♪あんだんて♪レポート

京都LD親の会たんぽぽ勉強会
「発達検査、知能検査をめぐって」
講師:精神科医 門 真一郎先生
9月25日(月)
京都児童福祉センター 
京都市発達障害支援センター
  
 発達障害には、・知的障害 ・広汎性発達障害(自閉症スペクトラム)
 ・学習障害LD ・注意欠陥/多動性障害AD/HD ・その他がある。

 「知的障害」は行政用語であり、医学用語では「精神遅滞」という。
「知的障害」の定義は、わが国では存在しない。「知的障害」とは、児童相談所、知的障害者更生相談所が知能検査や発達検査の結果によって、「知的障害」と認めたものである。IQ(知能指数)を軽度、中度、重度、最重度に分け、その分類によって療育手帳を発行する。

支援の程度の定義と例
(1) 一時的な支援・・・例)失業や危機的な急性身体疾患のときなど
(2) 限定的支援・・・例)一定期間の就労訓練や学生生徒から社会人への移行期に提供される移行期支援など
(3) 長期的支援・・・例)少なくともある種の環境(家庭や職場)で長期的に定期的に行うタイプの支援
(4) 全面的支援・・・いろいろな環境で常時、強力に提供する支援であり、生涯つづく可能性がある。

☆検査数値ではなく、個人のニーズに合わせた支援を。
 1992年のアメリカ精神遅滞学会(AAMR)の定義第9版から、知的障害の考え方は大きく変わった。つまり、「知能検査のIQ値によって障害のレベルを分類すること」をやめて、「個人の支援のニーズを適切な支援のレベルに結び付ける」ということになった。

 002年度のAAMRの定義第10版では、「使用した具体的なアセスメント道具の長所と限界を考慮に入れる」ことが加えられた。それは、「知能検査の測定誤差の可能性を考慮しないと、知能検査を主に信頼して知的機能をアセスメントすることは、誤用の可能性をはらむ」ということである。
 すべての測定、特に心理学的測定は、ある程度誤りの可能性をはらむものであり、得られたスコアは実際には数ポイント上下する範囲に当たる。
今の制度では、IQ70以下で療育手帳が交付されるというふうに数値だけでサービスが決まる弊害がある。実際には±3〜4を考慮に入れなければいけない。
知能検査について・・・知能検査がつくられるとき、IQ100を頂点とする左右対称な釣鐘型になるような分布を基にして、問題がつくられる。逆に言えば、理論上人口の3〜5%は、必ずIQ70以下の人がでるような知能検査がつくられている。科学的に標準測定誤差(SEM)はあるものとみなされ、IQ70の正確な理解は、少なくとも1SEM(すなわち約66〜74のスコア;確率66%)あるいは2SEM(すなわち約62〜78のスコア;確率95%)という信頼区間で考える。これは、精神遅滞にかかわるあらゆる判定に含めなければならない。
知能検査は、検査そのものが相対的な評価であり、検査時の体調やコンディションも影響する。また、自閉症など発達障害のひとを考慮に入れていないので、その場合正確に測定できているかどうか疑わしい。5歳~15,6歳対象のWISC−V(ウェクスラー・インテリジェンス・スケール・チルドレン)では、IQ60以上の人しか測定できない。

 「知能」とはなにか?という問題もある。AAMR(2002)によると、「知能」は総合的な精神能力である。そこには、推理、計画、問題解決、抽象思考、複雑な考えの理解、迅速な学習、経験からの学習などが含まれる。としている。

 以上の観点から、検査結果の数値だけで能力を判断しないで、その人が必要としているサービスを受けられるように、「その人に不足した能力を何で補完するか」、「どんなサポートがあるか」考えることが大切である。

 学習障害(LD)に関しては、日本にはまだLDの検査が普及していないので、学校の担任にどの教科が何年生のレベルまで達しているか、個別に聞いてみるといい。発達検査は、指導法を引き出すためのものではないので、普段の関わりの中で、どれができてどれができないかを把握し、「ここを伸ばしたら・・・」「ここを補えば・・・」というふうに関わっていく。
書字能力が低い例では、学校に行っている間は、教師の無理解やクラスメートのいじめなど大変だったが、大学はマークシートの試験で合格し、社会に出るとPCを使って補完できている。早期に診断してもらったほうが、周囲の理解も得やすく、本人も自分自身の特性がわかり、すごしやすい。(フェルマータ)


リストに戻る
♪あんだんて♪日記に戻る