♪あんだんて♪レポート


近江兄弟社高等学校単位制課程 
公開教育研究会
9月25日(土)
近江兄弟社高校単位制課程
 
 不登校を経験した子どもを多く受け入れている近江兄弟社高校単位制課程で公開教育研究会が開かれた。お世話になっている春日井先生の講演があるので、お話を聞きたくて参加した。在校生の保護者会も兼ねているということで、約100名くらいの参加があったようだ。案内や受付を生徒が担当し、手作りのイベントという感じを受けた。

 第1部は立命館大学教授春日井敏之先生から「希望としての教育を−誰だって仲間の中で自分らしく輝きたい」と題したお話があった。
 まず最初に今の子どもたちは喜怒哀楽を上手く出せない、というところから話が始まった。喜怒哀楽は頭で理解して表現するものではなく、感情をぶつけて、受け止めてもらえるという手応えがあってこそ出すことができる。しかし、受け止めてもらえないと感情にふたをしてしまう。子どもと向き合って話をするときは、その子の感情を受け止め、その子の中の何に対する感情かを探す手伝いをすることが大切だ。また言葉で上手く語れないときも、そっとそばにいて、同じ空気を感じるだけでいい。そうして受け止めてもらえることで、自分の弱さを出すことができる。人に助けを求め、上手に甘え、誰かに受け止められた子どもは他人も受け止められる。この「弱さを出せる強さ」が、これから生きていくには大切なのではということだ。
 少年期は親子関係をベースにして育ち、思春期は同世代のつながりの中で育っていく。その同世代のつながりに必要なのが「居場所」だ。その居場所は、「安心できる・受容される場」であり、「成長できる場」、「未来に繋がる場」であることが必要だ。そこで本当に「おもろい」という体験を積むこと(この「おもろい」という体験は、たいてい仲間と何かやっている)が、自己肯定感の原点になる。
 親子関係から同世代の関係にいかにつなげていくか。今の若い世代は将来の展望を持ちにくい時代を生きているが、それでも「自己実現」や「社会貢献(ささやかな役立ち感)」の場を求め、そのために挫折や失敗を繰り返し、その中で人とのつながりを広げていく。親はそれを後追いで納得し、そのうちについていけなくなる。これが精神的な「子離れ」に繋がっていくということだ。

 先生は長い教師生活の中で、とても誠実に子どもと向き合ってこられただけあって、お話には非常に説得力がある。なるほどと頷くことばかり。しかも先生のいいところは、「みんなにはこう言いながら、自分の子どもに対してはこういう風に見られないですよ」とユーモアたっぷりに自分の失敗の話もされること。話を聞いたらその通りにしなければと肩に力が入ってしまいがちだが、当の本人が思うようにならないと聞くと力が抜けていい感じで話が聞ける。今回この講演を企画されたA先生が春日井先生の追っかけだという話が冒頭にあったが、私自身も何度聞いてもまた聞きたいという思いになる。それがこの先生の魅力だなあ。
 「子どもは矛盾する存在です。親のことを否定することはあっても、決して全面否定はしない。親は自分を支えてくれるものという意識もある。だから子どもの一挙一動に揺れることなく、見守ってほしい」、「不登校の子どもたちの投げかけてくメッセージ、『一度しかない人生を自分らしくいきたい』をしっかりと受け止めてほしい」との言葉に、参加者からの大きな拍手が送られ、みんなの顔がゆったりとほほえんでいるのを感じた。

 第2部は「単位制課程現状報告」から始まった。4月から日々の学校生活を切り取ったビデオに生徒たちの生のナレーションがつく。いろんな行事の様々なほほえましい光景に、笑い声もあがる。授業はどの先生(どなたも個性的なようだ)もいろいろ工夫を凝らしているようで、生徒たちが楽しく参加しているのが感じられる。またこの学校には「Learning Assistant(LA)」といって、大学生や大学院生のボランティアが学習の手助けやレクレーションをしたり、話し相手になったりしている。また担任は2人制で、その他に自分にあった先生を選ぶ「パーソナルチューター」という制度もある。さらにカリキュラムにも工夫があり、中学校時代の学習ができていなかったり、学校に出てきにくい場合など様々な状況に対応できるようになっている。来年度からは2クラスに増え、校舎も新築されるようだ。
 その後、入試に関する話が副校長からあった。この先生もなかなか情熱的だ。単位制課程の入試は、原則としてオープンキャンパスや学校説明会に参加し、その後事前面接、体験学習会と独自の選考方法をとっている。♪あんだんて♪のHPのイベント情報に日程を掲載しているので、興味のある人はのぞいてみてはどうでしょう。(さくら)



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