーデンズという公園が、歩いて行けそうな距離にある。さっきホテルに帰ってきた時、ようやく周りとの位置関係がわかった。地図と照らし合わせ、北を目指す。
 途中の巨大なスーパーに寄り、フルーツとヨーグルトを買う。旅に出ると、食欲がわかないことが多い。今朝はバクバク食べたのだが、その後は昼前になっても腹は空かない。とりあえず形だけでもと、公園の中でこれを食べることにする。
 ケンジントン・ガーデンズは、大通りを隔てた向こう側に広がる、緑の異空間だった。突然目の前に現れたその姿に息を呑む。ロンドンは、これが面白い。最初に来た時にも、町のいたるところにある公園の美しさが気に入り、毎日のように出かけては、ぼーっとしているのが好きだった。
 数ある大きな公園のうち、ここだけは来たことがなかった。どうやって手入れをしているのかと思うぐらい、芝の色は鮮やかだ。そして、どこまでも続く遊歩道。写真やビデオを撮って回りたかったが、とりあえず食事をとることにする。
 入り口近くにあったベンチに腰掛け、買ってきたつつみを開けて食べ始める。と、木の幹の上に動く物体を発見。見たところかなり小さい。
 リスだ。ニューヨークのセントラルパークで見たのと同じ、薄いグレーの体をしている。敏捷な動きで走り回っていたかと思うと、急に止まって動かなる。それを見計らい、ビデオを向ける。とぼけたような顔が、かわいい。

 食事のあとは公園の中心部に向かい、ひときわ大きな遊歩道を進む。左手にケンジントン宮殿が見え、右手には人造湖が出てきた。
CLICK!
 そこへ、違和感のある光景が飛び込んできた。白鳥らしき大きな鳥が、逃げることなく人のそばに寄って群れている。こんな構図は、あまり見たことがない。珍しくて、ついつい長居をしてカメラ&ビデオ撮影をする。ビデオではどうしても自分も一緒に写りたくて、台の上にカメラをセットし、白鳥の後ろから近づいて撮影した。

 白鳥をやり過ごしたあと、アルバート公記念碑に向かう。去年はタクシーの中から見たのだが、改めて見ると思っていたよりもずっと大きな像だった。そしてこの記念碑から大通りを隔てた向こう側に、あのロイヤル・アルバート・ホールがある。円形の外観と配色が独特で、のしかかるように視界を占領する。


■我が心のスターライト

 夜。ロンドンの最大目的である「スターライト・エクスプレス」観劇のため、ヴィクトリアに移動する。
 劇場にたどり着いた時は正直、疲れていた。昨日の飛行機の疲れが抜けきっていないのか時差の影響か、今日はそれほど動き回ったわけでもないのにぐったりとなって座席に座りこみ、ぼんやりと開演時刻を待っていた。
 それが――。オープニングの最初の音楽が聞こえた瞬間、一瞬で頭がはっきりした。いや、全身が覚醒したと言ってもいい。あの懐かしいナンバーが大音量で聞こえてくる。そして、前から4列目、すぐ横を役者たちが通り抜ける位置で見る舞台の迫力。にじむまぶたの奥で、旅が今まさに始まったという感触を得る。
 驚いたことに、主要な役者さんたちは去年見た時からほぼ全員が入れ替わっていた。主人公ラスティは黒人から白人の男性へ、僕の好きだった喫煙車両アシュレー役の女性さえも。(煙草をくわえながら踊るアシュレーは、とても色っぽくて素敵なのだ。)それから、覚えている限り演出も去年からかなり変更され、少し派手目に手が加えられていた。
 とは言っても、全体としての出来は残念ながら去年の方が良かった気がする。主人公二人、ラスティとパールの歌は去年の方がうまかった。今日の二人はまだかなり若いらしく、高音は出せるのだが歌の表情付けが今ひとつかな、と僭越ながら思ってしまった。確かに、年々パワーは落ちてきているのだろう。このミュージカルが大好きな僕でさえ、今が潮時なのだろうと思えてならない。
 それでも十分に満足して、家路に着く。去年、両親と三人で観た帰り、タクシーの中で少し興奮気味に感想を語り合ったことを思い出す。
 疲れはもう、どこかに消えていた。

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