Simple Soul
(アルバム, '01)
ユニバーサル, UICE-1007(日本盤)
Rough Trade, RTRADECD011(英盤)
Compass, 7 4302 2(米盤)


曲目Cover of Simple Soul
1. Wolves
2. The Wanting Kind
3. Lucky Penny
4. Simple Soul
5. Adam
6. Footsteps Fall
7. Blues Run the Game
8. I Felt A Soul Move Through Me
9. Prodigal Daughter
10. Eden
11. The Girl Who Fell in Love with the Moon
12. The Curragh of Kildare
13. Good Girl

*12, 13 は日本盤のみのボーナストラック

ここで試聴が出来ます。

クレジット
(ソングライティング)
 1. Boo Hewerdine/Eddi Reader/Teddy Borowiecki
 2〜4, 9. Boo Hewerdine and Eddi Reader
 5. Roy Dodds/Adam Kirk/Boo Hewerdine/Eddi Reader
 6. Boo Hewerdine/Annette Bjergfeldt
 7. Jackson C. Frank
 8. Graham Henderson/Boo Hewerdine/Eddi Reader
 10, 13. Eddi Reader
 11. Boo Hewerdine/Eriksen
 12. Traditional arranged by Eddi Reader
(プロデュース)
 Eddi Reader, Boo Hewerdine and Roy Dodds

解説
前作Angels & Electricityから約2年半振りにリリースされた第5作。Blanco Y NegroからRough Tradeに移籍しての第一弾となる。これに伴い日本では今までのワーナーでなくユニバーサル・インターナショナルからの発売となっているが、アメリカでは前作同様Compass Recordsからの発売となっている。今回は今までと違ってアメリカで最も早くリリースされ、逆にイギリスは日米英の中で最も遅い発売となった。日本盤には2曲のボーナストラックが入っているが、いずれも(’01の4月頃にリリースされると当時言われていた)Driftwoodに収録されている。

今作も今まで同様ほとんどの曲がBoo Hewerdineによるものか、一緒に作った曲がほとんどを占めているが、カバーが1曲収録されている。 バックを固めるメンバーは馴染みの顔やイギリスでのライブでは一緒にやっている人達がほとんどだが、そんななかで元Fairground AttractionのSimon Edwardsが8にギタロンで参加している(Eddiのソロでは初めて)のが嬉しい。Eddi自身も4曲でギターを弾いている。 Roy Doddsの”秘密の部屋”(通称"Driftwood")で録音され、”手造り”の雰囲気を大切にして作られたらしい。

全体的にスロー〜ミディアムのナンバーで構成されており、曲調も牧歌的というか穏やかなものが多い。Eddiはもともとむやみにシャウトしたりしないシンガーだが本作ではこれまでよりも抑えた表現をしており、そのために落ち着き過ぎたと感じる向きもあるだろうが、二度、三度と聞くうちにそれだけではないことが分かってくる。Eddi自身の言葉によると今作はデモから発展していったらしいが、Eddiの声もバックの演奏も生演奏を聞いているかのように柔らかく暖かく響き、先の言葉も頷ける雰囲気を持っている。リラックスしたEddiの歌声からは余分な力が抜け、いままでのアルバムよりもライブに近い感触がある。 国内盤ライナーによると、「とても穏やかに、とても静かに、とてもゆったりと」歌ってみるよう心掛けたそうで、それがよく実感できる表現をEddiはしている。

1曲目のWolvesは演奏、Eddiの歌ともにさりげなく進んでいってこれまでのアルバムと雰囲気がちょっと違っていることを感じさせてくれる。ギターなどに混じって聞こえる鉄琴の音が優しく、A Smile in A Whisperを思い起こさせてくれる。アルバム中で唯一アップテンポといえる2曲目のThe Wanting Kindは前作のPrayer Wheelをもっとポップ寄りにした感じで、セカンドのThe Exception(のライブ・バージョン)にも似た好ナンバー。Booのギター、コーラス、時折入るハンドクラップも効果的で、聞いていて気持ちがいい。いままでEddiが関わった曲の中でもこの曲はかなり上にくる出来だと思える。春〜初夏に向けてシングルカットすべきだろう。 続くLucky Penny、Simple Soulはともに今作でのEddiの歌を象徴するナンバーと言える。いずれもシンプルなアレンジのフォーク的な曲に力の抜けたEddiの歌が乗っかる。Lucky PennyでのEddi自身による2種類の全く異なるコーラスと淡々としたメインの歌声との対比が面白い。アルバムタイトル曲のSimple Soulでは途中何回か入るBooのキーボードが曲に和やかなタッチを与えている。ところどころ音が揺れているように聞こえるが、これは録音のせいだろうか。

