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コラム16~20

【No.016】 2003/7/8 交通安全への高校生の思い

今春、岩見沢市の岩見沢東高校の交通安全教室に招かれ「命とクルマ、残された親からのメッセージ」を伝えた。後日送られてきた感想文の内容は素晴らしいものだった。感謝を込めて一部を紹介させていただく。

「以前は『悲劇の物語』程度にしか受け止めていなかった自分が恥ずかしい」
「『交通事故死も殺人被害』と考えたことはなく、事故だからしょうがないと思っていました」
「泥棒より交通事故の罪が軽いことを初めて知った。人の命が軽視されすぎ」
「運転の技術だけではなく、人格的に優れている人だけが免許をとるべきだ」
「免許取得はプロになること。ひと月で取れるのはハードルが低すぎる」
「ハンドルを握ったら、よそ見や電話をした時点でもう立派な罪。危険とわかってする行為だから、決して『事故』とは言えない」
「自分が死んだ時悲しんでくれる人がいるように、運転中すれ違う人すべてにそう思ってくれる人がいると考えれば、絶対に軽い気持ちで運転できないはず」
「被害者にならない努力は難しいので、加害者にならない努力をする。加害がなければ被害もない」
「『命を大切に』とよく言われます。これから私たちの世代がそのことをしっかりと受け止め、歩行者が安心して歩ける社会をつくっていきます」
「『頑張ってください』ではなく『一緒に頑張りましょう』と言いたいです」

(前田敏章=札幌・北海道交通事故被害者の会代表)
(「北海道新聞」2003年7月8日夕刊のコラム「プラネタリウム」に掲載)

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【No.017】 2004/8/11  運転中の携帯使用は危険行為

◆前号(会報14号)で報告した改正道交法は6月3日に成立しました。現在施行令の改正試案が出されており、年内にも施行されるとのことです。

◆中型免許新設と大型免許の受験資格年齢の引き上げ、飲酒運転の呼気検査拒否に対する罰則引き上げなど、一定の評価できる内容も含まれていますが、極めて不十分な改正と言わなくてはなりません。

◆その中でも、携帯使用の問題について憤りを感じます。実効のある罰則規定をとの期待は全く裏切られました。

◆改正道交法では、車中の携帯電話や画像表示装置を「手で保持して」通話のために使用したり、画像を注視した者が罰則の対象というのです。

◆運転中に携帯電話を使っても、両手を自由にできるイヤホンマイクを装置して「手に持たなければ」取り締まりの対象にもならないのです。

◆まさに骨抜きです。これを機にイヤホンマイクの売り込みに意気込む業者もあるそうです。

◆新聞やTVが、「『集中力そぐ』なお指摘も」(「道新」6/4)、「脳にも影響、『ながら運転』の危険」(「HBC」7/3放映)などと特集し、安全について警鐘を鳴らしたのは当然です。

◆その中で、専門家も次のように指摘します。「マイクを使ったとしても通話によって集中力がそがれる問題に変わりはなく、取り締まりの対象にしてもらいたい」(道自動車短大、茄子川教授「道新」6/4)

◆「ながら運転はヒトの脳の『注意の配分』を混乱させ、目は開いているが見ていない状態になる」(北海道大学医学部、澤口教授「HBC」7/3放映)

◆6年前、携帯電話使用で前方不注視となった運転者にご主人を奪われた副代表の内山孝子さんは、テレビ局の取材に「(携帯を使っている運転者に)『何をしているの』とどなってやりたい気持」と答えていました。

◆最近特に、携帯を「手で保持して」クルマを走らせる運転者が目に付きます。真剣に「被害ゼロ」への対策をとろうとしない社会は一体何なのでしょう。

◆考えてもみて下さい。自動式回転扉がいくら便利でも、死傷事故が1件でも起きれば社会的問題となり、その使用が見直されるのです。

◆携帯電話使用で年間2500件もの死傷事故が発生(うち死亡事故は昨年の場合34件)していると言われます。加害者は隠しますから、実際にはもっと多いでしょう。

◆命や人権を犠牲にしても、あくまで便利さのみを追求する倒錯した「クルマ優先社会」。これが真に見直される日はいつになるのでしょうか。(前)

