ナヴァロンの雷鳴

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サム・ルウェリン 著/平井イサク 訳
カバーイラスト 生頼範義
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫NV
ISBN4-15-041013-5 \780(税別)

過労死寸前の男たち

 ナヴァロンの巨砲を破壊し、ネレトヴァ・ダムを決壊させ、そして今また、ドイツの新型U-ボートの出撃阻止に成功して疲れ果てて本国に戻ってきた三人の男、マロリー、ミラー、アンドレア。だが、戦局に重大な影響を与える武勲を立て続けに立ててきた彼らに英本国の対応は素っ気ないものだった。そのうえ、今また彼らの直属の上官であるジェンセン大佐は、彼ら三人に"ほんのちょっとした仕事"をさせようとしている。ジェンセンの言う"ちょっとした仕事"とは、ドイツ軍がギリシアの小島に建設した、V2号を上回る規模のロケット兵器、V4号の発射基地を破壊せよ、というものだった…

 アリステア・マクリーンの傑作の続編をサム・ルウェリンが描くシリーズ、「ナヴァロンの風雲」に続く第二弾。今回もなんていうかな、こじんまり器用にまとまった、楽しめる戦争アクションになっている。まああれですよ、昔ながらの超人的な連合軍の兵士が無能なドイツ兵をばったばったとなぎ倒して、絶対困難と思えた任務を見事に達成しちゃう系の映画なり小説なりに求められるおもしろさは充分満たしてる、ってレベルでは楽しめる、ということ。しかしなあ、これは一回でおしまいにしといた方が良かったんじゃないの?ってのが正直な感想だな。

 この三人組、極秘作戦から帰ったと思ったら、すぐに次の作戦へ、ってのを繰り返しやらされてるんだよな。しかもその一つの作戦が映画になっちゃうくらいものすごい作戦を。4連発で。しかも今回もへとへとになって帰還したらジェンセン大佐が待ってたりするし。こいつらドイツ軍にやられる前に過労死でぶっ倒れるぞ、って感じ。

 シチュエーションはまあそれでも苦笑しつつ大目に見るとしても、シリーズが進むにつれて冒険小説に必須のエッセンスもどんどん薄れていく感じで、そっちの方の不満は我慢ならんものがある。挫折寸前のところまで、あるいは実際にものすごい負け戦を一度経験して、そこから主人公が立ち直っていく過程ってものが描かれてない冒険小説ってのはカスだと思うんだけど、残念ながらルウェリンの続編では、そこら辺の描写が甘い。一回だけなら大目に見るけど二回おんなじ事、というか二回目になってその辺の描写が一段と薄っぺらになってしまっているのはちょっとなあ、ってこと。このままだとヒギンズみたいになっちゃいますぜ。そうなったらマロリーやミラー、アンドレアに会わす顔がなくなりまっせ、ルウェリンさん、ってとこですな。この辺で打ち止めにしておきましょうや。

02/09/08

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