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新潟市|佐藤正社会保険労務士事務所/TEL:025-277-0927

変形労働時間制Q&A

変形労働時間制Q&A


 変形労働時間制1か月単位の変形労働時間制1年単位の変形労働時間制1週間単位の非定型的変形労働時間制フレックスタイム制


 変形労働時間制

 変形労働時間制とは何か


 1か月単位の変形労働時間制

 1か月単位の変形労働時間制と導入方法

 1か月単位の変形労働時間制を導入する際の就業規則の定め方

 1か月単位の変形労働時間制における法定労働時間の総枠とは何か

 1か月単位の変形労働時間制における残業計算はどうする

 部門毎に異なる1か月単位の変形労働時間制を採用することもできる

 1年単位の変形労働時間制 

 1年単位の変形労働時間制は要件が厳しい

 1年単位の変形労働時間制における月別カレンダー方式とは何か

 1年単位の変形労働時間制における振替休日には制約がある

 1年単位の変形労働時間制における残業計算はどうする

 特定の部門のみを対象とした1年単位の変形労働時間制を採用することもできる

 1年単位の変形労働時間制における中途退職者の賃金精算例


 1週間単位の非定型的変形労働時間制

 1週間単位の非定型的変形労働時間制とは何か

 フレックスタイム制

 フレックスタイム制とは何か



 変形労働時間制とは何か

 労働基準法32条は労働時間について「1日については8時間を超えて、1週間については40時間を超えて労働させてはならない。」として、法定労働時間の原則を規定しています。また、同法35条では「毎週少なくとも1回の休日、若しくは4週間を通じ4日以上の休日を与えなければならない。」として、法定休日の原則を規定しています。
 しかし、原則とおりの法定労働時間や法定休日では業務の遂行が困難となる場合があります。そこで、一定の条件のもとに、原則以外の労働時間制を認めようというのが「変形労働時間制」です。

 現在認められている変形労働時間制は、以下の4つです。
(1) 1か月単位の変形労働時間制
(2) 1年単位の変形労働時間制
(3) 1週間単位の非定型的変形労働時間制
(4) フレックスタイム制

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 1か月単位の変形労働時間制と導入方法

 労働基準法32条では、労働時間について「使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。」とし、また「使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」として、法定労働時間の原則を規定しています。
 1か月単位の変形労働時間制は、一定の条件のもと、この原則によらずに労働させることができる制度として、広く普及しています。
(詳細)厚労省のリーフレット

□ 1か月単位の変形労働時間制を導入するには?
 就業規則に変形期間の起算日を定め、1か月以内の一定の期間を平均して1週間の労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えない範囲で、各日・各週の労働時間を具体的に定めることにより簡単に導入できます。

□ 就業規則の届出義務のない、常時10人未満の労働者を使用する事業場はどうする?
 労働者の過半数代表者と以下の事項について労使協定を結び、当該労使協定を労働基準監督署に届出ることによって導入できます。
(1) 1か月以内の一定の期間を平均して1週間の労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えない定め
(2) 変形期間
(3) 変形期間の起算日
(4) 対象労働者の範囲
(5) 変形期間の各日・各週の労働時間
(6) 協定の有効期間

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 1か月単位の変形労働時間制を導入する際の就業規則の定め方

 1か月単位の変形労働時間制を導入するには、就業規則に以下を規定する必要があります。
(1) 変形期間を1か月以内とし、変形期間の起算日を定める
(2) 変形期間における法定労働時間の総枠(次項Q&A参照)の範囲内で、各日・各週の労働時間を特定し、各日の始終業時刻を定める

□ ポイント
(1) 1か月以内の一定の期間とは?⇒1か月以内ですから、1週間でも、2週間でも、1か月でも自由です。
(2) 変形期間の起算日とは?⇒例えば、1か月単位の期間なら毎月1日などと定めます。
(3) 各日の労働時間および始業・終業の時刻は?⇒1日の上限はありませんが(1)で定めた1か月以内の一定の期間(変形期間という)を平均して1週間の労働時間が40時間を超えないことが条件です。
(4) 各日の労働時間の定め方は⇒例えば「所定労働時間は1日8時間とする」では足らず、就業規則に具体的に始業・終業の時刻を定める必要があります。ただし、シフト表により運用しているような場合は、以下の通達が参考となります。

