♪あんだんて♪レポート


京都子どもと家族と支える会 10月2日(土)
 
 この会には教師、養護教諭、行政の子育て支援現場の方、また民間の支援団体やボランティア、学生などが参加し 2ヶ月に1回の定例会を開いている。今回はある不登校の事例を親御さんからお聞きして、しんどい思いをしている子どもたちを支援するために、学校でどう取り組んでいけばいいのかについて意見を交換した。

今の学校で子どもたちを指導する時、どんな視点で子どもたちと向き合うかということが大きなポイントだ。ひとつは服装や髪型のチェックで、違反があると家に返したりして教育を受ける権利さえ奪うような管理主義的な指導。その一方で、とにかくどんな状態であれ、子どもたちを全部受け入れて、一人一人の内面に寄り添う指導がある。どちらがいいかと言えば後者がいいのは一目瞭然だが、このような指導をするためには、おとなの側が子どもたちの心の中の声、内面の気持ちを感じ取るだけの心のゆとりを持つことが必要だ。しかし、5日制や教員の評価制度導入などで学校の先生はゆとりをなくしつつあるし、相変わらずの厳しい経済状況の中、家庭にもそのゆとりはなくなりつつある。この厳しい現状の中で、何を改善していけばいいのだろう。

ひとつは親同士のつながりである。例えば子どもが不登校になったときに、同じ経験をしている人がいるということを知ることは、大きな支えのひとつである。特に同じ学校の中で親同士が繋がることができれば、心強いし、学校に何かをお願いするときも意見交流ができる。この効果は、学校内に親の会がある宇治市などの事例を見ればよく分かる。しかし、学校内に親の会があるところはまだ少なく、他に不登校の子どもがいるかどうかを学校に問い合せても、プライバシーの問題として情報提供してもらえないことがほとんどのようだ。宇治市の場合も熱心な先生の取り組みがあって、実現したものだと聞く。いろいろな難しい条件はあるだろうけれど、いい取り組みはもっと柔軟な姿勢で取り入れていくべきではないだろうか(学校内の親の会については10月3日「登校拒否・不登校を考える京都連絡会世話人会」の日記参照)。

もう一つは、学校内での連携。スクールカウンセラーがほとんどの学校に配置されるようになったが、まだまだ有効活用されているところは少ない。学校長の裁量に任されており、スクールカウンセラーの位置づけや機能が学校によってまちまち、ということも問題だが、その原因のひとつは、スクールカウンセラーが臨床心理士という心理の専門家に限定されているところにもあるようだ。
 不登校の子どもたちを見ていると、その子自身に問題があるというよりも、その子の置かれている学校(クラスの)環境に問題があって行けない場合が多い。しかし心理の専門家としてのカウンセラーは、どうしても目の前のクライエントに問題があるというのを前提にしてかかわりがちだ。そのためまず「学校に適応できないその子に問題がある」という視点でかかわろうとするから、実情にそわなくて、その意見を生かし切れないということが起こってくるようだ。
若い、経験の少ない臨床心理士が派遣された場合は特に難しい。そこで、学校のことをよく知る教師カウンセラーの必要性も高まっているようだ。また虐待など家庭に力のないケースや軽度発達障害などのケースも増えてきており、社会資源を有効活用し、子どもを取り巻く環境を改善することができる「スクールソーシャルワーカー」の導入も期待される。

ある私立中学校では、「チーム会議」がもたれており、スクールカウンセラーと養護教諭、教師などがそれぞれのケースについて時間をかけて検討し、役割分担をする。そして子どもに直接接する教師を支え、力をつけてもらえるようにしているとのこと。また親にもその役割分担に参加してもらい、子どもを重層的に支えている。このことにより子どもも親も、見捨てられなかったという気持ちを持つことができるようだ。

しかしこの取り組みもここまでにするのに10年かかったということだ。長期にわたる地道な取り組みには頭が下がるが、私立だからできたのではないだろうか。数値目標を上げ、数減らしに躍起になっている行政が、時間のかかる地道な取り組みに目を向けるだろうか(数にばかり注意が向くと、一人一人の子どもの心に目が行かなくなる心配がある)。そんなことを思ってしまうが、今本当に必要なことに取り組んでいかないと、取り返しのつかないことになりそうだ。
現場では教師はもちろんスクールカウンセラーも養護教諭も、そして親も、この状況を何とかしたいと思っている。短期的な効果だけに目を向けずに、長期的な視点での支援に本腰を入れてもらいたい。そして忘れてはならないのは主役は子どもであるということ。子どもの気持ちを大切にして、学校という場が本当の子どもの居場所となるような取り組みが期待される。(さくら)



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