(「北海道交通事故被害者の会」会報15号より)

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【No.018】 2005/1/10 運転席の「装飾版」が全面禁止に

◆クルマ使用の社会的規制が一つ進みました。視界が遮られて危険が指摘されていたトラックなどのフロントガラスの「装飾板」が、この1月から全面禁止となったのです。

◆国土交通省が道路運送車両法の「保安基準」を改正(12月2日官報公布、施行日2005年1月1日)したのです。

◆被けん引自動車以外の全ての自動車について、前面ガラス及び側面ガラスに装飾板等を装着した状態は、基準不適合とする(可視光線透過率が70%以上となるものは除く)というもので、違反した場合、ユーザーは50万円以下の罰金、取り付けた業者は6か月以下の懲役または罰金30万円が科せられます。

◆これまで、スモークフィルムについては違反でしたが、アルミ及びアクリル板をフロントに取り付けた装飾板は違反対象に出来ませんでした。今回はその様な行為も禁止をし、罰則対象にしたものです。

◆きっかけになったのは、2003年11月に川崎市で装飾板を着けたトラックが横断中の母子をひき、ベビーカーの幼児が死亡し母親が重傷となる事件ですが、同様の被害にあった遺族の皆さんが国土交通省に何度も要望書を出すなどの働きかけをして実現しました。

◆極めて当然のことであり、いまさらという感がしないでもありませんが、こうした措置の積み重ねが、命や安全よりクルマ通行を優先する倒錯した社会を変えていく力になると思います。

◆私も意を強くしましたが、被害者の会の会員では、筒井さん(世話人・札幌市)の妹さんが、装飾板を装着したトラックの犠牲になっており、当時の新聞(H10.12.5「道新」)も原因の一つと指摘していました。

◆その筒井さんは、妹さんの無念を噛みしめながら「今回の改正を聞き、ようやく一安心できたなと思います。しかし、まだまだ世の中には改正してほしいこと、矛盾…様々な問題が残っています。装飾板の禁止はその中の一つでしかありません。今後も、微力ですが頑張っていきたいと思います」とその心境を語ってくれました。

◆同じく、平成14年に装飾板を着けたトラックによって奥様を亡くした札幌市北区の四戸岸さん(会員)も「何より大切なのは安全確認。そのための規制はより強化すべきです」と述べています。

◆今後も「犠牲を繰り返すな」という当事者の痛切な声を、具体的に上げていく必要があると思います。(前)

(「北海道交通事故被害者の会」会報16号より)

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【No.019】 2005/4/3  一筋の光、「犯罪被害者等基本法」施行とドクターヘリ本格運用

◆年度始めの4月1日、新聞記事の見出しのいくつかに目が行きました。

◆一つは、「犯罪被害者基本法きょう施行」という読売新聞記事です。犯罪被害者の権利を保障した「犯罪被害者等基本法」が6か月間の周知・準備期間を経て施行日を迎えたのです。今後、内閣府の犯罪被害者等施策推進会議が12月の閣議決定をめどに、基本計画作成の検討に入ります。

◆希望の光を感じます。欧米諸国に比べ数十年の遅れがあるとされた犯罪被害者の権利の問題がようやく本格検討されるのです。

◆読売新聞記事の後段には施策推進準備室が実施した被害者関係団体ヒアリングの概要も紹介されており、「交通事件の遺族からは、捜査情報の早期開示」が要望されたと報じられています。

◆この被害者関係団体17には、当会はじめ交通事件被害の6団体が含まれ、捜査情報開示など交通犯罪に特有な課題も注目されたことに、変化の胎動を感じます。基本法の中身を作るために、当事者としてさらに課題を訴えなければと思います。

◆二つは、「救急医療の切り札 さっそうと」という見出しで、ドクターヘリの本格運用が道央圏で始まるという、4月1日朝日新聞道内版の記事です。

◆「ドクターヘリ」とは、医師や看護師がヘリコプターで駆けつけて、患者を治療しながら救命救急センターに運ぶものですが、3年前から民間の研究機関が試験運用しており、ようやく道と国の補助事業として新年度予算に盛り込まれました。

