ゴジラ×メガギラス -G消滅作戦-

劇場版パンフ(安いほう)表紙 スタッフ
監督手塚昌明
脚本柏原寛司/三村渉
音楽大島ミチル
制作富山省吾
出演者
田中美里
谷原章介
鈴木博之/中村嘉葎雄/かとうかずこ
永島敏行/星由里子/伊武雅刀

 1954年、たびかさなる水爆実験の影響で生まれた怪獣ゴジラ。人類の産み出した超エネルギー、"核"に激しい敵意を持つゴジラは、その後も日本の原子力発電所などをたびたび襲撃。この災厄から逃れるため、日本は原子力エネルギーの利用を全面的に廃止。それに替わって重水素を使った全く新しいエネルギー、プラズマエネルギーの実用化に成功。だが、このプラズマエネルギーから漏れる微小な中性子もまたゴジラの攻撃目標となってしまった。1996年、ゴジラの災厄を逃れ、新たな首都となった大阪に建設されたプラズマエネルギー発電所を襲撃するゴジラ、それを阻止しようとする自衛隊特殊部隊の一員として辻森桐子は初めてゴジラと対峙する。それから5年………

 いやあ、なかなかヤバげなツカミっすね。さらにこの掴みに続くお話ってのが………

 尊敬する上官をゴジラによって殺され、復讐に燃える対ゴジラ特殊部隊、"Gグラスパー"隊長の辻森、ゴジラの災厄から逃れるためには、ゴジラを地上から消滅させるしかない、とする科学者とそのかつての愛弟子で、マイクロマシン製造の天才、工藤、さらにプラズマエネルギーの普及を目指す政府高官などが入り乱れる中、ついに究極の対ゴジラ兵器、"ディメンション・タイド"が完成する。それは狙い定めたポイントに、直径2メートルのブラックホールを作り出し、周囲のものを全て吸い込んで消滅する超兵器。だが、その試射の時に発生した時空の歪みは、太古の昆虫、メガヌロンを現代に呼び込んでしまったのだ。繁殖し、融合し、巨大化してメガギラスとなった新怪獣、ゴジラ、そして人間たちの三つ巴の戦いがお台場を舞台に展開する………

 いやいやいやいや、キミら何も反省してへんやろ、と思わずツッコミを二つ三つ入れたくなっちゃうようなノリなんですが、これがあなた、スクリーンで見ると意外なくらい気にならないんですよお客さん(だれやねん)。条件つきではあるけれども、これ、久々のゴジラ映画の傑作と言っていいかもしれない。どこがいいのか?何を置いてもそれは"心意気"、みたいなところに尽きるような気がしますな

 怪獣映画ってオレはこういうもんだと思うぜ、という手塚監督の思いは、かなりしっかりスクリーンに込められていると思うんですよね。どこか一点が飛躍的に良くなった、とかそういうんじゃなく、映画を通して監督の目が行き渡ってる感じがしてそれがとても心地よい。おそらくこれ、ホンの状態では前作とおんなじくらい頭かかえるようなお話だったに違いないと思う。でも、そんなどうしようもない脚本のハンデを負ってても、監督に「オレが考える怪獣映画ってなぁ、こういうもんなんだ。」って意識があれば、んでそんな監督の気持ちをスタッフがしっかりと受け止めれば、映画ってのは多少のネガティヴ要素をふっ飛ばしてしまうほどのパワーを発揮するんだと感じ入ります。

 一つ一つの、細かいところで、ほんのちょっとのブラッシュアップがなされただけで、ここまで映画のトータルな完成度は上がって見える物なのか、と少々驚かされました。あいかわらずツッコミ入れようと思ったらいくらでもできる映画ではあるんだけど、少なくとも「モスラ対ゴジラ」まであと一歩のレベルまで、ゴジラ映画のクオリティは戻ったんではないだろうか(ワタシのなかではゴジラ映画、'54年の「ゴジラ」は別として、最高は「キンゴジ」、以下「モスゴジ」「総進撃」「息子」「逆襲」、てな順です。これは、メッセージ性も強い「ゴジラ」以外はエンタティンメント性も要求されると思うんで、それも加味した並び方ってことで)。その事は素直に喜びたい。役者さん以上にスタッフの皆さんに、今回は心から拍手を送りたいな。

 そのうえで、まだまだ課題は多いってこともあわせて、釘を刺させていただいてもいいっすかね(^^;)。脚本のバカさ加減はどうにかして欲しいし、脚本にも関連するけど、コンティニュイティのまずさで、決着がついてなきゃいけないことがらのいくつかが、ほったらかしのままで映画が終わってしまったような気もする。ガジェット関連のデザインももう一考して欲しい。"ミカヅキ"の小物があれだけの魅力を見せてくれるんだから、天下の東宝だってまだまだやれることはたくさんあるはず。それより何より、個人的にはラスト。怪獣映画のラストシーンは夢と余韻を味あわせて欲しいんだけどな。平成ガメラの第一作がとてもいいのは、あの夢のあるラストシーンに拠るところ大だと思うのだけれど。

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