CQ

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監督・脚本ローマン・コッポラ
製作総指揮 フランシス・フォード・コッポラ
ジョージア・カカンデス
ウィリ・ベア
プロデューサー ゲイリー・マーカス
音楽メロウ
キャスト
ジェレミー・デイヴィス
アンジェラ・リンドヴァル
エロディ・ブシェーズ
ジェラール・ドバルデュー
ジャンカルロ・ジャンニーニ/マッシモ・ジニ/ジェイソン・シュワルツマン
ビリー・ゼーン/ジョン・フィリップ・ロー/ディーン・ストックウェル
公式サイト(英語)
http://www.mgm.com/experiencecq/

 1969年、パリ。学生による革命運動お気運の盛り上がるこの街で、アメリカからやってきた青年ポールは映画編集者として毎日を送っていた。彼が理想とするのはディティールに徹底的にこだわった新しいスタイルの記録映画。でも今、彼が毎日リーダーを覗き、フィルムを継ぎ接ぎしているのはチープなB級お色気SFアクション映画、"ドラゴンフライ"。だが、安物映画にも現状の革命を望む若者たちのメッセージ性をこめようとする古手の監督と、娯楽映画一辺倒の大物プロデューサーの間で意見は対立。監督以下のスタッフはほとんど更迭され、かろうじてスタッフに残ることができたポールにとっても先行きは楽観できない様子。しかもプライヴェートな自らの記録映画と"ドラゴンフライ"の撮影が同時に進んで行くにつれ、ポールの中では自分と、同棲しているパリジェンヌ、マルレーヌ、そして現実には存在しないはずの"ドラゴンフライ"のセクシーなヒロイン、ドラゴンフライの間におかしな三角関係が芽生えてきているのを感じるのだった…。

 フランシス・フォード・コッポラを父に持つ若手監督、ローマン・コッポラの劇場映画第一作。ヒッピームーヴメント華やかなりし60年代末を舞台に、一人の若者が映画を作っていくという過程の中で、理想と現実、真実と虚偽の間で悩みながら、自分を表現するとはどういうことであるべきなのかを探し求めていく、と言うようなお話といえるか。まあ小難しく考えなくても、映画オタクの気弱なお兄ちゃんが、自分が本当に作りたいと思ってる映画の方がなかなかうまくいかなくて悩んでるときに、ほんの食い扶持仕事と割り切ってたはずの安物映画のキャラクタに妙に感情移入しちゃったことが原因で起きるラブコメ、として見てそんなに悪いもんじゃあない。

 当時の(映画がハリウッドだけのものではなかった頃の)ヨーロッパの映画産業の雰囲気やその中で作られたいくつかの名作の「におい」みたいなものを上手に映画の中に取り込んでいると思う。パンフでも語られてるとおり、"ドラゴンフライ"って映画内映画の元ネタは「バーバレラ」。ポールが心底撮りたいと思っている映画ってのがゴダールの映画みたいなモンなんだろうな、てのはすぐにわかるし、登場する映画屋さんたちも元ネタになった人がだれか、何となく予想できたりするし。そこら辺でコッポラの息子の(父親の教育のたまものなんでありましょうか)映画オタクぶりを見て楽しむ、みたいな見方もできるかも。音楽を担当している「メロウ」というグループの妙に懐かしげなポップミュージックも心地よい。

 んでもですねえ、なんで今、1969年を舞台にしたこういう映画を作る必要があんのかなあ、って辺りはちょっとわからないなあ。この当時の安物映画の製作風景を、それを見ただけで「ああ、いかにも安物映画の制作風景だね」ってわかるのに、今になるまでの時間を必要としてしまった、ってことなんだろうか。テーマとしちゃ、そりゃ充分普遍的だし、それなりに胸にしみる別れと出会いも用意されてはいるんだけど、でもさ、こういうお話って'70年代にすでに日本じゃあ「COM」あたりでマンガになってたんじゃないのかなあと思ってしまったりして、「なんで今更?」みたいな気になったのも確かなわけで。

 ローマン・コッポラって人はミュージック・クリップなどではすでに高い評価を受けている人らしく、映像と音楽のセンスなんかはさすがに旨いもんだなあと思うし、全体として心地よい映画になってると思うんだけど、うん、これだったらオレは(ニュアンス微妙に違うかも知れんけど)坂口尚さんの初期の短編集読んだ方が、何かと浸みいるものは大であるような気がするな。もうちょっとでたらめな映画を、一方的に期待してたオレが悪いのかも知れんけどね。

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