影が行く

ホラーSF傑作選

表紙

P・K・ディック、D・R・クーンツ 他/中村融 編訳
カバー・アートディレクション 吉永和哉
造形 松野光洋
撮影合成&デザイン 岩郷重力+WONDER WORKS
創元SF文庫
ISBN4-488-71501-X \920(税別)

 綺羅星の如く居並ぶ豪華メンバー、どの作家もおろそかにはできないってワケで、収録されている全作品をまずはご紹介せざるを得ますまい。

 ご存じ「物体X」の原作、「影が行く」、個人的にはあの名作「パヴァーヌ」以来久々のキース・ロバーツ、同じく久々のゼラズニイ、SFホラーとくればハズせないぞのクーンツにディック、大御所ライバー、オールディス、編者である中村融さんのチョイスがまずは秀逸。初訳、再訳に関らずすべてを新訳で揃えた、極上のアンソロジーと申せましょう。編者である中村さんの趣味か、'50年、'60年代のSFが中心に収められていて、結果、どろどろぬちょぬちょよりも心理的な恐怖が主体になったホラーが集まりました。「極上」と言いたくなるのは、このへんのセンスの良さもありそうですね。

 直接的な怖さよりも、「よく考えるととても怖い」お話が詰まった一冊。残暑払いにいかがかな。個人的に一押しはジャック・ヴァンスの「五つの月が昇る時」。美しい異星の風景をバックに孤独な燈台駐在員をじわじわと満たしていく心理的な恐怖。いいですぞ。

00/9/4

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