エノキ  Celtis sinensis

赤熟した果実をつけるエノキの小枝

赤熟した果実をつけるエノキ (大阪府立大学 1999.8.3)

ニレ科* エノキ属 【*APGⅢ:アサ科】

Celtis : 甘い果実のなる木 sinensis : 中国の

エノキは、ケヤキムクノキとならんで大阪の公園や神社で極めて普通に見かける落葉高木です。この3種にアキニレを加えた4種をおぼえれば、大阪平野で見かけるニレ科の樹木はほとんど完璧に分かります。

 エノキは葉に3行脈が目立つこと、主脈をはさんで左右が非対称であることなど、形がムクノキと類似し、特に実生から出てきた勢いのよいシュートにつく葉は形も大きく、ムクノキそっくりになるときがあります。しかし、よくみると、葉の縁につく鋸歯(きょし)がエノキでは葉の半分(ときには1/3)より先端につくのに対し、ムクノキの鋸歯は葉の全縁につきます。 そして何よりも、エノキでは側脈の先端が葉の縁に届かず急に曲がってしまう(葉縁に流れる)のに対し、ムクノキでは鋸歯の中に入って先端に達していますから、この違いに注目すれば葉っぱ1枚で両者を区別できます。

エノキの若木 ケヤキとエノキは葉の形が違いますからまず混乱することはありません。しかし、樹肌はどちらも平滑で、多少似ています。ただ、エノキの場合、幹や太い枝に短枝状につく短い枝が著しい二列性をしめし、その枝の落ちたあとが右の写真(大阪府立大学 1999.9.9)のように小さなコブ状になってきれいに2列に並んでいるという特徴があり、ここに注目すると葉のない冬でも両者を区別することができます。ちなみに、ムクノキの樹肌には縦に走る白いスジが目立っていますので、少しなれれば、樹肌だけでも3種の区別は困難ではありません。

エノキはたいへん大きな木になりますので遠くからでも目立ち、また、木陰が旅人の休息場所を提供することもあって、昔の街道筋の一里塚によく植えられました。いまでもところどころでその名残を見ることができます。エノキは漢字で「榎」と書きますが、これは夏に繁るという意味で作られた和字だそうです。