♪あんだんて♪レポート


全国病弱児教育研究会第9回大会
「You are not alone!ひとりで悩まないで!」
7月31日(土)
大津市ピアザ淡海にて

 記念講演「不登校からの回復過程においての、養護学校の役割と意義について」滋賀県の病院の小児科医N先生のお話から――。

 9年間に42人の不登校の子どもたちの回復過程を支援してこられた経験があり、「回復過程はよくわからないということが分かった」そうだ。心身症タイプの不登校は発症や経過に心理社会的因子が密接に関与している。回復過程で共通しているのは、1、腹のすわった親の存在 2、子どもの心の再建が一定水準までなされている 3、押し付けでなく外部の情報を与える 4、適度の高さのハードルを提示する 5、外の社会と子どもの間を仲介する人や機関がある・・・など、私の経験や考えと共通することが多かった。
 特に「腹の据わった親の存在」が一番にあげられていて、日ごろ親の会で親御さんが(特に母親が)支えられる重要性を感じていたので、裏づけされたようにうれしかった。

 「適当な登校刺激は必要」という考えは同じだけれど、どのあたりが「適当」か判断が難しいし、親や先生は焦って早まることが多いのでもう少し具体的な目安が必要と思った。たとえば、子どもが精神的に安定して外に出て行けるようになった段階で、とか。それから「登校刺激」というと私は「学校へ戻す」というニュアンスを感じて、自分が不登校の子どもになったようにプレッシャーを感じてしまうのだけど、学校も含めた「外部世界とのかかわり」というふうな意味でとらえたいと思う。

 医療機関の立場からは、児童精神科医学会の認定医は全国で約100人しかいないうえ、行政では認められていないことに問題を指摘された。この分野では欧米から半世紀遅れているそうだ。精神的に不調な子どもの多くは、児童精神科医ではなく、成人の精神科医、児童心理の専門家、小児科医のところへ行っている。

 社会的な背景としては、1、農業社会から工業社会に変わり親の手伝いをしなくなった。2、少子化で兄弟の付き合いが減った3、核家族になり祖父母とのかかわりがない 4、父性の薄弱さ 5、遊び場がなくなり、家の中の遊びが主流 6、学校の画一化教育 7、不況による生活の悪化、でも昔のような貧乏ではない。8、日本の伝統文化が消え、アメリカ文化に移ってきた 11、生きる価値観の消滅などが上げられた。
 こうした問題を解決するにはどのような対策が考えられるかというと、1.育児支援事業の拡大 2、母親同士の交流 3、子どもの遊び場を確保する といった子育ての環境をいかに改善するかという視点からの意見だった。これも、不登校を社会全体で解決していかなければ、という自分の思いに共通していて、ちがう立場の専門家も同じ結論になるのだと心強く思った。

 このように見ていくと、半世紀ほどの間にどんどん子育ての環境は悪くなっていて、現代の子育てがどんなに大変で親に負担がかかっているのか、よくわかる。もっと制度的に行政的に、大家族や地域が担っていた子育て機能を回復していかないといけないのだけど、子どものことにはあんまり予算をまわしてくれないな、というのが実感。まだまだ個人が個人のネットワークをつくって助け合っていかなければならないみたいだ。(フェルマータ)


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