韓国軍北侵

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デイル・ブラウン 著/伏見威蕃 訳
カバーデザイン ツトムヤマシタ
二見文庫
ISBN4-576-01038-7 \733(税別)
ISBN4-576-01039-5 \733(税別)

 国境を越えて韓国領空に進入した北朝鮮の攻撃機、手もなく韓国側の迎撃機の威圧によって自ら胴体着陸の道を選んだその機体に搭乗していたのは、今は死体となった、飛行服もつけていない餓死寸前の状態のパイロット。その機体の両翼には中国製と思しき核爆弾が。すでに北朝鮮には兵器として運用可能な核兵器が存在する。韓国の首脳に衝撃が走った………

 天才的エンジニア兼航法士、パトリック・マクラナハンとハイテク兵器開発部隊、"ドリームランド"の面々と彼らが産み出す超ハイテク兵器が大活躍するシリーズ………えーと第何弾になるんでしょうか。前作、台湾侵攻から3年後、相変わらず緊張状態の続く極東を舞台に、"ドリームランド"の新兵器、EB-1C、"メガフォートレス2"が大活躍するハイテク軍事サスペンス。前作で死去した初代"ドリームランド"指令、エリオット将軍が心血を注いだ初代"メガフォートレス"に換って、今回からはB-1改造の二代目"メガフォートレス"が登場。相変わらず強引なやり口で一方的に世界の平和を守ってくれる。

 ソ連崩壊後、この手の軍事サスペンスはどこを新たな敵にするかでかなり苦労している訳なんだけど、ここのところ、この手の作品を得意とする作家さんたちの目はアジアに向いているようで、自分たちがどんな危険地帯にいるのかを認識してないのは、案外日本人だけなのかも知れない。ま、それはそれとして、今現在の状態で、韓国軍が周到に用意を調えて北朝鮮に侵攻したら、飢餓で苦しむ民衆の大半はむしろ韓国側につき、北朝鮮の、もっと言うなら金正日とその側近によって牛耳られている国家体制を転覆させる可能性は案外あるかも知れないと感じられ、その部分に置いてはそれなりに"リアル"なシミュレーションになっていると思ったりもする。ただ、やはりアメリカ人から見た極東ってのは、限りなく遠い世界だな、って印象も持つわけで、「こういう事も起きるかもな」ってのと「こうはならんだろう」って感想が交代でやってくる類の本になっている。なんだかんだ言ってもアメリカ人にとって、アジア人ってのは、わからん人種だってのが前提になっているエンターティンメントでは、ある。

 退屈しのぎには悪くない本だが、心底楽しめないタイプの本ではあると思うな。基本はインディアンの大群に立ち向かう騎兵隊の英雄譚となんぼも変わらん世界な訳で、そこに嘘くささといらぬお節介を嗅ぎつけた瞬間、お話のすべてが楽しめないものになってしまう。シリーズものが抱える弱点なのかも知れないけどね。

01/9/14

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