●(参考通達)S63.3.14基発1号
 就業規則においてできる限り具体的に各日、各週の労働時間を特定すべきであるが、業務の実態から、月ごとに勤務割を作成する必要がある場合には、就業規則において各直勤務の始業・終業時刻、各直勤務の組合せの考え方、勤務割表の作成手続及びその周知方法等を定めておき、それに従って各日ごとの勤務割を変形期間の開始前までに具体的に特定することで足りる。

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 1か月単位の変形労働時間制における法定労働時間の総枠とは何か

「1か月単位の変形労働時間制」を採用することにより、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を越えて労働させることができますが、あらかじめ定めた1か月以内の一定の期間(変形期間という)を平均して1週間の労働時間が40時間を超えないことが条件となります。
 この、1か月以内の一定の期間に労働させることとができる時間の上限を「変形期間における法定労働時間の総枠」といい、計算式は「40時間×変形期間の日数÷7」となります。なお、特例措置対象事業場においても「1か月単位の変形労働時間制」を採用することができます。この場合の労働時間の総枠は「44時間×変形期間の日数÷7」で計算します。
 実務上は、上記の計算式を使って変形期間における試算表を作成し、休日を指定したり、特定日の労働時間を短縮したりして、変形期間内の40時間をクリアさせる方法を採ることが一般的です。

□ 導入例の多い毎月1日を起算日とする変形期間を1か月とした場合の法定労働時間の総枠
(1) 31日の月…177時間8分(194時間51分)
(2) 30日の月…171時間25分(同188時間34分)
(3) 29日の月…165時間42分(同182時間17分)
(4) 28日の月…160時間(同176時間)
*カッコ書きは特例措置対象事業場の場合 
 各月ごとに、この法定労働時間の総枠を越えないように1か月の所定労働時間を調整します。

(関連Q&A)週44時間労働が可能な事業場(特例措置対象事業場)がある

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 1か月単位の変形労働時間制における残業計算はどうする

「1か月単位の変形労働時間制」を採用する場合の時間外労働手当の算定方法は以下のように複雑であり、各日・各週および変形期間についての時間外労働の算定が必要となります。

1 各日について
 あらかじめ指定されたその労働日の所定労働時間を越えた時間が時間外労働となり、25%以上の割増賃金が必要です。ただし、その日の残業時間が法定労働時間の8時間を超えない時間は法内超勤となり、8時間を超えた時間から時間外労働となります。
【例】
(1) 1日の所定労働時間が10時間の日に、11時間労働した場合
 時間外労働(125%)×1時間
(2) 1日の所定労働時間が7時間の日に、11時間労働した場合
 法内超勤(100%)×1時間+時間外労働(125%)×3時間
(3) 1日の所定労働時間が7時間の日に、8時間労働した場合
 法内超勤(100%)×1時間

2 各週について
 あらかじめ指定されたその週の所定労働時間を越えた時間(各日で計算した時間外労働時間数を除く)が時間外労働となります。ただし、その週の所定労働時間が週法定労働時間の40時間を超えない時間は法内超勤となり、40時間を超えた時間から時間外労働になります。
【例】
(1) 週所定労働時間が42時間の週に45時間労働した場合
 時間外労働(125%)×3時間
(2) 週所定労働時間が38時間の週に45時間労働した場合
 法内超勤(100%)×2時間+時間外労働(125%)×5時間
(3) 週所定労働時間が38時間の週に40時間労働した場合
 法内超勤(100%)×2時間
※ 各日で計算した時間外労働時間数を控除しますので、各日における時間外労働の合計を控除した時間が、その週の時間外労働となります。

3 変形期間について
 変形期間の「法定労働時間の総枠(前項Q&A参照)」を越えた時間が時間外労働になります。
【例】一般的な各月(毎月1日から月末まで)を変形期間とした場合で、31日の月の法定労働時間の総枠は177時間8分ですが、この月の実働時間が197時間8分であったとすると「197時間8分ー177時間8分=20時間」から、各日および各週で計算した時間外労働時間数を除いた時間が、変形期間における時間外労働時間となります。

4 時間外労働時間となる時間数
 当該変形期間における時間外労働時間数は「1+2+3」となります。
 なお、法定休日に労働した場合は休日労働として別途計算しますので、時間外労働の計算には含めません。法定休日以外の休日(祝日や調整休日など)に労働した場合は時間外労働手当での支給となりますので、上記の時間外労働に含め計算します。

