◆ 事 故 続 編 ◆

1. 洗車 2. 夜のドライブ 3. 保土ヶ谷バイパス 4. 3:30 5. とりあえずのその後
6. 自宅にて 7. ディーラーにて 8. 帰り道にて 9. 落ち



現実と小説に相違があるとすれば、 現実は終わらない、 という点だろう。

6. 自宅にて


丸太んぼうのように眠りたいのに、 神経が昂ぶって眠れない。

目を閉じると、 あの光景がリプレイされる。

バックミラーに大きく映るヘッドライト。
車線変更し、
左に並び、
大きく蛇行し、
ロードスターにぶつかり、
遠ざかり、
壁に乗り上げて、
花火のように弾けて、
クルマでないモノに変わる。

今のうちに書いとかなきゃ。 と思い、 一気に事故編を書き上げる。
時計を見るとお昼近く。

ディーラーに行かなきゃ。



7. ディーラーにて

営業のY川さんは、 不思議な人である。
駐車場を探してくれたり、 電話をかけてくれたりする(しかも私の出ない時に)のだが、 何故か頼りなさげなのである。 頼りなさげなのに、 会うと安心できるのもさらに不思議なところである。

事故の状況などを話す。 修理の件について聞く。 事故の相手の役員さんに連絡をとる。 保険のこととかを相談する。

  1. 相手の保険会社から電話がかかってくるはずであること
  2. その際には、 クルマは工場に出したから金額等に関してはディーラー側と相談するよう伝えること
などを教わる。

ちゃんと調べないと分からないが、 20万円くらいかかるのでは、 という話である。
板金加工の技術も進歩しており、 ほぼ見分けはつかなくなるとのことだが、 ロードスター(しかもNB)の複雑な曲面が蘇るのだろうか。
ぶつけられた箇所はボディの一部なので、 交換というわけにはいかず、 板金以外だと切った貼ったの作業になるとのこと。
はぁ。

見積もり等をしてくださる、 サービスのT田チーフにも挨拶。 初回点検の際に点検内容等の説明を受けたことがある。 この人も安心できる人である。 しかも頼り甲斐がある(と思える)。

ということで、 リンゴスターは入院。 1週間はかかる、 とのことである。

この際だし、 ということで、 ペダルセット(アルミ)を注文する。
ご褒美ってわけでもないが、 身を呈して私を守ってくれたからね。


ディーラーを後にする際、 Y川さんの言葉にはっとする。

“人生、 いろいろありますよ。”

まったくそのとおりである。 そして、

いろいろあれよかし、

と思って買ったクルマである。
いろいろあっていいのである。 ←よかねーよ



8. 帰り道にて

たとえば、 新品のロードスターを持って来るまでごね続ける、 ということは可能だろうか。
可能だろう。
でも、 それでどうなるだろう。 持って来られたクルマはロードスターかもしれない。 ロードスターだろう。 でも、 それは決してリンゴスターではない。

リンゴスターも、 ロードスターだった。 納車の日、 4月にしては温かい土曜日、 厚紙の“フロアカーペット”で私を迎えたそのクルマは、 まだロードスターだった。 オーナーの誇りを一気にくじくチープなキーを受け取り、 オープンにして、 エンジンをかけ、 まろやかな午後の日差しを受けてディーラーを後にしたその時から、 そのクルマはただのロードスターではなくなっていった。


聞くところによると、 10周年記念特別限定車は日本で500台だそうである。
そのプロトタイプ車(軽井沢で署名したやつ)は、 それこそ世界に一台である。

じゃあ、 リンゴスターは?

笑い飛ばされるかもしれないが、 リンゴスターも世界で一台のクルマである。
私の30歳の誕生日に納車されたり、
土砂降りの夜中に沼津に連れてってくれたり、
リンゴスターって間抜けな名前を付けられたり、
どっぴーかんの軽井沢で私にいじくりまわされたり、
それよりなにより、 素敵な人々に会わせてくれたり、
そして、 保土ヶ谷バイパスでセフィーロワゴンのヒップアタックを食らったりしたロードスターは他にはないからである。

たとえ元どおりには戻らなくても、 リンゴスターはリンゴスターである。

私は、 リンゴスターと走っていきたい。




ので、 きれーに直して下さいね。>マツダの方々



9. 落ち

てゆーか、 私だって壊れながら今日に至ってるわけだし。

いいコンビになれるんじゃない。





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