◆ドクターヘリについては、私たち被害者の会でも、3年前から要望事項の一つにあげ、道知事に強く要請していました。

◆要望項目に入れる提案をしたのは世話人の水野さんです。水野さんは娘さんを交通事故で失いましたが、市街地から遠く離れた当時の現場にドクターヘリが飛んでくれていれば、助かっていたのではという思いを、今も消すことができないと言います。

◆「犠牲を繰り返して欲しくない」という当事者の痛切な願いが一つでも前進したことを喜びたいと思います。同時に、ドクターヘリが道央圏だけでなく、全道をカバーしての本格実施となること、要望事項の実現項目がさらに増えて被害ゼロの社会が一日も早く来ることを願います。(前)

                            

(「北海道交通事故被害者の会」会報17号より)

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【No.020】 2006/1/10 犯罪被害者等基本計画」と「交通死ワースト返上」に思う

◆昨年末の12月27日、犯罪被害者等基本計画が閣議決定されました。2004年12月成立の基本法に基づく施策が具体的な形となって現れた70ページ、258項目に、ある種の感慨を覚えます。

◆8月の骨子案は225項目でした。9月の意見募集会に当会も11項目の要望意見を提出しましたが、被害者の要望も聞いて、さらに33項目の追加があったと聞きます。

◆私たちが、これを不問にしては施策全体への信頼が揺らぐと強調した、知る権利と捜査の公正さの保障については、刑事手続への関与拡充(法18条関係)の「現状認識」の項に、「犯罪被害者等からは、現状について、犯罪被害者等は証拠として扱われているに過ぎず『事件の当事者』にふさわしい扱いを受けていないという批判があり、刑事に関する手続及び少年保護事件の手続に関し、一層の情報提供と参加する権利を認めるよう要望する声が多い」と「権利」を含めた表現に書き改められました。(p40)

◆調書開示など、未だ具体化にはほど遠いのですが、一歩前進とは言えます。重点課題の説明の中にも「刑事司法は、社会の秩序の維持を図るという目的に加え、それが『事件の当事者』である生身の犯罪被害者等の権利利益の回復に重要な意義を有することも認識された上で、その手続を進めるべきである」(p10)と明記されました。

◆基本法が被害者の権利という点で画期を成したことは確実です。しかし、計画期間は2010年までの5年です。今後に委ねられた項目も多いこと、さらに、推進体制の項で、「犯罪被害者等の要望を踏まえ」「犯罪被害者等の意見に随時耳を傾けつつ」(p13)、施策の有効性の検証を行いながら点検、監視のフォローアップを実施する(p15)などとしていることからすれば、やはり今後の私たち「被害者等」の役割は大きいと言えます。

◆国民の理解増進のための「犯罪被害者週間(11月25日~12月1日)」も明確に位置づけられました。厳しい中ですが、互いに励まし合い、これからも当事者の「声」をあげなくてはなりません。

■もう一つ。年初の「道内交通死ワースト返上」の報に、忘れて欲しくない事をいくつか。

■事故件数はそれほど減ってはおらず、負傷者数は188人増の35388人に上ります。重篤の後遺障害の方も増えています。そして死者302人のうち、歩行中に車にひかれた事件が86人にもおよぶことを考えると、悲惨な現実に変わりはありません。

■昨年本州の小学生が凶悪犯の犠牲になる事件が相次ぎ、通学路の安全確保が話題になっていますが、児童生徒の安全を日常的に脅かしているのは「危険な車」です。 厚生労働省によると、子どもの死因のトップは交通事故。道内でもここ数年、歩行・自転車の児童生徒が、2月に1人の割合で命を奪われ、毎日5人もの生徒が負傷しているのです。「年明け5人死亡」という3日の記事に胸が痛みます。被害ゼロを切に願います。(前)

(「北海道交通事故被害者の会」会報19号より)

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