泌尿器科医・木村明の日記


立ち去りは止められない


娘は卒業する前から、泌尿器科・皮膚科に入局する事は絶対ないと言っていました。

前期研修2年目のプログラムでは5か月間希望の科を選ぶことができますが、娘のカリキュラムに泌尿器科・皮膚科は入っていません。

まあ、予想していた事ですからなんとも思いません。

でも、泌尿器科を希望していた同級生が外科を選ぶ事にしたと娘から聞いた時は、泌尿器科の魅力はないの?、って思いました。

胃がん、診断するのは内科医、手術するのは外科医、取りきれなくて最後を看取るのは内科医。

大腸ポリープを取る名人の消化器内科医も穿孔してしまったら外科医に後始末をお願いしないといけません。

前立腺がん・膀胱がんは最初から最後まで泌尿器科医。

泌尿器疾患に関しては、診断も内視鏡手術も開腹手術もすべて泌尿器科がやる、というのが泌尿器科医の優れたところです。

でも、泌尿器科医の手術が華麗か、と言われれば、消化器外科より雑です。使う糸は、外科より泌尿器科の方が1サイズ太いです(婦人科はもっと太いですが)。

消化器内科の先生達がやる胃がんの内視鏡手術(EMRやESD)に比べ、前立腺切除術(TUR-P)は原始的に見えるでしょう。

EMRやESDが軟性鏡を使っているのに対し、TUR-Pは硬性鏡を使います。

軟性鏡の手術の方が華麗に見えると思います(EMRやESDとTUR-Pの相違については続編を用意します。マニアックな内容になります)。

専門を決める前に、その科をローテートできるようになった研修医制度。

内科・外科・内視鏡科・放射線科・腫瘍内科(抗癌剤のカクテルの専門家)がカンファレンスを開きながら、アカデミックな雰囲気の中で治療が選択されるメジャーな癌に比べ、

診断も内視鏡手術も開腹手術もすべて泌尿器科医がやる泌尿器がんの治療は、泌尿器科医が誰にも相談せず決めるので、EBMを好む研修医にはアピールしないのかもしれません。

泌尿器科入局希望者が現れない状況が続けば、兵隊がいなくなるわけですから、総合病院の泌尿器科部長達も仕事ができなくなります。

定年を全うせず、開業する泌尿器科医はまだ増えそうです。

私が開業する時お世話になったコンサルタントさんは、

税理士さんの団体TKC

薬の卸のスズケン

調剤薬局をチェーン展開する日本メディカルシステムです。

電話すれば、すぐ資料を送ってくれると思います。

でも、こういうニュースがあることもお忘れなく。

立ち去り型サボタージュを防ぐには、開業しても生活できない状態を作り出すのが1番ですから。

コンサルタントさんたちが持っている昔の統計資料(受療率は平成17年のもの)が今後に通用するとは言えません。

タイタニック号から海に飛びこむときは自己責任で。

タイタニック号にそのまましがみついていろと、アドバイスできないところが辛いところですが。

今日はこのブログの続編でした。
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