アメリカ版TENNIS
1998年2月号
状況に応じてバックハンドを打ち分けよう
文:Pete Sampras、プレイング・エディター
  Alexander McNab


ラリー、パス、アプローチのためのバックハンドの打ち分け方


僕がバックハンドを片手打ちに変え、プロになったばかりの頃は、かつての両手打ちバックよりも弱かった(アメリカ版TENNIS 95年8月号)。いまは堅実なものになった。

リターンもうまく打てるし、コートのどこからでも、必要に応じてどんなショットでも打てる。この記事ではラリー・バックハンド、パッシングショット、アプローチショットの3タイプについて解説しよう。

片手で打つようになってからは、いつもトップスピンをかけるようにしてきた。トップスピンをかけると、ネットのかなり上方を越えるので、安全性が増す。攻撃的で威力もつく。またトップスピンのバックは、バウンド後に高く弾むので、相手は返球しにくくなる。

特にペースを変えたい時やチップ&チャージを除くと、苦しい立場でコートに戻らなければならない時にしかスライスは打たない。チップ・リターンを打つ時もあるが、たいていはトップスピンを打ち、より攻撃的であるようにしている。20〜30年前にはスライスは一般的だったが、今日では失われつつあるショットと言える。マーク・ウッドフォードはとても良いスライスを打つ。僕のはまあまあといったところだ。

現代のテニスはとてもパワフルなので、かなり良いスライスを打たないと、相手はコートのどこからでもウィナーを打つ事ができる。史上最高のスライスを持っていたケン・ローズウォールのように打てなければ、スライスだけで切り抜ける事はできない。

最も難しいのは、高く弾むボールをバックで打つ事だ。僕は時々それで苦労する―――特に高くキックするサービスの時に。それらの球を打つには何年も練習し、かなりの力強さを要する。ボリス・ベッカーは、高いバックに誰よりも上手く対処していると思う。彼はとても力強いからだ。

良いバックハンドを打つための3つのカギ

1)握り
スライス以外は、僕はバックを打つ時、フォアからグリップを握り変える。バックのインパクト時の握りを、クローズアップの写真で示そう。
フルバックハンドの握りだと、安定した強いショットが打てる。

2)肩
どんなバックを打つ時も、
ただちに肩をネットに対して横にターンし、その体勢を打つ間も保たなければならない。僕がいいリターンを打つ時は、すぐに肩をターンさせている。

3)フォロースルー
良いバックハンドは完全なフォロースルーで終わり、それは攻撃的で流れるようなスイングをした事を示している。
フォロースルーをより振り上げると、よりスピンがかかる。

ベッカーやステファン・エドバーグはフラット気味のトップスピンを打つので、彼らのフォロースルーはまっすぐで、肩の高さ辺りで終わる。僕はよりヘビーなスピンをかけるので、フォロースルーはもっと高く、イワン・レンドルのような感じだ。

ラリー・バックハンドは深さを保とう

ラリーにおけるバックハンドの第1の目標は、短い返球が来るまで深いクロスのバックを打って(右利きの相手に対して)、安全にプレイする事だ。

僕のクロスのショットは充分なトップスピンがかかるので、安全にネットの高い所を越え、コートの深い所へ収める事ができる。僕が望むのは短い返球を得て、フォアで打つか、スライスをかけるかバックを打って、ネットに詰める事だ。

トップであり続けるためには、自分のゲームに新しい要素を加える必要があり、このところよく使うようになったのが、バックのストレートだ。たとえばアンドレ・アガシ、マイケル・チャン、ジム・クーリエのように、ベースラインのバックサイドに位置して、強いフォアハンドを打つのが好きなプレーヤーに対しては、1カ所にボールを打ち続ける事はできない。コート全体を使う必要がある。

バックをストレートに打つ事でオープンスペースを生み出し、何か他の事ができる。次のショットでは、フォアハンドが打てるかも知れない。あるいは、次のショットでネットに詰められるかも知れない。
バックのストレートは、クロスのラリー・バックハンドより少しフラット気味に打つべきである。打つ時に前へ踏み込み、フォロースルーはあまり高くせず、まっすぐに振り抜く必要がある。

アプローチショットをライン沿いに打とう

バックへの相手の返球が短い時は、それを生かしてアプローチショットを打ち、ネットに出るべきである。オプションとしては、伝統的なスライスのアプローチショット、およびより威力のあるフラットかトップスピンのショットがある。どのショットを打つかは、その時々によるだろう。

たとえば、もし相手がとても素速かったら、ライン沿いにフラットを打ちたい。より攻撃的だし、相手がボールに追いつく時間を短くできるからだ。もし相手が―――たとえばマルク・ロセのような背の高い男で―――低いボールが好きでなかったら、僕は彼のバックに低いクロスのスライスを打つだろう。

時にはクロスのスライスを打つかも知れないが、良いアプローチショットはダウン・ザ・ラインであるべきだと、いつも感じている。
クロスへのスライスのアプローチショットは、ネットの低い所を通すので、打つのはより簡単だが、ボレーのポジションとしては良くない。相手のパスに対して、より広い範囲をカバーしなくてはならないからだ。ダウン・ザ・ラインなら、より良い位置取りができる。

僕はほんの少し―――しかしラリー・バックハンドよりはずっと少ない―――トップスピンをかけて、強いバックのアプローチショットをライン沿いに打つ。実際には、このショットはアプローチショットになるだけでなく、ウィナーになる可能性もある。
態勢に入ってバランスをとり、ボールに鋭い一撃を加えるためには、動きを止めておかなければならない。適切なフットワークなら少し前に出ながら打てるスライス・アプローチと違い、強いアプローチショットは、走りながら打つ事はできない。

スライス・アプローチ(上の写真)はボールを低く保ち、動きながら打つ事ができる。一方、より攻撃的なフラットかトップスピンのアプローチショット(下の写真)を打つ時は、止まってバランスをとる必要がある。

パッシングショットを打つ時は、低い姿勢を保とう

クロスのラリー・バックハンドの時には、深く打つ事を心がける。クロスのバックハンド・パッシングショットの時には、ボールを低くワイドに打つ事を心がける。そして基本的にすべてのパスは、よりライン際を狙っていこう。

パッシングショットを打つ時は、低い姿勢を保つ事が、きわめて重要である。低い姿勢でラケットをボールの下の方に構える(右の写真)。それから
ラケットを鋭く振り上げ、スピンをかけて低いボールをすくい上げる。ラケットは身体より上方へ振り上げる(下の写真)。そして高いフォロースルーで終わる(右下の写真)。上方へ鋭く振り上げるほど、スピンがかかり、良いショットになる。

パッシングショットをクロスに打つか、ダウン・ザ・ラインに打つかは、その日どちらのショットをより上手く打っているかという自分の感触による。クロスのショットは、ネットが少し低いので打ちやすい。ダウン・ザ・ラインは、よりフラット気味に打つべきである。僕は時々型にはまって、クロスにばかり打ってしまう事がある。
パッシングショットのカギは、いろいろ取り混ぜる事である。

パッシングショットの時には、低く構え(左の写真)、その姿勢を保つ(中央の写真)。しかし最後はラケットを高く振り上げる(上の写真)。


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