暗殺者の烙印

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ダニエル・シルヴァ 著/二宮磬 訳
装画 野中昇
デザイン 石崎健太郎
文春文庫
ISBN4-16-766102-0 \781(税別)

ヒギンズ+クランシー/3

 ケネディ国際空港発、ヒースロー行きのトランスアトランティック航空002便。何事もなく空に飛び立ったその機の飛行時間はしかしほんのわずかなものだった。ニューヨークの沖合に潜む小型ボートに乗り込んだ何者かによって発射されたスティンガー・ミサイルが、002便を粉々に破壊してしまったのだ。

 時を移さず中東の過激なテロ組織、"ガザの剣"が犯行声明を出す。アメリカ大統領は直ちに報復攻撃を命令。だがCIA・対テロ対策センターの情報工作担当官で、"ガザの剣"を担当するマイケルには腑に落ちない部分が多すぎた。いつもの彼らのスタイルと今回のテロに、なにかかみ合わないものがあると感じられて仕方がない。何より彼の心に引っかかるもの、それは直後に発見された犯人とおぼしき男の死体にあった。口封じのために殺されたと思われるその死体には、マイケルにとって忘れられない"印"があったのだ………。

 もとテレビプロデューサー、ダニエル・シルヴァ。デビュー作「マルベリー作戦」が第二次大戦を舞台に、なかなか読み応えのあるお話になってたわけなんだけど、第二作の本書は現代を舞台に移し、今風な大規模テロやヒギンズの名作、"ジャッカルの日"を思わせる一匹狼の暗殺者とか、クランシーの「愛国者のゲーム」のクライマックスを思わせるヤマ場とかいろいろネタを持ち込んでくれてて今回もサービス満点。元がテレビ屋さん、ってことが関係あるのかどうか知らないけれど、きわめてビジュアル的に見栄えのするシーンが連続するお話で、そのあたりも悪くない。安心して楽しめる。

 ただなあ、このタイプのお話は、それこそもう、これまでにいくらも発表されているわけで、特に新鮮味があるってわけでもないんだよな。時間つぶしには悪くないと思うけど、そんだけ。

02/05/26

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