壁新聞 かべしんぶん KABE-Shimbun (Shinbun)
0007 2010年1月13日 Hidden Clues.
Composed by 空閑洋始<kuga@tokyo.email.ne.jp>
机を整理していたら、引き出しの奥から、2枚のA4サイズの、透明な薄い下敷きのような、ぺろんぺろんしたやつらが出てきた。「級数表」と「歯送り表」である。大学を出て最初に入った会社の月刊誌編集部で使っていたものだ。いずれも、透明なプラスチック板の上に、定規の目盛りみたいに、線やら数字やらがいっぱい並んでいる。これは、雑誌や本を作る時に、使用する文字の大きさや並び方などを調べたり印刷会社に指示するために必要だったものだ。
ちょっと復習してみよう。印刷物の文章は、以下のような要素でその体裁が決まってくる。文字のデザイン(明朝体とかゴシック体など基本的な種類と、平体・長体・斜体など変形具合)、文字の大きさ、文字同士の間隔、1行の文字数、行同士の間隔、1段の行数、段の間隔、1ページの段数、天地左右の余白。まあ、そんなところである(縦書きか、横書きか、というのも最初にあるが)。
そして「級数表」は主に文字の大きさを知るもの。「歯送り表」は主に文字間隔や行間隔を知るものである。級数表の単位は「級(きゅう)」。これはアルファベットで「Q」とも書く。歯送り表の単位は「歯(は)」。こちらはアルファベットで「H」とも書く。
1級=1Q=0.25mm。例えば「10級の文字」は、縦横2.5mmのマスにぴったりの大きさ。
1歯=1H=0.25mm。実は級と同じである。例えば「文字を10歯(H)送りにする」というのは、文字同士の間隔(文字の中心同士の間隔)が2.5mmであるということ。なかなかイメージするのは難しいが、10級の大きさの文字を10歯送りで並べると、まあ、なんというか、「普通な」文字の並びになる。個人的には、1歯少なくする、つまり10級の文字ならば9歯送りにして、少々文字間隔を詰め気味にするのが好きだったりする。この「歯」は、行同士の間隔を表すのにも使い、例えば「20歯での行送り」というのは行間隔(行の中心線同士の間隔)が5mmということ。
入社し最初にこうしたことを教えられ、どんな印刷物だって、たいていこの2枚の「級数表」「歯送り表」で、文字や行がどのように構成されているかが分かるということに興奮を覚えたものだ。
さてそんな2枚のプラスチック板もめっきり出番が減った。存在を知らない編集者も多いかもしれない。「ただの昔話」かもしれない話は、次号「パソコン登場編」に続く。
右の動画。一応、次のようなことをやっているつもり。
4枚のA(エース)がある。これを1枚ずつ、トランプの中の別々の場所にバラバラに入れていく。そして1回カット(上下を入れ替える)すると、一番上から4枚のAがそろって出てくる。という感じなのだが、そう見えるだろうか。実はこれ、得意技にしているつもりだったのだが、ここにアップするために動画に撮ってみると、何かヘンなことをしているのがバレバレ。つまり、右の動画は例によって、何回も撮り直してできるだけ秘密の動作が分からないようなものを選びました、というもの。もっと練習せねば、実際には使えん。
ともあれ、こうした複数のカードを別の場所にこっそり動かしたりするのを「マルチプルシフト」と呼ぶ。上の動画はカードを手持ちのままでやるスタイルだが、テーブル上でやるものもあり、こちらはいかにもギャンブラーというかいかさま師風でかっこいい。でも会社の宴会など飲み屋の席ではテーブルが必要なものはやりにくい。披露の機会が少なく場所も限られるアマチュアにとっては、大きな問題である。
とっても身近な、つまりは知っておいた方がいい単語なのに、全然意味が分からないということがある。まあ、学校で習ったのに忘れているだけかもしれない。飛行機のトイレのドアのサインに「vacant」と出てれば「あき」である。米テレビドラマではその日空き部屋のあるモーテルの看板にも出る。トイレが「使用中」は「occupied」。ついでにいうと窓側席は「window」だが、通路側は「aisle」で、これはいまだに読み方が分からん。
大学受験、国語では「200字作文」が必ず出題されることになっていた。私は、使い方に少々自信がなかったが、その響きのかっこよさから、どんな出題でも最後の結論は「○○に戦慄を覚えた」にしようと決めていた。そうした。思い出し、今、戦慄。