Alexander Glazunov
"Quatuor pour Quatre Saxophones, Op.109"
A.グラズノフ 「サクソフォン四重奏曲 Op.109」
第1回がソロ曲だったので、第2回は四重奏曲で…と思いはしたのものの、 「これ!!」という曲が1つに絞れず、結局グラズノフを選んでしまいました。 選曲理由は単純で、「自分が今年の5月に某所で演奏するから思い入れがある」というだけです。_o_
グラズノフは1928年にロシアのレニングラード(現サンクトペテルブルグ)から
パリへ移住しました(そういえば、ちょうどこの年にM.Muleがギャルド・レピュブルケーヌ・
サクソフォーン四重奏団を結成しているんですね)。
そして1932年に初めてギャルドのサクソフォーンを聴き大いに感動し、
その年の3月からこの四重奏曲を作り始め、5月には仕上げたそうです。
もちろん、この曲はギャルド・レピュブルケーヌ・サクソフォーン四重奏団へ
捧げられたことは言うまでもありません。
しかし、この曲が初演されたのは1933年12月14日…とかなり後になってからでした。
この曲はサクソフォーン四重奏としては全楽章演奏すると25分ほどにもなる大曲であるばかりか、 グラズノフ本人も作曲当初「曲が長いので奏者が疲れてしまうのではないか? あと、ブレスはうまくできるのだろうか?私の好みでほとんど休みを作らずに曲を作ってしまったのだ」 と心配したほど持久力の必要な曲です。 曲としては
というかなりの大曲であるため、なかなかコンサートで全曲を演奏される機会は少なく、 よく2楽章「カンツォーネ・ヴァリエ」のみが取り上げられているようです。 (中には「シューマン風」もカットして演奏している団体も多いですね。)
蛇足ではありますが、グラズノフのSaxophone協奏曲もOp.109となっています。 この辺についての具体的な話は、ここのコーナーでコンチェルトを取り上げたときに書きます。
団体名にA.Glazunovを敬して彼のFirst Nameを付けているところから、 彼らのこの曲へのこだわりが感じられます。 他の団体の演奏とは比べ物にならないほどの出来栄えです。 是非とも参考演奏として聴いて頂きたいです!!
演奏としてそれほど悪い…というわけではないのですが、対抗馬が強すぎた… といったところでしょうか。 どちらかというと、「悪いとは思わないんだけど、いいとも思わないんだよねぇ」 という印象の薄い出来だと思います。
ただ、ここのアンサンブルはいつも何かしら詰めが甘いようにも思えます。 別のアルバムでピエルネをやっているのですが、そこでAltoが明らかに音を間違っていましたし…。 このあたりの詰めがあれば、もっとこの曲の演奏自体映えたかもしれません。
全体として綺麗にまとまっているし、美しいです。 が、1つだけ問題点をあげるとrit.をかけすぎていると思います。 そのため、曲がその時点で止まってしまい先へ続いていかない…ひいては 1曲としてのまとまりを感じられないのです。 ここがなければ、もしかしたらAureliaよりもよい演奏だと思ったかもしれません。
ここのアンサンブルを気に入らないのは本当に1つだけなんですよ…。 申し訳ないけど、ソプラノの演奏が好きになれないのです。 1人だけ羊泣きビブラートになっていて全体のハーモニーがはっきりと捉えられなかったり、 ときどきはき捨てるような演奏をしていたり…などいろいろです。 もっと4人で1つのハーモニーを作るようにビブラートなり演奏なりすれば もっとよく響くのでは??
一言「なんともたどたどしい演奏」といったところでしょうか? 「曲(フレーズ)を演奏している」…というよりは「音を1つ1つ出しています」かな? この曲の面白さがほとんどいってよいほど表現できていないと思います。 唯一楽しかったのは、シューマン風…でしょうか。 トリルがはっきり出ているため、逆に新鮮でよかったです。
トルヴェール・クヮルテットによるグラズノフ…だが、演奏されているのは 「カンツォーネ・ヴァリエ」のみ、それもシューマン風抜きです。 これだけよくまとめているのだから、是非とも全楽章聴いてみたいと思うのですが、 無理な注文でしょうか??
こちらもM.Mule率いるM.Muleサックス四重奏団による演奏。 しっかり聴き比べてないですが、おそらく同じ音源でしょう。 残念ながら"Marcel Mule"にThemeとScherzoのみ、 "La legende"でもショパン風を増やした3曲しか入ってませんが、 いわゆる「羊泣きビブラート」を聴くことのできます。 初期のサックスって、本当に弦や肉声に近い音がしていたんですね。
taka@sax.club.ne.jp