♪あんだんて♪レポート

京都市教育委員会取材
9月6日(水)
  
 京都市教育委員会の不登校支援の取り組みについて、京都市教育委員会のOさんにお話を聞いた。京都市教育委員会が取り組んでいる支援は以下の通り。

○不登校集中研修
市教委が全国で初めて実施した、全教員(講師や養護教諭も含む7000人)を対象とした研修。講師には京都大学の河合隼雄さんを初め、市内の教育学および心理学部門を有する大学で、不登校などの相談を担当されている先生方。私たちも名前をよく知る専門家の方々だ。
 全11回が行われ、教職員は最低1回この研修を受けることになっている。受講した教職員の評判はよかったようで、この研修をきっかけとして、夏休み以降の取り組みに生かし、その報告を12月に提出することになっているそうだ。
 これは市教委が今年度特に力を入れている取り組みのようだが、大きな会場で講義形式で行われ、講師陣は大学の先生ばかりで、日常的に現場でみられる親や子どもの生の声が届いていないのではないかという懸念がある。また、報告提出が12月という時間的な制約のなかで、せっかくの研修が生かされていくのだろうかという心配もある。とはいうものの、全教職員に向けた研修が実施されたことは、大きな第1歩だと思う。今後よりよい研修が開催され、学校に行けない子どもたちや親が、先生の無理解のために傷つくことのないよう、また自分にあった居場所で成長できるよう支援をしてほしいと思う。

○各学校での支援
(1)スクールカウンセラー、子どもと親の相談員配置
現在京都市では全ての中学80校と全日制・定時制高校12校、及び小学校の約2割に当たる22校にスクールカウンセラーが配置されている。またスクールカウンセラーが配置されていない小学校には臨床心理士や退職教員の「子どもと親の相談員」が配置されている。スクールカウンセラーは現在、国の補助を受けて配置しているが、将来的には縮小の可能性があるので、先生にカウンセリングマインドを持った相談ができる力をつけてもらうためにも、コンサルテーション(指導・助言)を主体とした活動をしてもらっている。また、スクールカウンセラーが活動しやすいように、養護教諭や教育相談、生徒指導の教諭をコーディネーターとし、行政区ごとの交流など研修も行っている。

(2)別室登校のこどものための「学びのパートナー」派遣
教室に入れない子どものために別室を用意し、学校からの希望があれば心理系や教育系の学生、大学院生の「学びのパートナー」が派遣される。学びのパートナーは年5回研修を受け派遣されるが、派遣の時間帯は学校と学生の間で調整し、相性が悪い場合は変更することも可能だ。学生と一緒なら体育や音楽の授業に出られたり、給食が食べられる子もいる。また学生の来る日は登校できる、という子もいるようだ。

○学校に来られない子どもへの支援
(1)ITを活用した学習支援(18年度より)
インターネットを活用して学習ソフトを配信する。学校も子どもの様子がわかるように、主に担任がメールのやりとりをする。

(2)フリースクールとの連携(いずれも有料だが、市から補助がでる)
 NPOスタッフの家庭訪問(ほっとハウス)・・・・週に1回1時間から1時間半
 わく星学校の「プラネットクラブ」に参加・・・・子どもを中心にして活動を決めていく

(3)ふれあいの森(適応指導教室)
 子どもたちが集団に適応できるよう支援し、学校へと繋ぐ。現在はパトナ内と伏見学習室がある。伏見学習室はしんどいけれど学習したい子どもたちのために個別ブースを作り、多様なニーズに対応しようとしている。今後は全市に作りたいということ。受付は随時だが、複数の学校の先生の意見を聴き、在籍を決める。

(4)洛風中学校
現在41名が在籍。行政特区であるために学校独自で教科を再編している。7割くらいの出席率で、中にはまったく来られない子どももいる。
(具体的な内容については「プロン・トン・トン2号」をご覧ください)

 以上のように、京都市教育委員会は、NPOも含めたあらゆる教育資源を活用しながら、不登校支援を進めている。しかし、各学校、教職員によってその支援をどれだけ知っているかということには大きなばらつきがあるようだ。上に紹介した支援は原則として学校を通じて申し込むことになっており、どれだけ先生が周知しているのかが大切でないかと質問した。それに対し、次のような返答があった。
 親ごさんの中には、自分の子どもが不登校だと認めたくない気持ちがある。それを思うあまりに、先生側がふれあい教室や洛風中学校のことを勧めづらく、スクールカウンセラーにちょっと相談してみることなどは勧めやすいということもあるようだ。この事が「先生は知らない」という誤解につながっている場合もある。不登校になると、学校と親は危うい関係になり、誤解も生まれやすい。それだけに日頃の信頼関係をいかに作っておくかが大切だ。
 また先生は評価や会議、教材研究などで忙しく、目の前にいない不登校の子どもへの対応がおろそかになりがちだ。目の前にいない子どもをどう意識化するか、そのためにはひとりの先生だけでなく、学校全体で来ていない子どもの事を意識して、組織的な対応をしていくことが必要だという。

 確かにその通りだと思うが、果たしてどれだけの学校でその組織作りが進んでいるのだろうか。中には管理職の無理解から、教職員が子どもや親との板挟みになって、苦しむケースもあると聞く。学校現場で人的資源が不足しているのは明らかなことだ。必要な人員を確保した上で、組織的な支援体制を充実してほしいと思う。

 また「不登校『0』をめざすことは当然のこと」とOさんは言う。「不登校問題の第1義的究極目標は、休んでいる子どもへの取り組みだけでなく、子どもが楽しく来られるための学校づくりだと」。確かに理想はそうであろう。しかし現実に今の学校を見ると、何人かの不登校の子どもがいることがむしろ自然なのではないかと思える。今の学校には合わない子ども、しんどくなる子どもを無理に学校に戻し数値上の「不登校0」をめざすのではなく、その子が自分にあった環境で、自分にあったペースで成長し、学んでいくことが保障される必要もあるのではないだろうか。そのための支援と考えると、まだまだ不十分なところが多いと思う。

 最後に発達障害について聞いてみた。発達障害の子どもさんが、周囲の理解を得られずに不登校になるケースも多いからだ。それに対し、「カウンセリングセンター」の相談の中でも発達障害の相談が増えている。ここでは「親が自分の子どもの発達障害をどう受け止めていくか」ということに重点を置いて支援している。そのため、必要ならば児童神経科の医師が診察し、カウンセラーが自信を持って親に対応できるよう支えているようだ。そしてその上で、「総合育成支援課」とともに、その子に必要な支援を一緒に考え、見極めるという。(さくら)


リストに戻る
♪あんだんて♪日記に戻る