キリマンジャロ登頂記 〜頂上アタック編〜

ウフル・ピークに立つ

 ● 頂上アタックへルート図

 就寝後、しばらく寝付かれない。仕方ないので、トイレに行く。それでも、まだ眠れない。耳栓を持っていたのを思い出し、探し出して、してみる。しかし、返って「シーン」として、眠れない。眠らなければと思うが眠れない・・思い悩んでいるうち、ちょっと寝入ってしまったようだ。
 だが、目が覚めると心臓がバクバク、呼吸も苦しい感じである。これは、寝いったら体調を崩しそうである。出発まで起きていることにしよう。・・・と思っていると、今度は睡魔が襲う。結局、起きているか寝ているかわからない状態で起床時間の12時を迎えた。

 お茶とビスケットの簡単な食事を済ませ、行動食を受け取って、出発準備を整える。
 予定通り、ガイドを先頭に1時に出発する。15日組もすぐ後に続く。他の登山者は既に出発しているようである。
 20分ほどで1回目の休憩。まだ、前日稼いだ高度よりはるかに下である。
 天気は薄曇り、星が霞んで見える。

 歩くスピードがゆっくりなので、体全体が暖まらず、足先が冷たいままである。
 と、急にスピードが上がる。「これは、ついていけない・・」と感じた瞬間、後ろから「アルバート、more slowly!」とツアーリーダーの声がかかる。どうもガイドの後ろを歩く人がガイドにくっついて歩くと、全体がその調子で歩けると思うらしい。
 ともあれ、もとのスピードに、戻る。
 1時間20分ほどで、高度200mを稼ぐ。これで、やっと昨日の記録を更新した。

 ガイド達は登山道をはずれたところを歩いている。そして、絶え間なくおしゃべりし、時には歌を歌っている。よくも話題が尽きないものと感心するが、これは、登山者を励ますためという。なるほど、全員沈黙の中で歩いていると気が滅入るかも知れない。
 ともかく、ガイド達はいつ呼吸しているのか不思議、平地と全く変わりない行動様式である。

 3時間で、ハンスメイヤーズケーブに到着。ここは、ギルマンズポイントまでの行程のちょうど半分、岩室になっており、初めてキリマンジャロに登ったドイツ人が帰路ビバークしたところという。看板の標高表示はちょうど5000mになっていたが、GPSの表示は5100mを越えていた。
 ここまで、全員順調である。疲れは全く感じない。呼吸も苦しくない。このままだと、ギルマンズポイントは何とかクリアできそうだ。
 さほど、寒さは感じなかったが、ツアーリーダーが雨具の下を装着するのを見て、私も着ることにする。

 登山道の脇にところどころに、嘔吐物が残っている。若い日本人男性がガイドに付き添われて、降りて来た。体調を壊したのであろう。残念無念のリタイヤのハズだ。声をかけられなかった。

 次の休憩時、猛烈に空腹感を感じ、支給の行動食のうち食べやすいものをむさぼり食う。おまけに、自前の小さい羊羹も食べる。一息・・。
 夜明前で、一段と冷え込む。風がないので助かるが、それでもほほが冷たい。
 登山道は、ジグザグの登山道になる。下りは一直線に「須走」のできるところである。
 5時を回って、東の空がほんのり明るくなってきた。それに伴い、ガスも切れ、満天の星となった。ゆっくりであるが、確実に高度を稼ぐ。
 だんだん、空の明るさが増して行き、6時半、日の出を迎える。全員カメラを出して、撮影(小休止)。取り出すカメラがないのが悲しい。

夜明けを迎える マウェンジ峰が下に見える


 日の出を迎えると、急に暖かさを感じる。
 このあたりから、ペースについていけない人が出てきた。でも、ギルマンズポイントはすぐ近く、見上げるとそこで休む人の姿が見える。

 あと、高度差にして50mというところで最後の休憩。その間に、15日グループが先行する。私達のグループのNK氏もそれに付いて一緒に登ったようだ。
 我々も、小休止の後、最後の登りにかかる。上から、NK氏がビデオを回しているのが見える。私も手を振って応える。ここまでは、余裕である。
 午前7時25分、念願の山頂(ギルマンズポイント)に立つ。達成感より、「登れた!!」という安堵感で一杯である。

ギルマンズポイントにて

 ギルマンズポイントは、広い山頂かと思っていたが、以外に狭い。
 ともかく、記念撮影して、エネルギー源を補給して、すぐにウフルピークを目指す。
 遅れた二人はここでリタイヤ、メンバー7人とガイド3人で出発する。

 ウフルピークまでの道は、一度かなり下って登り返すと聞いていたが、わずかにアップダウンがあるだけである。せいぜい、高度差にして10m程度であろうか。
 外輪山の内側をトラバースして、尾根に出ると、再びだらだらとした登りになる。
 しばらく行くと、主峰南側の氷河が見えてくる。壁の高さは何メートルあるのであろうか。青白く光る壁は、生成までの時間とともに、威圧感をもってそびえている。

これは遠くに見えた氷河


 1時間ほど歩いて小休止、エネルギー補給。
 その後も、ゆっくり、だけど着実に歩を進める。山頂までは、4つの疑似ピークがあるらしい。第2のピーク、第3のピークと越え、そして第4のピークを越えたところで、山頂が見えた。残り、水平距離70mほどである。
 もう、山頂に立てるのは間違いない。喜びの電流が体を流れる。

 午前9時30分、念願の真の山頂へ到着だ。先行した15日間グループの出迎えを受け、全員と握手を交わす。

 でも、山頂に長くはとどまれない。
 あわただしく、まず記念の石を拾う。次に、囲炉裏の旗を取り出して、表示板の前で写真を撮ってもらう。(自分のカメラがないのはつらかった。)

やりました!! 全員集合して記念撮影


 その後、グループ全員で記念撮影。この時、他人のカメラの交換に早足で動き回ったのが、過大な負荷となってしまった。

 下りにかかるが、今度は呼吸が整わない。腹式呼吸を試みるが効果はない。心臓は、今にも破裂せんばかりに、ドクンドクンと大きく鼓動する。「頼むから、あと1時間だから持ちこたえてくれ!!」と祈る気持ちになる。

 ギルマンズポイントの近くまで帰ってきて、やっと小休止。暑いので、カッパの下を脱ぐ。脱いだあと、靴ひもを結んだり、スパッツのファスナーを止めるのが、呼吸を止めることになり、大きな負担となる。

 ギルマンズポイントまで帰着して、エネルギーを補給しようと、羊羹を捜すが、どこにしまったか思い出せない。仕方なく、一口カステラを口に入れるが、むせてしまった。最後の水と一緒にかろうじて、飲み込む。

 これからは下りだけ、ラクチンと思ったがそうではなかった。
 最初は、ガレ場で慎重にゆっくり下るため、負荷も少ない。が、次に、「須走」のできる砂礫帯にくると、一変する。気持ちは、一瀉千里に駆け下るのであるが、大腿がストライキ。酸素不足を訴えて、動いてくれない。ガイドが「こうやって下るのだ。」とお手本を見せてくれるが、足が動かない。仕方なく、休み休み下る。
 半分以上下ったあたりで、やっと酸素の供給が追いついてくるのを実感する。その後は、より長く継続して下れるようになる。
 なお、この須走を15日間グループのスキーその他アウトドアの達人Y氏は、「グリセード」で下ったそうである。私より後ろにいたので、見られなかったが是非、見学したかった。

 6時間半かけて登った道のりを、1時間ちょっとで下り、ギボハットに到着。
 終わった。。。。


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