台湾侵攻

表紙

デイル・ブラウン 著/伏見威蕃 訳
カバーデザイン ツトムヤマシタ
二見文庫
ISBN4-576-00596-0 \733(税別)
ISBN4-576-00597-9 \733(税別)

 1997年、台湾。進歩的な思考の政治家の進出によって、台湾の中国に対する思考にも変化の兆しが見えていた。それまでの、台湾主導による中国統一のみをやみくもに求めることをやめ、独立した、"中華民国"として正式に独立国としての宣言を行おうという勢力が多数を占めたのだ。ただちに警告を発する中国であったが、中華民国の独立は西側世界の多くの国が承認する運びとなる。この状況に危機感を抱いた中国は、ついに実力で台湾を併合しようと行動を開始した。中国海軍の若手辣腕戦略家、孫提督のたてた作戦は極めて巧妙に台湾、そしてその後ろ楯となるアメリカを窮地に追い込むものだった。国際世論に押され、国内の反大統領派の追及も激化する中、思い切った手を打てないアメリカをよそに、中国側は次々と台湾侵略の布石を打ってくる。そしてついに一発の核爆弾が金門島の上空で炸裂した………。

 「オールド・ドッグ出撃せよ」など、超ハイテク装備でよみがえったEB-52"メガフォートレス"爆撃機と、パトリック・マクラナハンをはじめとするおなじみのメンバー総出演の"ドリームランド"ものの最新作。どうでもいいけどなぜ二見文庫?ハヤカワとは契約切れたんでしょうか?。ま、訳もいつも通り伏見威蕃さんなんでべつにどこから出てもいいんですけど、二見文庫というだけで優先度を下げる傾向のある(^^;)ワタシとしては、危うく見逃すところだったですよ。

 さて、ソ連というライバルがいなくなっちゃった昨今、世界の警察官を勝手に自任しているアメリカにとって、歯ごたえのありそうな敵ってことになるとやはり、謎に満ちた極東の大国、中国って事になるんでありましょうな。最近アメリカのハイテク軍事小説は、やたら日本の近くでハデにドンパチを繰り広げております。当然日本人も登場するわけで、これがどれもこれも「今の日本にそんなヤツぁいねーよ」といいたくなるくらい立派な人ばっかりで、ちょっと面はゆかったりするんですが、本作でも、やや憎まれ役気味ながらも、公然とアメリカにタテつく左翼系の総理が登場するんですが、これがまた実際にこんな政治家がいてくれたらなあ、って思えちゃうヒトなのがなんといったらいいのか(^^;)………。

 おなじみのシリーズで、前の作品をお読みの方なら懐かしい名前が続々出てきて楽しめますが、15年近く書き続けられてるシリーズなんで、いろいろと人間的な部分の葛藤なども描き込まれていて好感が持てます。主人公、マクラナハンにも大きな転機(シリーズのファンにはちょっと淋しいシーンもあったりするし)が訪れてますし、これで"ドリームランド"モノも終了かな、とか思ったりして(どうもまだ続きそうですが)。

 なんせあの、どう見たって"機動"、なんて言葉とは無縁に見える超重爆一機が、いくら最新の電子装備とステルス技術、新兵器の数々で武装しているとはいっても、装備的には2級とはいえとんでもない物量を誇る中国人民解放軍の戦闘機の大軍を翻弄しまくるって図式自体がすでにいいかげんなマンガみたいなモンですから、アメリカのおせっかいな勇士たちの大活躍を呆れながらも楽しめればそれでおっけー、って感じのお話。ヒマツブシにはもってこいなんですが、どうもアメリカのこの手の軍事サスペンス作家の皆さんは、一様に核兵器を使うことに微塵のためらいもないのが気になりますな。まあ日本人が過剰に反応しすぎるのかもしれないけど、このお話の中で爆発した核弾頭の数を数えてみると、おいおい、って気になっちゃうのも確かなところで(^^;)。爆発させるのはいいけど、その後が大変なの、わかってるのかなアメリカさんは(不安笑)。

00/6/29

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