キリマンジャロ登頂記 〜助走編〜

キリマンジャロ登頂への行程は、

 1 ベースキャンプといえるギボハットまでのアプローチ(助走)
 2 頂上アタック
 3 下山

 に分けられるというのが今回、行ってみての実感です。
 このページは、その1助走編です。


●9月2日(月)・・・出発

 今回のツアーは10日間コース(キリマンジャロ登頂のみ)と15日間コース(キリマンジャロ登頂後サファリ観光付)のふたつのコースが同時出発。山を降りるまで、同一行程である。
 午後2時前、自宅を出発。能勢口で外貨(ドル)に換金。
 午後3時20分、蛍池からバスに乗り、関空に4時半過ぎ到着。関西からは、10日間コース4人、15日間コース3人が参加、簡単にあいさつを交わす。見たところ、私と同等か高年齢者ばかり・・・予想外であった。
 19:25JAL・タイ航空共同運行便は定刻どおり関空を離陸、バンコクへ向かう。

●9月3日(火)・・・アフリカ大陸へ

 バンコクに定刻どおり23時(日本時間3日午前1時)過ぎに到着。合流予定時間を過ぎても東京組が現れず、ちょっと心配したが、ツアーリーダー及び東京からのメンバーとめでたく合流し、エチオピア航空アジスアベバ行きの飛行機の出発を、空港内の「お寺」みたいな所でごろ寝して待つ。

長くてつらい待ち時間


 午前3時半(日本時間5時半)、やっと離陸。8時間半の長〜い、飛行機の旅である。途中、何回かのサービスの度に「ビァ、プリーズ」を発する。現地時間午前8時前(日本時間午後2時前)にやっとアジスアベバに到着。
 空港内の食堂で、お茶を飲みながら、改めて自己紹介を行い、合わせてツアーリーダーからの諸注意を聞く。

アジスアベバ空港内食堂にて


 その後は、また時間待ち。空港内の待合い室は一杯で、ツアーリーダーにおねだりして、ビールを買ってもらって、それで食堂内で過ごす。(この代金は未払いのまま・・)
 午後12時半キリマンジャロ行きの飛行機に搭乗、1時半離陸。窓側の席が当たってので、GPSをスイッチを入れる。途中、機内からキリマンジャロがきれいに見えた。あそこに登るんだ・・・不安と期待が交錯する。しかし、カメラをザックの中にしまったままにして置いたので写真は撮れなかった。大失敗。
 キリマンジャロ空港に接近、サバンナの景色が眼下に広がる。アフリカに来たことを実感する。午後3時半着陸。
 この空港は、想像していたものよりずっときれいである。床はフローリングで、トイレも清掃が行き届いている。
 気温も25度前後ですがすがしい。標高1300m程度あるので当然か。
 メンバーが現地紙幣に両替する時間待ちの間に、インターネット接続サービスを利用するが、通信速度が遅くて、時間切れ。まあ、いいか・・・。
 手配済みの車2台(ランクル)に分乗して、宿舎に向かう。道路もなかなか立派、郊外は時速100qで疾走する。町の出入り口は、道路にマウンドが設けられていて、スピードを落とさざるを得ないような造りになっている。
 午後5時半、宿舎に到着。ここも手入れが行き届いている。庭の芝生と、見たこともない花をつけた木々が美しい。
 (キリマンジャロ国際空港からマラングホテル・マラングゲートまでの位置図はこちら。

何という花だろうか? 芝生の向こうの木がアフリカらしい


 宿舎は、2部屋づつ1棟になったロッジ形式で部屋も広い。浴室とトイレが質素な感じであるが、贅沢は言えない。山行に備えて、荷造りをして、シャワーを浴びて夕食。
 夕食もなかなかおいしかった。ビールもいける。中瓶程度のものが1000シリング(日本円換算125円程度)である。午後9時過ぎ就寝。


●9月4日(水)登山開始(マラングゲート1900m→マンダラハット2700m:ルート図

 6時起床。天気は小雨模様。霧がかかっている。7時半から朝食、9時に前日と同じ車に分乗して、登山口のマラングゲートに向かう。15分ほどでゲートに着いた。
 ここで、手続き(といっても、全部ツアーリーダーが処理してくれる)とガイドの紹介があり、各自に行動食が配られて、10時過ぎいよいよ出発である。天気も回復して、日が差してきた。

マラングゲート(出発地点)


 この日は、いわゆる熱帯雨林の高木帯の中をポレポレ(ゆっくりゆっくり)で登って行く。勾配もゆるく、荷物も軽く、ゆっくりなので、少し汗ばむ程度である。道がぬかるんでいると聞いていたが、それほどのこともない。日差しも遮られて、日焼けの心配もない。ただ、木々に遮られてGPSの電波受信ができないのが、残念だった。