5 端数期間の計算
 一般的な各月(毎月1日から月末まで)を変形期間とした場合は、28日の月を除いて5週目に端数が生じます。この端数期間については「40時間×端数期間の日数÷7」が週の法定労働時間となります。

●参考通達(S63.1.1基発1号、H6.3.21基発181号)
 1箇月単位の変形労働時間制を採用した場合に時間外労働となるのは、次の時間であること。
@ 1日については、就業規則その他これに準ずるものにより8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
A 1週間については、就業規則その他これに準ずるものにより40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間(@で時間外労働となる時間を除く。)
B 変形期間については、変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(@又はAで時間外労働となる時間を除く。) 

【解説】1か月単位の変形労働時間制における時間外労働の計算は、法内超勤部分と時間外労働部分を分けて計算するために、各日で見て、各週で見て、変形期間の総枠で見るという3段階の方法を採るために複雑となっています。
(簡便な方法)法内超勤の考え方を捨てて、各日の所定労働時間を超えた時間を時間外労働として計上する方法がシンプルです。所定労働時間が法定労働時間を下回っている場合はコスト高になるものの、労働者に有利となるため法的には問題なく、事務処理上の煩雑さを解消する方法です。

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 部門毎に異なる1か月単位の変形労働時間制を採用することもできる

 就業規則等で、部門ごとに各日・各週の労働時間を具体的に定めれば可能です。職場ごと、班ごとあるいは個々の労働者ごとに異なったパターンを採ることも可能です。

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 1年単位の変形労働時間制は要件が厳しい

 1年単位の変形労働時間制とは、1年以内の一定の期間(変形期間という)を平均して、1週間の労働時間が40時間を超えないことを条件に、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を越えて労働させることができる制度です。季節により業務の繁閑があるような業種に適していますが、変形期間が長期に渡るため、1か月単位の変形労働時間制に比べ採用条件が厳しくなっています。

【解説】1年単位の変形労働時間制は、使用者が業務の都合によって任意に労働日や労働時間を変更することがないことを前提とした制度ですが、1年単位の変形労働時間制を採用している事業所で、正しい運用がなされていないケースが見受けられます。また、季節により業務の繁閑がない事業所であっても、漫然と1年単位の変形労働時間制を採用していることもあり、使い勝手の良い1か月単位の変形労働時間制に切り替えた方が良いと思われるケースもあります。
 なお、季節により業務の繁閑があるような業種であっても、敢えて1年にわたる長期の変形期間を設ける必要がない場合は、3か月や6か月など短期間での1年単位の変形労働時間制の採用も可能です。

□ 1年単位の変形労働時間制における制限
1 1日および1週間の所定労働時間の上限
 1日10時間、1週52時間まで。ただし、対象期間が3か月を超える場合には以下の要件あり。
(1) 所定労働時間が48時間を超える週が、4週連続しないこと
(2) 所定労働時間が48時間を越える週が、3か月以内に4週以上ないこと
2 労働日数の上限
 対象期間が3か月を超える場合は、1年あたりの労働日数の上限は280日(休日数は85日(うるう年86日)以上必要)
3 連続労増日の日数
(1) 原則は6日
(2) 特定期間(特に繁忙となる時期としてあらかじめ労使協定で定めた期間)については、週に1日の休日が確保できる日数(労使協定で定めれば、最大で12日の連続労働が可能となります。)

【解説】1週間に休日の指定が全くない場合は法違反となりますが、特定期間内のある週の休日を日曜日と指定し、次の週の休日を土曜日と指定すると、この2週間の連続労働日は12日となりますが、週に1日の休日が確保できているので、労使協定で特定期間を定めれば法違反となりません。

□ 特定期間とは
●(参考通達)H11.3.31基発169号
(問)1年単位の変形労働時間制の導入の際の協定事項である特定期間は、どの程度の設定期間を設けることができるか。また、特定期間の分割は認められると解して良いか。
(答)前段について、特定期間は、対象期間中の業務が繁忙な期間について設定することができるとする法の趣旨に沿った期間にすることが必要であり、対象期間中の相当部分を特定期間とすることはこの趣旨に反するものである。具体的な設定に当たっては、業務の実情に即して上記の趣旨を踏まえた上で、労使が十分に話し合って決めるべきものである。後段について、対象期間中の複数の期間を特定期間として定めることは可能である。

□ 1年単位の変形労働時間制は使い勝手が悪い
 1年単位の変形労働時間制は、使用者の一方的都合による労働時間は変更できない、休日振替にも制限がある、休日振替により時間外労働が発生するなど、使い勝手が良くありません。

