リターナー

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監督・脚本・VFX山崎貴
製作亀山千広/鳥谷能成/阿部秋司
共同脚本平田研也
音楽松本晃彦
キャスト
金城武
鈴木杏
高橋昌也/岡元夕紀子/村田充
飯田基祐/清水一哉/川合千春
樹木希林
岸谷五郎
公式サイト
http://www.returner.net/

 2084年、人類は異星人ダグラとの長い戦争に力尽き、ついに最後の拠点、チベットをも失おうとしていた。今や人類に残された最後の希望は、ようやく完成した戦略時間兵器を使い、初めてダグラが地球に出現した2002年に兵士を送り込み、彼らの"最初の一体"を破壊することしかない。だがすでに、ダグラの先鋒は基地内に侵入していた。殺戮と混乱の中、一人の少女、ミリだけがかろうじて時間兵器のゲートに飛び込むことに成功する。

 そして2002年、地球、ヨコハマ。闇社会の取引を次々とぶちこわしていく壊し屋がいた。裏の世界で"リターナー"と呼ばれる彼らの中でもとびきりといわれるのがミヤモト。今夜も彼は大陸孤児を誘拐しては彼らの臓器を密売する闇組織の取引現場に単身乗り込んでいた。次々と闇組織の兵隊たちを倒していくミヤモトの前に立っていたのは、かつてミヤモトの親友を誘拐し、その臓器を売り飛ばしていた組織の幹部、溝口。さらにその戦闘の現場に、ミリもまた転送されてきていたのだ…。

 「ジュブナイル」でオジサンの涙腺を完膚無きまでにぶち壊してくれた(^^;)山崎貴監督作品最新作。前作が、なんていうかな、日本の少年少女を体験したことのない層にはも一つ共感しにくい部分もある映画だったとしたら、こっちはもう、どこに出しても恥ずかしくない小気味のいいエンタティンメント・アクション映画に仕上がっている。ただ、それが故にこの映画、「ジュブナイル」ほどには個性的でない、というかまあありていに言ってごくありふれた、見たような設定と見たようなキャラクタで、見たようなお話が進んでいく映画なんだな、これ。

 マーケティング的な問題というか制約があったのかも知れないし、世界公開も見据えた上であえてそれほど速くない直球でど真ん中をねらった映画、といえるのかもしれん。あるいは、実はこれ、その裏に山崎貴の壮大なパロディ精神が隠されてるとか(まさかとは思うけど、途中で登場する宇宙人のデザインなんか見てると、案外それもアリかも知れないと思ってしまうんだよなあ。見え見えの伏線、突然始まるご都合主義、なんてのはハリウッド製大作映画の常套手段だったりするわけだし)。いずれにしても全体に、"冒険してない"印象は否めないのだね。

 ほんじゃダメ映画なのかといわれると、いえいえ決してそんなことはないわけでして、二点、あるいは二人の人物に注意してみると、これはこれで結構見所があっちこっちにちりばめられててそこはかなり楽しいんだな。一点目は山崎貴という人のビジュアルデザインのうまさ。全編に渡ってきわめて計算と配慮の行き届いた絵が作られていると感じる。「ジュブナイル」でも感じたのだけれど、この人の作る映像は(動きがあるときも、ないときも)実にこう"デザインされてる"感じがするのだよな。なのでありきたりなストーリーを追っかけていくだけなんだけど、そのストーリーに沿ってスクリーンに映し出される絵がとてもいい。

 もう一点はヒロイン、鈴木杏。ああもうなんと言ったらいいのかこの娘はぁぁぁっ!。「ジュブナイル」での11歳の鈴木杏は、まだこう、「うんうん、困ったことがあったらオジサンに相談したらいいからね」レベルに可愛かったわけだが、今回、15歳になった鈴木杏は、過酷な未来世界で戦士として戦ってきた経験からくる凛としたかっこよさと、ミヤモトが作るスパゲティに目を輝かせるまだまだ幼い少女の部分、そいでもってそのミヤモトにちょっとほのかな思いを寄せる思春期の少女の部分、複雑な環境にあるミリという少女の、その時々の様々な部分を完璧に演じ分けて見せている。ほとんど一人三役。すばらしい。この映画、はっきり言って鈴木杏で元は取れたと言っても過言ではない(何を暴走しとるかオレ)。

 というわけで「ジュブナイル」のミサキに胸がきゅんとなったキミ、大人になって帰ってきたミサキに再会できるって意味では見て損なしの映画なので、観にいってみるのもいいと思うぞ。

 最後に蛇足で他の出演者についても。主役のカネシロ君は大根すれすれで困ったものだが、そのせいで鈴木杏のしっかりぶりが際だってるのでまあいいか。この人は「不夜城」の時にも思ったけど、顔はいいけどちょっと情けない役どころ、ってのが案外はまってると思う。悪役の岸谷五郎、年中シチュー作ってるようなお兄ちゃんで大丈夫かいなと思ってたんだけど、こっちは結構いい感じにキレた悪役ぶりでなかなかよろしおした。脇を固める樹木希林は、悪くはないけど抑制きかせすぎだったかも、ってな感じ。

 蛇足ついでにもう一発。エンドクレジット見てびっくりしたんだけど、「出演者」に樋口真嗣、神谷誠、加藤將の名が(^o^)。これから観にいく人、どこに出てるのかしっかり探して、後で教えてくださいな(^^;)。

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