熱帯雨林を行く こんな木がたくさん


 ゲートに近いところでは、物乞いの子供が森の中からいきなり現れて、ぎょっとした。
 途中、4、5回休憩を取り、ほとんど疲れを感じないまま、約4時間でマンダラハットに到着。しかし、高度から何となく息苦しさを感じる。頭も重い感じだ。先が思いやられる。
 食堂でお茶を飲んだ後、近くのクレーター(火口跡)の散策にでかける。火口の回りをお鉢回りのように一周、次は火口の中に降りて、反対側に登り、半周して元の地点に戻る。所要時間1時間余りの散策だった。

クレーターの内側


 宿泊する小屋は、三角柱を倒したような格好のバンガローである。一棟で4人部屋が背中合わせになっており、8人の収容能力がある。マンダラハット全体では客60人分の収容能力ということである。(他にガイド、ホーターの宿泊施設あり。)室内は、ベットが左右に一つづつ、正面奥に二つ(2段ベット)になっているだけである。

ハンダラハット(右手食堂、3棟が宿泊棟)


 夕食は6時から。スープがおいしい。主食はスパゲティとジャガイモ、副食に野菜(酢キャベツ?)、トマト、オムレツというようなメニューである。
 全体に薄味で、「おいしい!!」と感激するものは少ないが、まずくて食べられないというものはない。ネパールの現地食より、ずっと食べやすい。
 トイレは別棟で水洗。(あまりきれいではない。)水道も使える。
 午後8時頃、就寝。
 夜、トイレに起き出すと満天の星。天の川もハッキリ見て取れる。また、日本では見られない大星雲(マゼラン星雲か?)も見えた。


●9月5日(木) マンダラハット2700m→ホロンボハット3720m:ルート図

 6時起床。6時20分に、お茶(紅茶)が各部屋を回って配られる。7時から朝食。おかゆにみそ汁、卵焼きと野菜。水分を摂るため、みそ汁の後にも、お茶やコーヒーを飲む。
 8時前出発。快晴で暑くなりそうである。最初は昨日と同様、熱帯雨林の日陰を歩く。30分程度で、キリマンジャロの主峰が見わたせる所にでた。右に、ギザギザのマウェンジ峰、左奥にキリマンジャロ主峰が見える。全員、カメラを取り出して撮影会。

右手がマウェンジ峰、左手キリマンジャロ


 このあたりから、木々の高さが低くなり、やがてせいぜい背丈の倍くらいの木が点在する草原地帯になる。
 それとともに、道も乾燥してきて、歩くと土埃が立つようになる。
 ペースは、初日と同じくポレポレであり、疲れはほとんど感じない。40〜50分おきに休憩を取り、午後2時頃、ホロンボハットに到着した。

歩きのスタイル 広々とした草原地帯


 ここは、高地順応のため連泊する人もあり、山頂を極め下りの人も泊まるため、収容人員がほかの地点の3倍の180人分あるとのこと。賑わっている。
 到着の後、すぐにお茶とお菓子のサービス。
 その後、自由時間になったので、スリッパのまま、ホロンボハット全体が見渡せる所まで登る。ちょうど、ガスも切れてきて、マウェンジ峰がきれいに見える。

マウェンジ峰 ホロンボハット全景


 夕食は午後6時から。焼きめしがメインだった。他のメニューは同様。
 体調は、あまり良くない。頭が重い感じで、息苦しい。頭痛に弱い人なら、かなり痛い状況だったろう。幸いにして、私は頭痛をほとんど感じない体質である。
 午後7時過ぎ就寝。
 夜中に部屋が何者かに襲われる夢を見て、大声を上げ、目が覚めた。「果たして、登れるだろうか?」という強い不安が原因で、そんな夢をみたようだ。
 ウフルピークまで登れる人は、これまでの平均で参加者の3〜4割程度とのこと。是非その中に入りたい。でも、体調は、参加者の中で最悪に近い。今のところ脱落者の一番手である。


●9月6日(金) ホロンボハット滞在(マウェンジ・サドル4370mまでピストン:ルート図

 6時頃に起床、6時20分にモーニング・ティのサービス、7時朝食というパターンが、すっかりなじんで来た。
 そして、うれしいことに、頭の違和感は無くなり、息苦しさも感じない。何とか高度順応できたみたいである。
 8時前に、マウェンジサドル目指して出発。この日も快晴。途中で、ゼブラ・ロックと呼ばれる茶色と白の縞模様の岸壁の横を通過する。