●(参考通達)H6.5.31基発330号、H11.3.31基発168号
(問)休日の振替を行うことがあっても、1年単位の変形労働時間制を採用することができるか
(答)1年単位の変形労働時間制は、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更することがないことを前提とした制度であるので、通常の業務の繁閑等を理由として休日振替が通常行われる場合は、1年単位の変形労働時間制を採用できない。
 なお、1年単位の変形労働時間制を採用した場合において、労働日の特定時には予想しない事情が生じ、やむを得ず休日の振替を行わなければならなくなることも考えられるが、そのような休日の振替までも認めない趣旨ではなく、その場合の休日振替は、以下によるものであること。
@ 就業規則において休日の振替を必要とする場合に休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって休日を振り替える前にあらかじめ振り返るべき日を特定して振り替えるものであること。この場合、就業規則等において、できる限り、休日振替の具体的事由と振り替えるべき日を特定することが望ましい。
A 対象期間(特定期間を除く。)においては連続労働日数が6日以内となること。
B 特定期間においては、1週間に1日の休日が確保できる範囲内であること。また、例えば、同一週内で休日をあらかじめ8時間を超えて労働を行わせることとして特定していた日と振り替えた場合については、当初の休日は労働日として特定されていなかったものであり、労働基準法第32条の4第4項に照らし、当該日に8時間をを超える労働を行わせることとなった場合には、その超える時間については時間外労働となるものである。

□ 1年単位の変形労働時間制を導入するには?
 労働者代表と労使協定を締結のうえ、当該協定書を「1年単位の変形労働時間制に関する協定届」と共に、所轄労働基準監督署へ届出なければなりません。労使協定で定めなければならない事項は次の5項目です。
(1) 対象労働者の範囲
(2) 対象期間(1か月を超え、1年以内の期間に限る)とその起算日
(3) 特定期間を定めるときは、その期間
(4) 対象期間中の労働日および各労働日ごとの労働時間
(5) 労使協定の有効期間
 また、就業規則の作成義務のある事業場では、就業規則に1年単位の変形労働時間制を採用する旨を定め、所轄労働基準監督署へ届出ることも必要となります。

(参考)厚生労働省のリーフレット

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 1年単位の変形労働時間制における月別カレンダー方式とは何か

 1年単位の変形労働時間制を採用する場合は「対象期間中の労働日および各労働日ごとの労働時間」を労使協定で定め、所轄労基署へ届け出なければなりません。この場合、年間カレンダー方式を採用するのが一般的ですが、1年分のカレンダーを作成せずに、月別など1か月以上の期間ごとに区分して作成することも認められています。

□ シフト表は30日前に作成しなければならない
 各月のカレンダー(シフト表)を30日前に作成しなければならないというハードルがあります。例えば、2月のシフト表の作成は1月1日が作成期限ですが、3月のシフト表の作成は1月29日が作成期限となります。
 したがって、30日前までに「労働日と労働日ごとの労働時間」を特定できないような事業場では、1か月単位の変形労働時間制など他の労働時間制を検討することになります。
(参考)東京労働局のHP (3 労働日と労働時間の特定の項参照)

□ 導入手順
(1) 例えば、4月から翌年3月までの「1年単位の変形労働時間制」を採用し、月別に区分するとした場合、まず労使協定に、4月分のカレンダー(シフト表)に「労働日と労働日ごとの労働時間」を定めます。
(2) 次に、5月以降について各月ごとに、労働日と労働日ごとの労働時間は定めず労働日数と総労働時間のみを労使協定に定めます。
(3) 当該労使協定と届書に4月分のカレンダーのみを添付して、所轄労基署に届出ます。
(4) 5月分以降のカレンダー(シフト表)については、各月の30日前までに具体的に明示します。この場合、各月ごとに労基署へ届書を提出する必要はありません。

●(参考通達)H11.1.29基発45号−抜粋
 法第89条は、就業規則で始業及び終業の時刻並びに休日を定めることと規定しているので、1年単位の変形労働時間制を採用する場合にも、就業規則において、対象期間における各日の始業及び終業の時刻並びに休日を定める必要があること。ただし、1箇月以上の期間ごとに区分を設けて労働日及び労働日ごとの労働時間を特定することとしている場合においては、勤務の種類ごとの始業・終業時刻及び休日並びに当該勤務の組合せについての考え方、勤務割表の作成手続及びその周知方法等を定め、これにしたがって、各日ごとの勤務割は、最初の期間におけるものは当該期間の開始前までに、最初の期間以外の各期間におけるものは当該各期間の初日の30日前までに、それぞれ具体的に定めることで足りるものであること。

