4人のレポーターの話を伺った。
1番目は、親子で発表してくださった。小2から不登校になり、中学は全寮制に自分の意志で入って、元気に過ごしておられる中1の子どもさん。小学校時代ほとんど登校していなかったが、本人の希望で担任や相談員の方がいっしょに自転車で琵琶湖を一周。子どもさんは半周で疲れて、伴走のお父さんの車で帰るが、これが「自信」になった。子どもさんの成長とともに両親、先生をはじめ、何人もの大人が精一杯関わってこられた背景がうかがわれた。
ものおじせず、言葉は少ないがはっきり思ったままを素直に話される子どもさんの姿に、周囲のあたたかい見守りを感じた。お母さんが、明るくさわやかに子どもの成長を話されていた。子どもに何も変化が見えない時期も、子どもの成長を信じて見守ってこられたのだろう。
キーワード・・・ 教師同士のネットワーク、いつ行ってもあたたかい学校
2番目は、U市の中学校で不登校加配を担当されているA先生。ご自身の子どもさんも不登校を経験されたので、実によく学校へ行っていない子どもの状態を理解され、親の気持ちも汲んでくださる。
・家庭訪問
本人と会えないけれど、1年でも2年でも家庭訪問しながら、母親とかかわっていき、やっと子どもと出会えたときの話に感動。あとで「ずっと先生の声を聴いてました」と。母親と先生の楽しそうな会話を聞いていたようだ。学校へ来れるようにという策ではなく、「人として出会いたい」という教師の気持ちが、子どもに届くと子どもは心を開く。それが、その後の子どもの成長する力になっていく。その具体例を聞かせてもらった。
キーワード・・・「会えなくても、会えている」「自分が会いたいから行く」(自分のなかに、「成果をあげたい」「無理して行ってあげてる」という意識があるときは、行かない。)
・教師同士の連携
担任や管理職、スクールカウンセラーなどとも、うまく連携をとり、それぞれの立場をコーディネートされている。担任の家庭訪問も「今は、行かないほうがいい」「今、行っておかなければ」とか、プリントも「これは今は見るとつらい」「これは、ぜひ見せて誘ったほうがいい」など子どもの状態に合わせてきめ細かく先生に伝えておられる。と言っても、いつも理解が得られるわけではない。時には、子どもの側に立ち、子どもの代弁者となって辛抱強く理解を求めることもあるようだ。
・行政の支援
不登校対策の会議・・・教育委員会の青少年課の担当主事が中心となって、加配教師、大学院生、不登校担当スタッフなどがしょっちゅう集まる。
メンタルフレンド・・・ふれあい教室で体験的に研修を受けてから、家庭訪問。指導の大学教官が、子どもにあわせてメンタルフレンドを選ぶ。
学校には来たけれど、しんどい子ども。過去にいっぱい傷ついてきて、今まで誰にも気づいてもらえなかった子ども。A先生はそんな一人一人のサインに辛抱強く、正面から向き合って関わっている。全校生徒、全担任が自分の担当とおっしゃる。毎日分身の術でも使いたいくらいの忙しさとも。本当は、家庭訪問の時間をとるのも至難。どうして、学校の先生たちはこんなにも忙しいんだろう。どこへ行っても人手が足りない現状が見える。なぜ人手は増やすことができないんだろう?
3人目は、小学校教師。ご自分のお子さんも不登校の経験がある先生。
低学年の不登校なので、先生が母親と連携しながら、最初は手紙を届けた。慣れてきたころけん玉や絵本をもって家庭訪問して子どもと遊ぶなど、不登校相談員とも組んで、子どもとかかわっていった。先生の奥様が、子どもの喜びそうなものをいろいろ気遣ってもたせてくださったのが印象的。
低学年は、不登校になると不安定になり、赤ちゃんがえりをすることが多い。先生に学校へ来るよう求められても、子どもは母親が外へ出られない状態になっていることもある。登校し始めたとき、本人が「1時間目だけ」というので、お母さんに1時間目が終わる時間に来てください、と。無理に引っ張らないのがよかった。
1年かかって学校復帰をしたが、この先生は、「この時期に登校できたことは、将来を見据えてよいことなのかとうか分からない。まだまだ家庭で蓄えなくてはならないことを残していないか・・・」と、子どもを主体とした成長に言及しているところが良かったと思う。
4番目、大阪府S市公立中学校学年主任の教師。不登校対策ではなく、「一人一人の生徒が輝く学校づくり」をされている。
・思いやりを育てるために・・・「何でも会議どこでも会議」朝の会議は廊下で。教師同士の「子ども観」をかぎりなく一致させる。(ひとりの生徒に関するあらゆる情報をみんなのものに)問題のない子はいない。どの子にも手立てを。
・学校っていいな・・・「友だちづくり」「先生との交流」。ゆったりと関わると、授業妨害、体罰なし。「心がひきつらない教室」
・授業第一、勉強好きに。・・・繰り返し、粘り強く。ノート指導。「早くできる」より「じゅうぶんわかる」
・親の思い、子どもの思いを伝える「橋渡し」としての教師・・・保護者が大好きな子どもを「もっともっと大好き」になり、子どもが大好きなお母さん、お父さんを「もっともっと大好きになる」ように。
・家庭訪問の禁句・・・「家庭でも指導してください」「なにも問題ありません。」「なにも言うことありません。」
・ゆっくり登校拒否できること・・・母親が元気になること。担任をサポートする教師を増やす。支障ない限り要望は受け入れる。
・ひとりで抱え込まない・・・教師がしんどいことは生徒もしんどい。教師同士がなかよしに。養護学級担任、保健室、相談室、生徒指導主事、スクールサポーター、介助員、技術職員、他学年の教師、卒業生、校長、教頭など、ひとりでもたくさんの持ち味を集め、力を借りる。
・学校を変える。・・・ひとりひとりの生徒を大切にする。
4つの報告から、学校もひとりひとりの教師がつくっているという当然のことに思い当たる。生徒への熱い思いが共有できる教師同士のネットワークができたとき、「学校」は子どもにとってすばらしい居場所になり得るようだ。(フェルマータ)
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