♪あんだんて♪レポート


つながりを求める子どもたち−思春期の発達と教育・子育て 
立命館大学文学部教授 春日井敏之さん
2月4日(土)
「宇城久子どもと育つ父母の会」
第511回例会
  
 お話の中で特に興味深かったのは、「少し長い目で青年期の試行錯誤を」という10代・20代の過ごし方だった。
「好きなことを仕事にできるとは限らないが、好きなことにこだわって、人や社会とつながることはできる」という言葉に非常に共感した。学校に行けなくて、家で過ごすようになった子どもは、やがて気持ちが落ちつくとともに、自分の興味のあることをやり始める。それは落書きであったり、ゲームであったり、マンガを読むことであったり、いろいろだが、親の目から見て「評価」できるものでないことが多い。
 親としては絵を描くことや、音楽、料理、スポーツなど、何となく将来の仕事につながることをやってほしくて、そんなつまらないことをやっても仕方ないと思ってしまう。でも、実際にはマンガ好きの子がマンガの本を買いに行くようになった、ネットゲームを通じて出会った友達に会いに行くようになったというように、好きなことのために、動き出す子どもはたくさんいるのだ。買い物に行けば店員さんとのやりとりがあり、そのことで社会とつながる。そういうことの積み重ねが、自信につながっていくのではないか。

 そしてその先には「自立」していくという「出口」があるのだが、「第一希望がすべてかなう人は少ない。人は生きるために働いているのも事実。やりたいことと仕事は別でも、やりたいことにこだわり続ければいい」という先生の言葉もストンと気持ちの中に落ちた。「好きなこと」があるとたとえ自分の思い通りにいかなくて挫折しても、「自分自身を全否定された」と思わずにいられるのではないか。
 前にも書いたように、子どもが何か好きなことを始めたとき、それを大人の価値観で判断してしまうことが多い。その判断の基準は、それが社会的に評価されるものかどうか、あるいは学校復帰に結びつくかどうか、そしてそれが将来の経済的な意味も含めて自立につながるかというような何か打算的なものが多い。でも、どんなことであれ「やりたいことにこだわる」というのは、一つの生きる力ではないのだろうか。学校という場を離れた子どもたちの多くが、自分のやりたいことにこだわって、自分なりの道を歩き始める。時間はかかるかもしれないけれど、不登校の子どもは立派に生きる力をつけているのではないかと思い、なんだかうれしくなった。

 最後にまとめとして、「子どもは依存しながら自立していく。依存するためには『つながる』ことが大切だが、今の子どもたちは人とのつながりの実感が乏しく、同世代からの疎外感を感じている。今のこの生きにくい社会のしわ寄せが、弱い立場の子どもにきているが、学校に行けなくなった子どもたちにとって、学校だけが出会いの場ではない。学習支援センター(適応指導教室)や、フリースクール、居場所など学校以外の出会いの場はたくさんある。ただそれを学校へ戻すためのバイパスと捉えてはいけない。そんな中で大人の役割は『仲間や社会へのつなぎ役』に過ぎない。そしてそのためには『その時代を生きていく子を応援するネットワー』」を作ることが必要だ」と話された。
 ♪あんだんて♪は子どもを直接支援するよりも、親ごさんや教育関係者など子どもをとりまく大人の支援を中心に活動しているが、大人同士がつながれば、子どもたちもつながるという実感を持っている。子どもも含めた、大きなつながりづくりのお手伝いを今後もしていきたいと、改めて思った。(さくら)


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