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 1年単位の変形労働時間制における振替休日には制約がある

□ 注意点
1 原則
 休日を振替えた結果、連続して労働させる日数が6日を超えることはできない。
2 例外
「特定期間」を設けた場合は、連続して労働させる日数は最大で12日まで可能だが、休日が1日もない週が生じることはできない。
【例】
(1) 特定期間における第1週の日曜日と第2週の土曜日を休日とすれば、その間の労働日は12日となりますが、いずれの週にも休日があってクリアできます。
(2) 第1週の土曜日と第2週の土曜日が休日のケースで、第2週の土曜日の休日を第3週の金曜日に振替えた場合、その間の労働日は12日となるが、第2週に休日が1日もないため法違反となります。

【解説】1年単位の変形労働時間制は、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更することがないことを前提とした制度であり、休日振替の頻度の高い職場では導入が困難です。
 比較的運用が容易な1か月単位の変形労働時間制に変更するか、一定の時期に繁忙期が集中する職場においては、1年の長期にわたる1年単位の変形労働時間制でなく、短期間(3か月や6か月など)での1年単位の変形労働時間制の導入を検討することも必要と思われます。

●(参考通達)H6.5.31基発330号、H9.3.28基発210号、H10.3.31基発168号
問 休日の振替を行うことがあっても1年単位の変形労働時間制を採用することができるか。
答 1年単位の変形労働時間制は、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更することがないことを前提とした制度であるので、通常の業務の繁閑等を理由として休日の振替が通常行われるような場合は、1年単位の変形労働時間制を採用できない。
 なお、1年単位の変形労働時間制を採用した場合において、労働日の特定時には予期しない事情が生じ、やむを得ず休日の振替を行わなければならなくなることも考えられるが、そのような休日の振替までも認めない趣旨ではなく、その場合の休日の振替は以下によるものであること。
(1) 就業規則において休日の振替を必要とする場合に休日を振り替えることができる旨の規定を設け、これによって休日を振り替える前にあらかじめ振り替えるべき日を特定して振り替えるものであること。この場合、就業規則等において、できる限り、休日振替の具体的事由と振り替えるべき日を特定することが望ましいこと。
(2) 対象期間(特定期間を除く。)おいては連続労働日が6日以内になること。
(3) 特定期間においては1週間に1日の休日が確保できる範囲内であること。
 なお、例えば、同一週内で休日をあらかじめ8時間を超えて労働を行わせることとして特定していた日と振り替えた場合については、当初の休日は労働日として特定されていなかったものであり、労働基準法第32条の4第1項に照らし、当該日に8時間を超える労働を行わせることとなった場合には、その超える時間については時間外労働となるものである。

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 1年単位の変形労働時間制における残業計算はどうする

 割増賃金の計算方法は、1か月単位の変形労働時間制とほぼ同じですが、以下の通達Bの変形期間の部分が異なります。解説は「Q&A1か月単位の変形労働時間制の割増賃金計算はどうする」をご参照ください。

●参考通達(H6.1.4基発1号、H9.3.25基発195号)
 1年月単位の変形労働時間制を採用した場合に時間外労働となるのは、次の時間であること。
@ 1日については、就業規則その他これに準ずるものにより8時間を超える時間を定めた日はその時間、それ以外の日は8時間を超えて労働した時間
A 1週間については、就業規則その他これに準ずるものにより40時間を超える時間を定めた週はその時間、それ以外の週は40時間を超えて労働した時間(@で時間外労働となる時間を除く。)
B 変形期間の全期間については、変形期間における法定労働時間の総枠を超えて労働した時間(@又はAで時間外労働となる時間を除く。)

【解説】通達の@とAの各日・各週に発生した割増賃金は、毎月の賃金支払日に支払うことが必要となりますが、Bの変形期間全体を通して発生した割増賃金については、その対象期間の経過後の直近の賃金支払日に支払うことで足りるとされます。
 この場合、 1か月単位の変形労働時間制の残業計算における変形期間の総枠は1か月以内ですが、1年単位の変形労働時間制における変形期間の総枠は最長で1年となり、1年単位の変形労働時間制では、変形期間が終了しないと最終的なトリプルチェックができないという煩わしさがあります。
 1年間の法定労働時間は2085時間45分ですが、通常はこの上限時間目一杯で協定する例が多いと思われます。であれば、最終的には通達Bに引っ掛かりますので、厄介な3段階のトリプルチェックで時間外労働計算を経ずに、最初から各日の所定労働時間を超えた超えた時間を一律時間外労働として処理する方が簡単です。

