ブラックアウト

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ジョン・J・ナンス 著/飯島宏 訳
カバー装画 岡本三紀夫
新潮文庫
ISBN4-10-204716-6 ¥705(税別)
ISBN4-10-204717-4 ¥705(税別)

これでもか!の大サービス…なんだけど

 カナリア諸島に向けて飛行中、突如墜落事故にあったシーエア122便の事故を追ううちに、その背後に潜む全く新しいテロ組織の存在をかぎつけたジャーナリスト、ロバート。彼は謀殺されたと思われる友人の形見のノートパソコンとともに、この事実を解明すべく香港から米本土に向けて飛び立つメリディアン航空のジャンボジェットに乗り込んだ。だが闇の組織は彼の行動を見逃してはいなかった。突如コクピットを襲った強烈な閃光の直撃で機長は死亡、運良く閃光を直視することを免れた副操縦士も、ほぼ失明に近い状態のまま、ジャンボ機は空中を漂流することになってしまったのだ………

 航空サスペンスといえばJ・J・ナンス。今回は飛行中の航空機の操縦者を一瞬にして無力化、航空機を墜落させてしまえるという新兵器(やや荒唐無稽ではありますが)を武器に、エアライン業界に一大衝撃を与えようと画策する新種のテロ組織の企てを察知したジャーナリストと、彼をサポートするFBIの女性捜査官、キャットがアメリカの政府中枢にまで勢力を拡げる謎のテロ組織の追求をかいくぐって、なんとか米本国にこの事実を伝えようと奮闘する物語。

 いきなり飛行中の旅客機の操縦者が無力になり、しかも乗客にも操縦経験者が皆無、頼りになるのはフライトシミュレータマニアの少年だけ、という状況下で何とか機体を安全に着陸させよう、というまるで「超音速漂流」もかくやという大サスペンス。しかもあなた、これはあくまで前半の山場。後半になると、漂流機の生き残りたちとテロ組織によるスリリングな追っかけっこが控えてる。もうサービス満点なんだよね。ところがこの大サービスぶりが逆に、ナンス作品の魅力である、ピンと張りつめた航空サスペンスの持ち味を著しく損ねてしまっているような気がしないでもない。出だしの仕掛けのちょっと「そんなもんできるのかなあ」的な違和感もあって、今回はナンス作品としては少々スカ引いた気分だな。

02/05/06

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