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スタッフ | |
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監督・脚本・撮影 | リチャード・リンクレイター | |
美術監督 | ボブ・サビストン | |
製作 |
トミー・パロッタ アン・ウォーカー・マクベイ パーマー・ウエスト&ジョナ・スミス |
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音楽 | グローヴァー・ギル | |
キャスト | ||
ウィリー・ウィギンズ イーサン・ホーク ジェリー・デルビー ローライ・リンクレイター リチャード・リンクレイター スティーヴン・ソダーバーグ |
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公式サイト(日本語) | ||
http://www.foxjapan.com/movies/wakinglife/ |
「恋人までの距離」などのインディーズ風味あふれる作品で知られるリチャード・リンクレイター(なんちゃってよく知らないんですけどね)による、非常に実験的なアニメーション映画。先日「ダーク・ブルー」を見たときに予告編がかかってて、妙に気になってたの。ロトスコープよろしく一度実写映像を撮影した後で、いくつかのグループがそれぞれ独自にその上からペインティングやイフェクトを施して、一つのアニメーションとして仕上げたもの。非常に何というか、不思議な映画。なんていうかな、一種のアシッドムービーっぽい趣がある。画面には様々なオブジェが描かれる訳なんだが、これらが何一つフィックスされてなく、終始画面内をうにょうにょと動きをやめることがない。その不安定な画面(酔いそう)がそのまま、お話の中に放り込まれた主人公の気持ちの揺らぎみたいなものを現していると言えるのか。
筋はあるような無いような。久しぶりに帰郷した青年がタクシー乗り場で怪しげなボートカーの親父に誘われてその車に乗り、訳のわからない場所で下ろされたと思ったらいきなり目の前に迫ってくるクルマ。そこからは繰り返し繰り返し、青年は見知らぬ人物と出会い、彼らの話を聞かされていく。話題は哲学的なものだったり、社会への抗議であったり、コミュニケーションにまつわるものだったり、映像論だったり様々。これらの話題が、その話題と語り手(そしてアニメーション化に携わったチーム)ごとに微妙に映像表現を変えた形で語られる。そこでは実存主義とポストモダニズムが分析され、トリュフォーの映画論が再構築されようとし、イエィツやロレンスまでもが語られる。基本的な流れはサルトルの実存主義とそのカウンターカルチャーとしてのポストモダニズム、それを超えたところに位置する、ディック的ななんだか良くわからんものへの流れをなんとか定着させようとする試み、みたいなもんなのかな、ってああ、自分でも何言ってるのか判らん。
小劇場系の、役者が延々長ぜりふを語りまくる系のお芝居があるけれど、ああいう感じのトークを舞台装置を換えて次々と見せられるって感じかな。もしかしてヒアリングの能力があればもっと楽しめるのかもしれない。字幕を追いかけていくだけだとこれはかなりな苦行だ。そんな状態でも何とかがんばって膨大なせりふの流れを追いかけていくと、どうやらこの映画が言いたいことっていうのは、人生ってのは「もう寝るか?」と聞かれたときに「いや、まだ起きておく」って答える、その答えをする瞬間瞬間の積み重ねだと、「もう寝る」と答えたときが人生の終わりなんだと、そういうことなんだろうか。"起きている時間"をどう認識するのか、さらに、それを認識できればそれは直ちに生きているってことになる、ってほんとに言えると思うかい? ってあたりへの問いかけをこめた映画であるって言うこと? (自信全然なし)。
少々お話を追っかけていくのがしんどくなってきたあたりの終盤で、ディックの話が出てきたりしてかろうじて「おお、ディックに行き着くのか」などと、今自分が見ている映画に対しての興味が再燃して、かろうじて最後まで映画に付き合うことはできたのだけど、一時ヤク中だったディックの、彼の頭の中ってこうだったんじゃないかと思わせるような映像が次々と現れるあたりで、実はこれってディックの不安や妄想みたいなものに深く斬り込もうとした映画なんだろうか、なんて全然関係ない方向に思考が行ってしまったりしてね。
結局主人公に何が起きたのか、はっきりしたことはわからないし、その後の展開も、結局主人公は「起きる」ことができたのか、それとも未だに夢の中で、新しい夢に目覚めているだけかはわからない。結局人生だって同じだよと、「目覚める」ことを強く念じてない人生は夢の中にいるのと同じだよと、そういうことなのかなあ。
様々に不可解なものを残しつつ、最後まではっきりとした答えを示さないまま空中に吸い込まれていく主人公。それはすなわち、今、こうして生きている我々の人生なんて、引っかかるところを見つけられなければたやすく宙ぶらりんになってしまうようなものなんだよ、と、そのとき君はどこに手がかりを求めるのかね? と問いかけるような映画であったと言うことなんでありましょうか。時々「お」と思う画像処理があったりして眠けをさまされるんだけど、全体としてはかなり不可解な映画でござんした。20若かったら徹夜で語るかも知れんけど、今の、オッサンになっちゃったわたくしには少々エッジの縁がとんがり過ぎかもな。