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 特定の部門のみを対象とした1年単位の変形労働時間制を採用することもできる

 特定の部門や職場のみを対象とした「1年単位の変形労働時間制を」採用することもできます。
 また、複数の部門や職場ごとに異なる「1年単位の変形労働時間制」を採ることもできます。その場合は、各々に労使協定を作成し、所轄労働基準監督署に届出ます。

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 1年単位の変形労働時間制における中途退職者の賃金精算例

 労働基準法で、1年単位の変形労働時間制の途中において退職した場合は、賃金の精算をしなければならない旨が定められています

●(参考法令)労働基準法第32条の4の2
 使用者が、対象期間中の前条の規定により労働させた期間が当該対象期間より短い労働者について、当該労働させた期間を平均し1週間当たり40時間を超えて労働させた場合においては、その超えた時間(第33条又は第36条第1項の規定により延長し、又は休日に労働させた時間を除く。)の労働については、第37条の規定の例により割増賃金を支払わなければならない。

□ 具体例
【例】1年単位の変形労働時間制(4月1日から3月31日)において 6月30日に退職した場合
 *各月の時間外労働手当および休日労働手当は清算済みとします。
【計算方法】
(1) まず、働いた期間(4月から6月)の法定労働時間の総枠を算出します。
 40時間×((30日+31日+30日)÷7)=520時間(A)
(2) 次に、働いた期間(4月から6月)の所定労働時間を算出します。
 4月は200時間、5月は180時間、6月は180時間が所定労働時間であったとすると、合計は560時間(B)
(3) 所定労働時間(B)−法定労働時間(A)=40時間となり、40時間分の割増賃金の精算が必要となります。

【解説】(参考文献)日本法令/労働時間管理完全ハンドブックから
(1) 働き不足があったとしても返金を求めることはできない
 1年単位の変形労働時間制において、各月の労働時間が異なる場合であっても、賃金は必ずしも実労働時間に比して支払う必要はないので、働きすぎの月も働き不足の月も同一額の賃金を支払うとする契約であれば、このような契約に基づき清算が終わっている以上、後から返金を求めることは不可能としています。
(2) 割増賃金率はどうなる
 上記と同様の理由により、賃金精算は各月において既に終わっているとしますので、賃金精算後に発生した別途支払うべき割増賃金の精算は、125%でなく25%でよいとしています。

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 1週間単位の非定型的変形労働時間制とは何か

 一定の期間にあらかじめ業務の繁閑がはっきりしている事業は、1か月単位や1年単位の変形労働時間制を採用することも可能です。しかし、あらかじめ業務の繁閑が予測できないような事業では、これらの変形労働時間制を採用することは困難です。
 そこで、1週間単位で忙しい日には長く労働する変わりに、暇な日には労働時間を短くしたり休日にしたりすることにより、全体の労働時間を調整しようとする制度があります。これを「1週間単位の非定型的変形労働時間制」をいい、小規模事業場に導入が認められてる制度です。ただし、特例措置対象事業が「1週間単位の非定型的変形労働時間制」を採用する場合は、週44時間の特例は認めらず、週40時間制が厳格に適用されます。

□ 1週間単位の非定型的変形労働時間制の要件
(1) 小売業、旅館、料理店、飲食店で、常時使用する労働者が30人未満であること
(2) 1週間の所定労働時間は40時間以内、1日の労働時間の上限は10時間とすること
(3) 1週間の各日の労働時間を、前週末までに書面で労働者に通知すること
(4) 労使協定を締結し、所轄労働基準監督署に届出ること

□ 1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入するには?
 1週間単位の非定型的変形労働時間制を導入するためには、あらかじめ労働者代表と労使協定を締結し、これを所轄の労働基準監督署に届出る必要があります。併せて、就業規則の届出義務のある事業場では、就業規則を変更し労働基準監督署に届けなければなりません。
【規定例】第○条 従業員代表と1週間単位の非定型的労働時間制に関する協定をした場合は、始業及び就業の時刻は、第○条にかかわらず、当該協定に基づいて、各従業員に書面で通知するところによるものとする。

