ゴジラ×メカゴジラ

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監督手塚昌明
製作富山省吾
脚本三村渉
撮影岸本正広
音楽大島ミチル
キャスト
釈由美子
宅麻伸 高杉亘 友井雄亮
中原丈雄 加納幸和 小野寺華那 上田耕一
水野久美 中尾彬
公式サイト
http://www.godzilla.co.jp/

 1954年のゴジラ出現は芹沢博士のオキシジェン・デストロイヤーと、彼の死を賭した活躍によりかろうじて退けることができた。だがそれ以降、生態系のバランスが微妙に狂った日本周辺では、謎の巨大生物がたびたび出現、事態を重く見た日本政府はこれら巨大生物への対応を専門の任務とする自衛隊の特殊部隊、対特殊生物自衛隊、通称"特生自衛隊"を創設していた。そして1999年、超大型台風の接近する千葉県館山で特別任務に就いていた彼らの目前に、巨大な嵐とともについにゴジラは再びその姿を見せつける…。

 ………という、ここまでの掴みがすべてと言ってもいいかも知れない。ここでハートをがっちり鷲掴みにされれば、あとはもう全然問題なく最後まで映画を楽しめる。本当に久しぶりに最初から最後まで楽しめるゴジラ映画を見た気分。ほとんど「怪獣総進撃」以来じゃないだろうか(w。

 「ゴジラ×メガギラス」でアラは多々あれどもなにかこう、期待を持たせる映画づくりをしてくれた手塚昌明監督のゴジラ映画第二作目。前作で妙に引っかかっていたところの大部分が、見事に改善されている。特に脚本。いやいや、ちゃんとホン書けるやんけ三村渉、今までのヘタレはいったい何だったんだ(^^;)。話の軸を変なふうにずらさず、"ゴジラを倒したい人たちの物語"、と言うテーマ一本でシンプルかつそれなりに深い物語がでけておるではないですか。感心したよ、真剣に。

 脚本が良くなったので、お芝居も総じて及第点。基本的にうまくはない釈由美子なんだけど、彼女のキャラクタを綾波系にして、それは芝居が下手なんじゃなく、ちょっと人間的に深みを持てずに育ったからなんだよ、とかわして見せたり、ほとんどのキャラクタが軍人か学者なんで、それなりに型にはまった動きをしてもまあ許せるでしょ、ってな感じを自然に醸し出してるあたりはうまくやったな、と思う。変な思い入れを持ったキャラがお話をぶちこわしにする、てのが今まで(少なくとも平成以降の)のゴジラ映画の悪い伝統だったんだけど、今回それがなく、みんな案外ナチュラルなのね。馬鹿みたいな振る舞いをする登場人物が一人もいない、ってのは気持ちがいい。ギルスの彼がちょっと芝居しすぎなのを除けば、総じてみなさん、悪くないお芝居されてると思う。茜(釈由美子)とは反対側の立場になる少女、沙羅(小野寺華那)も萌え系美少女とは言えないけど、微妙に心に残るいい芝居を見せてくれている(ぉぃ)。松井は…まああれはああいうもんだからな(^^;)。

 んで絵の方。今回予算的に厳しかったんでしょうか、いつもの東宝の、"味はともかく見た目は超豪華な一流ホテルのフルコース"ふうな絵造りとは一線を画した、案外金かかってないっぽい絵になってて、実はこれも個人的には高い点数つけてあげたい一因だったりする。貧乏くさい絵がいい、と言うのではないのだよ、「うちらはこんなすごい特撮できるんですよー」と押しつけてこない、あくまでストーリーの流れに沿って考えられた絵造りがされている、って辺りがとてもいいの。本来主役であるはずのゴジラがらみで実は案外印象的なシーンが少なかったりもして、そこはちょっと気になるんだけど、それ以外は実にこう、抑制がきいてる、と言いますか。

 ああそうか、ここまで書いてやっと気がついた。この映画がいいのは、なにより全体に抑制がきいてるからなんだ。それがすごく新鮮なんだな、なるほど。

 それでもまだ穴はある。結構ある。だけどそれを言い出したら昭和のゴジラだって穴の宝庫なのだ。問題なのは、穴があっても、コンティニュイティーが多少おかしくても、映画が始まった瞬間にその映画に惚れられるか、ってとこなんじゃないかと思うわけで、で、わたしゃ映画がはじまってすぐのゴジラの登場シーンで真剣に「惚れた」と思ったのですよ(ちなみにこの館山のシークエンスはMASHさんの手になるものらしい。さすがにわかってらっしゃるなあ)。ゴジラはそう出てきて欲しい、と思わせる出方だったのですよ。もうその時点でこの映画には惚れてしまったわけですな。なので穴は気にならない。ここで惚れてしまったのだね。惚れてしまえば痘痕も靨さ(w。

 実際に小屋に入ってあたりを見回してみると、どちらかというと苦戦している感じの今回のゴジラなんだけど、できたらこのスタッフでもう少しシリーズを続けて(続けられるよね、ネタ的に)欲しいなあと思いますわ。この流れを切って欲しくないですね。

 あー最後になりましたが、わたくし的に一番印象に残るシーンは、なんと言っても終わり近くで、中尾彬(総理役)氏と上田耕一(防衛庁長官)氏ががっちり握手するシーンですな。これまでG-FORCEの長官、副官としてさんざんゴジラに煮え湯を飲まされてきた二人が、「やっと勝ったですよー」と喜色満面で握手するシーン、もしかしたらこの映画の最大の見せ場かも知れないっす(^o^)。

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