帝王ビル・ゲイツの誕生

表紙

スティーヴン・メインズ&ポール・アンドルーズ 共著/鈴木主税 訳
カバーデザイン 藤田ツトム
カバー写真 ビル・ゲイツ(©1996 Microsoft Photography:Michael R.Moore)
中公文庫
【学生企業家編】 ISBN4-12-203733-6 ¥1143(税別)
【世界制覇編】  ISBN4-12-203756-5 ¥1190(税別)

 学生時代にソフトウェア開発会社を興し、やがて"BASIC"、"MS-DOS"、そして"Windows"と、コンピュータを使ううえで切っても切り離せないソフトウェアを次々と世に送り出し、ライバルを叩きのめし、市場を独占し、自らが興した企業、マイクロソフトを世界きってのソフトウェア・メーカーにのし上げ、自らもまたアメリカン・ドリームを体現する、桁外れのヤング・リッチとなった究極のオタク少年、ウィリアム・ヘンリー・ゲイツ3世の半生を、関係者への詳細な取材でまとめ上げた大作。いやこいつはなかなか面白い。

 特にWindowsの登場以降、その強引な商法でたびたび批判された来たマイクロソフト社ですが、その横紙破りな行状のあれこれが、トップであるゲイツをはじめとした、マイクロソフトを構成する人々にとっては、ごく当たり前なポリシーから来るものでしかない、ってのがわかって面白い。そのポリシーとは、"尽きない不安"と"オタクの楽園"、そしてその"楽園"を維持するための度外れた労働環境をよしとする、ってところに尽きるような気がする。

 まるで、ちぇっ、ただ運がいいだけさ、ビル・ゲイツもただ運がいいだけの男、何もかも運のしわざだといわんばかりだ。何て運がいいんだ!でも、実際は、必死になって二交代制で働き、現材料計画を練り、ほかの誰よりも国際的な製造業を理解し、年に六五パーセントの成長をとげ、そして在庫をゼロにしている人々がいるのだ。そういうことは、一切無視されてしまう。

 圧倒的なワーカホリック、ゲイツを始めとするマイクロソフトの面々にとって、それまでのコンピュータ関連企業のありよう自体、いくらでも付け入るスキのある、ヌルイ世界でしかなかったということか。私らはほいほいと文句つければすむ話(文句の付け先のソフトがなかったらとても困るのにね)ではありますが、文句を付けられる側にもそれなりの"理"はある、てところはあるような気がする。

 単純なマイクロソフト礼賛でもなく、さりとて(往々にして感情的になりがちな)ビル・ゲイツ・バッシング本でもない、なかなかきわどいバランス感覚で作られた本。なかなか、いいです。これを読んでビル・ゲイツを好きになったりは断じてしないけどね(^^;)。

01/2/2

前の本  (Prev)   今月分のメニューへ (Back)   次の本  (Next)   どくしょ日記メニューへ (Jump)   トップに戻る (Top)