稲妻よ、聖なる星をめざせ!

スコーリア戦史 (2)

表紙

キャサリン・アサロ 著/中原尚哉 訳
カバーイラスト 山下しゅんや
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワSF文庫
ISBN4-15-011305-X \880(税別)

 ロスの下町。不良少年たちが勢力争いをつづけるこの街で、マヤの血を引く少女、ティナが出会った男にはどこか不思議なところが会った。自分の肩書を"宇宙軍"に所属する"ジャグ戦士二爵"であるというこの男、オルソー。1987年のアメリカに現れたこの男は、本当に自分が言うように24世紀の未来からやってきた人物なのか?しかも彼の話からすると、彼の知っている昔のアメリカはアメリカ合衆国だというのだ。ティナが暮らすこの国は"アメリカ連邦"だというのに………。

 前作「飛翔せよ、閃光の虚(そら)空へ!」に続くシルエット・デザイア・スペオペ(いま名づけた/笑)第二弾。このときの感想にもちょっと書いたんですが、太甘のラブ・ロマンスとスペースオペラに一味足した合体モノのこのシリーズ、決して出来は悪くなく、比較的大部の本ながら一気に読めるおもしろさ。スペースオペラとしての面白さはあくまで下味程度で、前面に出ているのはむしろマキャフリィ的な、出来た女と一見こわもてなんだけど女性からみると可愛い男がいかに恋を成就させていくか、てのを追いかけるストーリィといえますか。ここにユーブとスコーリアをめぐる24世紀の人類種族の起源の謎や、スコーリアによる全宇宙規模のネットワークとはなにかなどに前作よりも突っ込んだ説明もあってお買い得(笑)。人間と戦闘機がネットワークを介してリンクし、超常的な戦闘力を発揮する"ジャグ戦士"オルソーと、全くふつうの人間であるティナとのやるこたやるけど(笑)ういういしいところもある恋愛描写もなかなか。このへんは女性の作家ならではといえますか。

 そんな訳で楽しく読める一作なんですが、前にも書きましたけど、お話の主人公はやっぱりお姫様と王子様で、美しいお姫様とハンサムな王子様は苦難の末に必ず幸せに暮らしましたとさ的な結末が用意されてないといけない、って前提のもとに描かれてる物語な訳で、そこにいいトシしたオジサン読者は少々面はゆいものを感じると同時に、「庶民はほったらかしかいっ」なんて、場違いな不満も持ってしまうのも確かなところで(^^;)。

 主人公のティナにマヤ族の混血少女、という設定を持ってきたのは、著者アサロさんに何かそうしたいと思わせるモノがあったんでしょうかね。いや、カバー裏のアサロさんの写真とか見てみると、この人、アングロアメリカンって言うよりはスパニッシュ・アメリカンな印象をお持ちの方にみえたもので。ごくごく蛇足な感想なんですけどね。

00/4/4

前の本  (Prev)   今月分のメニューへ (Back)   次の本  (Next)   どくしょ日記メニューへ (Jump)   トップに戻る (Top)