♪あんだんて♪レポート


宇治城陽久御山登校拒否校の子どもと育つ父母の会
500回記念例会
7月2日(土)
京都府立城南勤労福祉会館
  
 宇治市で親の会をされている「子どもと育つ父母の会」が第500回記念例会を開催された。私はしんどくなったときにはこの親の会に参加し、いつも元気をもらって帰った。本の販売を依頼されたこともあり、世話人をしているコーヒーカップと一緒に参加した。
会は「ムジーク・クライン室内合奏団」の演奏から始まった。病気で右手と言葉が少し不自由になったという指揮者のかたのユーモアのあるお話を交えての心温まる演奏に、気持ちがほぐれていくのを感じた。生の演奏は本当にいい。雨の中集まった70名近くの参加者の表情も、少しずつ軟らかくなる。

 引き続いて立命館大学文学部教授春日井敏之さんのコーディネートで「子どもの心を信じて」と題したパネルディスカッションが開かれた。パネラーは不登校経験のある青年、保護者(父親、母親各1名)、現職教師。今までの経緯やこの会に参加して感じてきたことをそれぞれの立場で話したあと、春日井先生から質問を中心に進められた。
 母親は子どもが休んだことの意味を「親自身が子どものことを知ることができた」と語り、子どもがアルバイトを始めて、職場の優しい人たちの対応の中で成長していったとふり返られた。そして子どもにもよく「あんたが好きやで」と声掛けしていたと語られた。また別の子どもさんの父親は、子どもの不登校を経て企業人としてどう変化したかという質問に、「新入社員教育の中でついていけなくて、自信をなくす人がいたときに、何とかしてやりたいという気持ちから、ご両親に子どもさんのしんどさを聞いてほしいと助言することができた」と答えられた。また何か問題が起こった時、企業と同じく対策さえすればうまくいくと思い、学校と掛け合ったりしたが、あきらめに似た気持ちかもしれないが、子どもに任せて信じること、見守ることが大切だと感じられたという。また、この会に通うことは自分自身の「薬」のようなものだと、心の揺れを親の会で受け止めてもらった経験も話されていた。このことはいつも私が感じていることだ。
 不登校経験のある青年は自らの中学校時代を「マラソンを100m走と間違って走った」とたとえて、斜線が引かれた成績表を受け取ったときのエピソードを話してくれた。その成績表を見たとき彼女は「すべてを否定された」と感じ泣き崩れたという。しかしそれを見た母親は「家での様子はお母さんが見ている」と、斜線の上から「5」と書いた。これが私の原点だと語っていた。また、学校に行けずに苦しんでいる時に、あるカウンセラーから1ヶ月の「登校禁止令」を出され、そのことで学校から解放され、本当の意味での気持ちの休息ができたという。親は学校に行かなくてもいいと口では言いながら、心の奥底ではできれば・・・という思いが捨てられない。彼女も登校できなかったときに母親が出すオーラがいやだったと話している。そんな時に第三者のこの言葉が与えた影響はとても大きかったと思う。彼女は自分の不登校の体験を通して、○か×かの選択肢しかなく、あいまいな時間が許せなかった自分から、「このぐらいでいいか」と自分の得意、不得意を認めて、折り合いがつけられるようになったと話す。その表情はとても柔らかで、彼女の今の気持ちを表しているようだった。
 また世話人もされている現役の小学校の先生は、現場の過酷な現状を話されたあと、ご自身が親の会に関わることでどう変わったかを話された。数年前に入院手術をされた際、病院と学校は「みんながひとりのためにチームワークよく関わる」という面でとても似ていると感じられ、学校もそういうところにしていかなければいけないと思われた。そうすることで子どもたちを見るときに、学校現場で現れることにはその背景にいろんなことがあり、それを少し距離を持ってみることができるようになり、「子どもがいとおしい存在」に見えたということだ。「たかが学校、されど学校」、一人ひとりの思いを大切にし「行きたい」と思える学校にするためには、学校外の力を取り入れ、キャッチボールする必要があると話された。さらに学校内外で自分を出せる場、それぞれが着地した場が認められることの必要性に触れられた。それは教育を受ける権利に関わること。親の会の声が行政を動かして、少しずつ認められつつある。

 その後休憩をはさんで、質問やフロアからの発言があった。参加者は保護者の他、教職員、大学生、高校生、支援者など多岐に渡る。このあたりからもこの会の存在の大きさを感じる。その中で印象的だったのはひとりの不登校経験者の話だ。彼がが親に支えられたと感じた瞬間は、「親が親の会に関わったとき」と話した。それは自分の問題を個人の病理としないで、社会病理だと親が思ってくれたと感じ、つながりに支えられていると感じたからだという。不登校になると何とか子ども自身を支えようと周囲が動くことが多いが、親が支えられることが子どもへの支えになるのだと改めて感じた。♪あんだんて♪の果たす役割も大きいね。
 最後に春日井先生が、自分が教師として頑張ってこられたのは「突然の感動が訪れるからだ」と教え子からの手紙を紹介された。子育ても同じだね、思いも寄らない子どもの変化、親はそれを待っている。まさにテーマの「子どもの心を信じて」待っている。でもそれはいつ訪れるかわからないから、時々しんどくなる。そんな時は何を大事にして生きてきたかを思い出してほしい、原点をふり返ってほしいと先生は話される。またその中でネガティブな感情、負の体験を出すことも必要だ。それを親の会で受け止めてもらうことの大切さを強調された。このことは私も実感している。この会を長年お世話されていた代表世話人の大久保さんや世話人さんたちに改めて感謝したいと思った。

 本もたくさん買っていただき、いい音楽と皆さんの暖かいお気持ちをいっぱい胸に詰め込んで、これでしばらくは穏やかにいられるな、そう感じながら家路についた。(さくら)

 今日の数々の感動に、世話人をさせてもらいよかったと思った。(コーヒーカップ)



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