ベースやドラムが芳醇な雰囲気を醸し出すAdamやSimon Edwardsのギタロンになんとも言えない味わいがあるI Felt A Soul Move Through Meといったところは地味だが、いずれもライブで映える歌だろう。I Felt〜ではEddi自身によるコーラスがうまく使われており、ゆったりしたEddiの歌い方はPay No Mindを思わせMirmamaの曲と言われても信じてしまいそうだが、当時の曲よりも歌に込めた感情は深い。この曲にはFairground Attraction時代にツアーを一緒に回っていたGraham Hendersonが関わっている。 Boo HewerdineのソロアルバムThanksgivingに収められていたFootsteps Fallはイギリスでのライブではお馴染みの歌(Transatlantic Sessions 2 Volume Twoにライブバージョンが収録)。Booの優しいギターの音に乗って歌うここでのEddiの歌声はまさに鳥がさえずるかのように響く。BooとEddi自身とによるコーラスも曲に繊細さを与えるのに寄与している。

今作で唯一のカバー、Blues Run the GameはオリジナルはJackson C. Frankで、Bert JanschやSimon & Garfunkelもカバーした曲らしい。Teddy Borowieckiが弾くオルガンがケルティックな風味を与えており、コーラスのあとのエコー的な処理も印象的。続くEdenはCandyflossによく似た曲調だが、わずかにタイミングをずらしたコーラスが不思議な効果を生んでおり、Twin Peaks的な?ちょっとねじれた世界を作っている。 (日本盤以外で)最後を飾るThe Girl Who Fell in Love with the Moonは第一弾シングルとしてカットされた歌だが、それにふさわしい出来。アルバム中でも一際柔らかなEddiの歌はロマンチックな歌詞にマッチしている。”ズン・チャッ・チャッ”というワルツ風のリズムは曲を親しみやすくしており、これにオルガンやキーボードが重なることでドリーミーな雰囲気が演出されている。

日本盤ボーナストラックの2曲のうち、The Curragh of KildareはトラディショナルをEddiがアレンジした曲で、クレジットを見るとBooと二人だけで演奏しているようだが途中アコーディオンも加わっているように聞こえる。(特に前半で)Booが演奏するハープのようなギターの音が耳に残る。この曲もBert Janschが歌っていたらしく、Eddiはずっと歌いたいと思っていた曲らしい。ここでのEddiの歌はEddiらしさがよく感じられるもので、バックがシンプルになるほど歌の魅力が前面に出てくることを実感させられる。Good GirlはBBCのテレビ番組のテーマ曲に使われた曲らしい。リズミカルなギターを基調にハモンド、ベース、パーカッションが加わりミディアムテンポで進んでいく。

国内盤ライナーには伊藤なつみ氏によるインタビューと、Eddi自身による各曲解説(なぜかGood Girlに関してだけはない)がついており、Eddiが曲作りの時に考えたこと等を語っている。またボーナストラック2曲の歌詞もちゃんと載っており(和訳はやはりGood Girlだけない)、クレジットもちゃんと書き足されている。

前作でのBarcelona WindowやCandyfloss & MedicineでのTown Without Pityのような実験的な曲はなく、曲調がバラエティに富んでいるとは言えないが、その代わりアルバムとして一貫した雰囲気を持っていると言え、聴いていて和やかな優しい気分にさせてくれるアルバムだと思う。もはや歌い損じ等想像できない、また一段と進化したEddiがここにはいる。

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