ゼブラ・ロックを見ながら


 3時間弱で、サドルに到着。西に、キリマンジャロ主峰と明日泊まるギボハット、それに至る登山道が見え、東にはマウェンジ峰がそびえる。壮大な眺めである。

キリマンジャロ峰 マウェンジ峰


 ギボハットからギルマンズポイントまでの登山道も見て取れる。最初は、なだらか、だんだん急になり、最後は直登に近いのがわかる。
 でも、ここは鞍部、風の通り道になっており、体感温度は低い。20分余りの滞在で帰路に就く。
 帰り道、先頭はかなり速いペースで下っていったが、私はマイペース、足に負荷を感じない早さで下る。他人の巻き上げる土埃を吸うこともなく、好都合だった。
 1時間15分ほどでホロンボハットに帰着。すぐに昼食となる。
 食堂の入り口で外国人のグループがビールを何本も空けている。私が、うらやましそうな表情を見せると、親指を立てて「We make it!!」という。なるほど、「やったぜ!!」は、「make it」というのか・・・是非、同じ科白を吐きたいものだ。。
 昼食は、日本から持ってきたインスタントラーメンと現地の肉じゃがに近い料理。どちらも、おいしく頂いた。
 午後の時間は長いが、寝ると夜に眠れなくなりそうで、外で15日間グループを交えての歓談。
 初日に、我々を追い越して、ホロンボハットまで一気に登り、翌日ギボハットに泊まり、当日朝ウフルピークまで登って、下山してきた日本人の若者が一躍ヒーローとなり、質問攻めとなる。彼も、ホロンボハットから先は、無理をせず、ゆっくり登ったということだった。クレージーでなく、クレバーだったんだ。。

 午後6時から夕食。7時半頃には寝入った。
 だが、やはり不安は大きく、夜中に「畜生!!、敵がせめて来た!!」と寝言を言ったそうな・・・


●9月7日(土) ホロンボハット3720m→ギボハット4750m:ルート図

 起床から朝食までの朝のパターンは、この日も一緒。おかゆも、梅干し、塩昆布といろいろ味を変えて、充分に食べる。
 午前7時半時過ぎ、いよいよ助走も最終段階、ギボハットに向かって出発する。
 天気は一転して、曇り。上空はガスがかかっていて、キリマンジャロの上部は見えない。

 少し行くと、現実的最後の水場。その先のラスト・ウォーター(last water)地点は、今は水が流れてなくて、使えないそうだ。
 Last water 地点で休憩しているとき、試しにポーターの荷物を頭に載せてみる。重さはさほどでないが、バランスを取って歩くのは至難の業である。

お決まりの一枚


 そこから、丘を一つ越えると、そこは童謡「月の砂漠」の景観であった。赤茶けた大地にだらだらとした登山道が伸びる。ほぼ、フラットな感じで、道幅も広く、4駆の車なら難なく走れそうな登山道である。
 見えていた三つの丘の間にさしかかると、サドル・エリアの表示がある。ここで、昨日のマウェンジサドルと同じ標高だ。
 日差しがない上に、風が吹き抜けて、体感温度は寒い。フリースを羽織って軍手をはめて歩く。さらに1時間ほど歩いて、やっとギボハットが視野に入ってきた。

サドル・エリアとガスに覆われたキリマンジャロ 砂漠地帯を行く


 天気は悪く、ガスがさらに麓の方へ降りてきた。白い物がちらと降り、雷鳴も聞こえた。明日の天気が心配である。午後1時過ぎ、ギボハットに到着。

ギボハット(宿泊棟) ここまで順調


 ここは、登山客の泊まるところは一棟である。私たちは、二段ベットが左右に2つづつ、入り口正面奥に一つあり、ちょうど10人泊まれる部屋になった。真ん中にテーブルがあり、そこで食事を取れるようになっている。
 2段ベットにザックを載せ、しばらくして、何かを取り出そうとしてザックを引っ張った時、デジカメが落下!!。「あ!!」と思ったが後の祭り。スイッチが入らない。肝心なところで壊してしまった。!!(と思っていた。)
 お茶を飲んだ後、高度順応のため、散歩に行く。ハットの裏手の山を、4860m地点まで登る。ここまで登った証拠に「犬」と同様の印を残す。

ハット裏手4860m地点にて
 これが最高到達点にならないように・・・

 夕食は5時過ぎから。スープにパン、安倍川餅、ぜんざいとうれしいメニューである。スパゲティに、手を出す人はいなかった。食後、外はまだ、明かりがあるが、就寝時間。
 これで、助走は終わった。いよいよ、頂上アタックである。
 


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 4 キリマンジャロは誰でも登れるか?


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