泌尿器科医・木村明の日記


ためしてガッテン 尿もれ



土曜日の講演会の講師は、2008年03月05日放送のためしてガッテン「大誤解!尿もれの真実」に出演されて、

グラグラ尿道という例えで、腹圧性尿失禁の機序を解説されたそうです。

尿漏れにはおもに2タイプある

グラグラ尿道:正式には「腹圧性尿失禁」。

膀胱が暴走:正式には「過活動膀胱=切迫性尿失禁」。

この例え話、今日の診療から使わせてもらおう、と思います。

尿道がグラグラしているから、まず、骨盤底筋体操で筋肉をきたえる、

だめなら、尿道の下を手術で補強する。

膀胱が暴走しているから、膀胱にブレーキをかける薬を飲む。

女性なら、思いっきりブレーキを踏んでもよいが、

前立腺肥大症の男性が膀胱にブレーキをかけると尿閉になる危険があります。

野際陽子さんのCMのおかげか、「過活動膀胱」という病名の認知度が上がり、

「過活動膀胱」と自己診断し、ネットで検索して、当院を見つけて来院される方が増えてきました。

女性なら説明は簡単。検尿と残尿測定で、ベシケアを処方すればOK。

男性は前立腺肥大症でないかの検査から始めます。

その結果、まずはハルナールやフリバスからスタート。

この処方箋を院外薬局に持っていくと、尿の通りを良くする薬と説明書には書いてあります。

患者さんは尿もれで困っているんです。「過活動膀胱」と自己診断されているので、過活動膀胱治療薬という名前でないと飲んでもらえないかもしれません。

「トイレに間に合わないのは、膀胱が暴走しているから。

「でもいきなり、ブレーキを踏んだら、今度は出したいときに出せなくなるでしょう。

「まずは尿の通り道が前立腺肥大症で細くなっているので、そっちを解決し、

「次回診察日に、デトルシトールも併用するか、決めましょう。」

次回には過活動膀胱治療薬のデトルシトールを処方しますよ、と言っておかないと、

前立腺肥大症治療薬の説明を薬剤師さんから聞かされて混乱されるかもしれませんから。

薬局メディクスでは、フリバスのことを夜間頻尿に効く薬と説明してもらっています。

私は2007年の学会で何度も、ハルナールとデトルシトールの併用療法のエビデンス(TIMES試験)を聞かされたので、

男性にはデトルシトールから処方し始めるのです。

TIMES試験は各群200人の4群比較試験。私はエビデンスに弱いのかも。

私の印象では、暴走を止めるブレーキ性能は、

デトルシトール < ウリトス・ステーブラ < ベシケア

でしょうか。

昨日のブログに続き、アステラス製薬さんに提案。アメリカでのベシケア大使にはメリル・ストリープなんかどうでしょう。
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