♪あんだんて♪レポート


「のうす」第3回講演会 

子どもの力を発揮させる出会い−つなぎ手として省みて−
有井小児科医院 有井悦子
6月24日(土)
のうす主催
ひとまち交流館にて
  
 長年、しんどい思いをしている子どもたちに、親身になって関わり続けてこられた有井先生。♪あんだんて♪の活動の源となった講座以来、6年ぶりにお話を伺う。先生自身も不登校に的を絞って話をするのは、その講座以来だということで、時間をオーバーしての思いのこもったお話となった。
「不登校はチャンス」とおっしゃる有井先生、不登校は「心の力がつく時期」だと捉えられている。そして長年支援されてきた中で、「子どもの権利条約」と「心理学教室」と出会ったことで、今までのご自分の支援のあり方を反省し、見直されたという。

 子どもの権利条約と出会うまでは結果を急ぎ、性急に再登校を進めることもあったが、権利条約に謳われている「ひとりのひととして尊重」すること、「意見を聴くこと」、「考え、おもいを尊重」すること、「プライバシーの保護」、「ゆっくり過ごし、遊び、文化・芸術を楽しむ」ことなどをふまえた支援をされるようになったということだ。そして子どもたちには、ゆっくりすることの大切さや前向きでなくても、あちこち向きながら進むこと、やろうと思ったり、好きなことと出会うと力が出るということも教えられたと話された。「子どもたちに任せて大丈夫、不登校の子どもは不登校をする力を持っていて、それで自分を守っているのですよ」という先生の言葉に、ホッと安心される親ごさんも多いのではないだろうか。

 また以前は、子どもの味方をするあまりに、親を批判することもあったという先生。大学の「心理学教室」と出会ってからは、大人の生い立ちや今置かれている環境の難しさに目を向けられるようになったという。子どもがしんどい時は親の手助けが必要だが、親に余裕がないと上手くいかないことも多い。親のしんどさを和らげるために、親と子の並行面接や、親の面接が有効だということだ。親が楽になると、子どもが楽になる、そして親が我慢しすぎたり、無理をしないで欲しい、そういう時には子どもが親に気を遣ってしまうのですよと先生は言う。子どもに言いたいことがあったら言ってみて、反発があれば考え、フォローする、そんなことの積み重ねが基本的信頼を育てていく。そんな日々の生活を大切にしていくことが大切なことなのだ。

 また軽度発達障害のことにも触れられた。不登校になった時、その子どもの状態を見極め、見通しを立てるためにも、できれば診断を受けてほしいと話された。但し、急いで無理やり連れて行くと、かえって状態を悪くすることが多いので、本人が治療の意志を持つまでは親だけでもつながって子どもの気持ちが向いた時に連れてきて欲しいということだ。また少しずつ変化が出てきていれば家で様子を見ていてもよいが、変化がない場合は医療に繋ぐことも考えて欲しいと話された。的確な診断を受けることで、二次障害を防ぎ、集団生活に入りやすくなることもあるからだ。

 有井先生は「親の思い」と「子の思い」のつなぎ手として、また心理療法や精神科、あるいは学校などとの環境の調整役、コーディネーターとして、これからも不登校の子どもや親と関わっていきたいと話された。専門家の中には自分の考えや思いを過信して、すがる思いで相談に行った親や子どもが、かえってしんどい思いをすることもよくある。でも、有井先生のように子どもたちから、そして親から学び寄り添うというお気持ちを持っていらっしゃると、安心して相談することができる。お話を聞き、あらためて有井先生の暖かいお気持ちを感じることができた。こういう理解ある医師がもっと増えることで、親も子どもも暮らしやすくなると思う。(さくら)


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