エンディミオン

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ダン・シモンズ 著/酒井昭伸 訳
カバーイラスト 生頼範義
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN4-15-011389-0 \880(税別)
ISBN4-15-011390-4 \880(税別)

げんき少女のだいぼうけん!

 惑星ハイペリオンを巡る巡礼たちの過酷な旅と連邦(ヘゲモン)の崩壊からすでに三世紀。連邦に変わって人類世界を支配するカトリック教会勢力、"パクス"のデ・ソヤ神父大佐に緊急指令が下る。教皇の全権を委任されて彼が臨むのは、ひとりの少女の保護。惑星ハイペリオンの"時間の墓標"を超えて現れるその少女、アイネイアーこそ、かつての巡礼のひとり、ブローン・レイミアとキーツ・サイブリッドの間に生まれ、パクスによる人類支配を危うくする存在だというのだ。

 一方ハイペリオンでは、いわれのない罪に問われ死刑判決を受けたひとりの青年が、謎の老人によってその命を救われていた。老人は青年に、やがてハイペリオンに現れるアイネイアーを守り、彼女の旅を完遂させる手助けをして欲しいと依頼する。青年の名はエンディミオン、謎の老人こそ、巡礼の生き残り、"詩人"、マーティン・サイリーナスその人だったのだ………。

 天下無敵のジャンルSFリミックス第三弾。今回は「リングワールド」ばりに未知の世界を次々と巡る主人公たちの苦難の物語に、「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」で大きく様変わりした世界の様子が、SF的なガジェット満載でばりばり語られる。タイトルにもなっている主人公、エンディミオンが実は本書では案外役立たずで、むしろアイネイアーと、サイリーナスと袂を分かって旅の仲間になるアンドロイド、ベティックのほうがはるかに魅力的だったりするのがなんともはや。このあたりは続く「エンディミオンの覚醒」で文字通り覚醒して大活躍してくれるんだろうかね。

 人類対アウスターの大激突と、それに続く連邦の大崩壊がもたらした宇宙規模の大災厄を生き延びた人間たちが、カトリックを基本に据えたパクスなる組織によって統合され、文明的には退化した世界となってしまっている、というあたりの設定、ありがちではあるのだけど、次々とぶち込まれるSF小物軍団のおもしろさで楽しく読んでいける。凄いと思う。んでもなんかな。お話としての完成度とかそういうことをそっちのけで、ただひたすらその度はずれ具合をぐいぐい押しまくってくれた「ハイペリオン」ほどのわくわく感はないかもしれない。神様がらみになっちゃったところで気持ちの中で微妙に引くものがあったのかもしれないけどね。

02/03/03

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