アキニレ  Ulmus parvifolia

アキニレの枝葉

アキニレの枝葉(大阪府立大学:1999.8.19)

ニレ科* ニレ属 【*APGⅢ:ニレ科】

Ulmus:ニレの木 parvifolia:小さな葉をつけた

アキニレは大阪近辺の河原などで比較的よく見かけるニレ科の木です。 アキニレがあるのならハルニレもあるのかしら、と聞かれたことがありますが、 たしかにハルニレもあって、こちらはかなり寒い地方の樹木で、アキニレよりももっともっと 大きくなります。近畿地方にもまれに自生するそうですが、わたしは自生を見たことがありません。 わたしが初めてみたのは北大の植物園の巨木でした。

アキニレは日本のニレ科植物の中では一番小さな葉をつける木です。種名の parvifolia というのは、小さな葉をつけた、という意味です。細い枝をたくさん不規則に出し、 それにこまかな葉がたくさんつくものですから、一見まとまりのない樹形になっています。この点、 同じニレ科のケヤキ(ケヤキ属)が大きく上空に枝を広げ、傘のようなまとまった形をつくり、 好まれて公園樹や街路樹としてよく植えられるのと大きな違いです。しかし、まとまりのない、 あばれたような樹形をとるのは木が若いときだけで、木が大きくなりますと、こまかな葉で密に 形づくられた樹冠が柔らかな雰囲気をつくり、ほかに類を見ない独特の樹形になるので、 わたしのたいへん好きな木の一つです。

大阪府下でごく普通にみかけるニレ科の樹木にはアキニレ、ケヤキのほか、ムクノキエノキが あります。何も知らないまま、目の前にある木がニレ科のものかどうかを判断するのはけっこう むつかしいものですが、この科の特徴のひとつとして、程度の差こそあれ、一枚の葉の形が主脈 (葉の真ん中を通る太い葉脈)をはさんで左右非対称になっていますので、一つの手掛かりになるでしょう。 ただし、ほとんど左右が対称の葉もありますから、たくさんの葉を見ることが必要です。 つぎに、この4種を区別する目安をまとめておきましょう。

1 葉の基部に3本の葉脈が特に目立つ(3交脈)
 2 側脈は鋸歯に終わる;葉がザラザラしている; 果実は丸く1.5cmくらい;黒く熟す → ムクノキ
 2 側脈は葉縁に流れる;果実は丸く5mmくらい;黄~赤色に熟す; 葉はスス病で黒く汚れている事が多い → エノキ

1 葉は羽状脈で7対以上;葉縁に鋸歯が目立つ;成木の樹皮が板状にはげる
 2 葉は大きい;大きな傘形の樹形になる → ケヤキ
 2 葉は小さい;細い枝が不規則にたくさん出る;翼果をつける→アキニレ