□ 実務ポイント
(1) 従業員には、1週間分の各日の労働時間及び休日を書面(一般的には、勤務表やシフト表など)により、少なくても前日までに通知します。
(2) 期間途中の変更は原則としてできません。ただし、台風の接近・豪雨等の天候の急変等客観的事実により、当初想定した業務の繁閑に大幅な変更が生じるような、緊急止むを得ない事由がある場合は、変更しようとする前日までに、予め通知した労働時間を書面により変更することは可能とされます。
(3) 各日の労働時間については、10時間を超えることはできません。
(4) 休日は、週1回は必ず設けなければなりません。
(5) あらかじめ定められた所定労働時間を越える場合または休日に労働させた場合は、時間外労働手当または休日労働手当の支払いが必要です。

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 フレックスタイム制とは何か

 フレックスタイム制については、厚労省が公開している「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」が分かりやすいので、この手引きを参考に簡単に解説してみます。

□ フレックスタイム制とは
 フレックスタイム制とは、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、 日々の始業・終業時刻、労働時間を労働者が自ら決定できる制度です。働く時間の総量(総労働時間)を決めた上で、日々の出退勤時刻や働く長さを労働者が自由に決定することができます。

□ フレックスタイム制を導入するには
(1) まず、フレックスタイム制を導入する旨を就業規則に規定します(規定例は、手引きP4参照)
(2) 労働者代表と労使協定を締結します(協定内容および労使協定例は、手引きP9〜11参照)
(3) 精算期間(フレックスタイム制において労働者が労働すべき時間を定める期間)が1か月を超える場合は、労働基準監督署へ(2)の労使協定を添付し、労使協定届(様式3号の3)を届出ます(届書の記載例は、手引きP12参照)。なお、精算期間が1か月以内の場合は、労働基準監督署への労使協定届は不要です。
【注】従来、精算期間の上限は1か月でしたが、平成31年4月から上限が3か月に延長されました。
(4) 併せて、時間外労働を行う場合は36協定を締結し、労働基準監督署へ届出る必要があります(36協定届の記載例は、手引きP19.20参照)

□ フレックスタイム制における時間外労働(手引きP13〜16参照)
 フレックスタイム制における時間外労働は、精算期間を単位として時間外労働を判断しますので、精算期間を通じて法定労働時間の総枠(手引きP10参照)を超えて労働した時間が時間外労働となります。したがって、36協定は1日について協定する必要はなく、1か月および1年の延長時間について協定します。
(1) 精算期間が1か月以内の場合の時間外労働
 精算期間の法定労働時間の総枠を超えて労働した時間が時間外労働となります。
(2) 精算期間が1か月を超える場合の時間外労働
 以下の、@+A(@でカウントした時間を除く)が時間外労働となります。
@ 1か月ごとに週平均50時間を超えて労働した時間
A 精算期間を通じて法定労働時間の総枠を超えて労働した時間

□ その他のポイント
(1) 時間外労働の上限規制は、フレックスタイム制においても適用されます(手引きP17〜18参照)
(2) 特例措置対象事業場では週の法定労働時間が44時間となるため、1か月の法定労働時間の総枠を44時間として計算します。ただし、特例措置対象事業場であっても精算期間が1か月を超える場合において、週平均40時間を超えて労働させる場合には、36協定の締結・届出と割増賃金の支払が必要となります(手引きP5、P7参照)
(3) コアタイム(1日のうちで必ず働かなければならない時間帯)およびフレキシブルタイム(労働者が自らの選択によって労働時間を決定することのできる時間)を設けるか否かは自由であり、また設ける場合でもその時間帯の開始・終了時刻を労使協定で任意に定めることができます(手引きP10参照)
(4) その他、手引きのQ&Aもご覧ください(手引きP21〜22参照)

【解説】フレックスタイム制は、一定の期間についてあらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、労働者が?々の始業・終業時刻、労働時間を?ら決めることのできる制度です。2019年4月の労働基準法の改正により、フレックスタイム制の清算期間の上限が3か月に延長され、使いやすくなりました。
 個々の労働者が自分の判断で時差出勤できるため、通勤緩和や共働き夫婦の子育て支援などにメリットがあります。コアタイム・フレキシブルタイムの設定も任意ですので、在宅勤務との併用も可能です。また、部門や一定の従業員にのみ導入するなどの汎用性もあります