フラッシュフォワード

表紙

ロバート・J・ソウヤー 著/内田昌之 訳
カバーイラスト 加藤直之
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワ文庫SF
ISBN4-15-011342-4 \840(税別)

 2009年、ヨーロッパ各国の資本と研究者を結集して作られた、ヨーロッパ素粒子研究所が誇る大型ハドロン衝突型加速器。いま、この巨大な装置で歴史的な実験が行われようとしていた。ビッグバンの10億分の1秒後のエネルギーを再現しようというのだ。そのエネルギーレベルの下でのみ再現が可能とされる理論上の粒子、ヒッグス粒子の発見がその目的。もしこの実験が成功すれば、このプロジェクトを推進してきた二人の科学者、ロイドとテオにはノーベル賞の授与すら夢ではない。関係者たちが息を呑んで見つめる中、カウントダウンの数字は減って行き、そしてそのカウントがゼロとなった瞬間………全世界の人々は約二分間、21年後の未来を垣間見ていた。

 来た来た来たぁぁぁっ(^o^)。ハードSF界屈指のホラ吹き野郎、ソウヤーが贈る大ボラハードSFミステリ味。やってくれるぜ。

 今までタイムトリップして過去や未来を垣間見た、って話はいくらもありますが、世界中の人間が、一斉に21年後の世界を見て、また現実世界に戻ってくる、というアイデアがものすごい。何がスゴいといって、世界中の人間が一斉に21年後に行ってるってことは、今このときの地球には人間が一人もいない、ってのがもうあなた。さらにさらに、21年後に生きていないものは何を見るのか、かてて加えて今見た未来のヴィジョン、決して変更できないものなのか?などなど、まあSF好きならうれしくなっちゃうネタのオンパレード。SFはこうでなくっちゃ。しかもこの強烈なアイデアが、このお話の中ではあくまでネタフリの一つでしかないってのがまた。

 本邦初訳の「ゴールデン・フリース」、最近作の「フレームシフト」と、しばしばミステリ仕立てのハードSFを読ませてくれたソウヤーさん、今回も強力なSF的なアイデアと同時に、良質の謎解き要素も同時に提供してくれるサービスぶりがうれしいっす。ただし、今回はミステリ側のアクロバットは少々おとなしめだったかも。そこだけちょっと惜しかったけど、んー、やっぱソウヤー作品は楽しいっす。

01/2/5

前の本  (Prev)   今月分のメニューへ (Back)   次の本  (Next)   どくしょ日記メニューへ (Jump)   トップに戻る (Top)