1993年12月8日発売 東芝EMI TOCT-8260
1998年9月23日発売 東芝EMI TOCT-10434
プロデューサー:田島貴男
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「ベストアルバム」と銘打たれていますが、アルバムの曲をそのまま収録したのはわずかに2曲(4.と7.)。新曲2曲、"New Recording"5曲、"New Version"2曲と、事実上のニューアルバムと言ってもよい内容です(11.は、アナログ盤に収録されていたリミックス)。 『EYES』で劇的な成長を遂げた田島の新ヴォーカル・スタイルは、ここでかつての曲にあてはめられたことで、バンドのスタイルにまで昇華されました。 そして、大きく開きつつあったスタジオとライヴの差も大きく埋められることになります。オリジナル曲とまったく違うこのアルバムのアレンジは、当時のライヴのアレンジを基調としています(もちろんこのアレンジは、先にあげた声の変化も重要な要因となっているのですが)。また、新しいスタイルで以前の曲を蘇らせるというこのアルバムのコンセプトは、後の『XL』にも通じるものがあります。 田島の音楽のこの新たな展開は、バンドとしてのオリジナル・ラヴを大きく変えてしまいます。半年前にリリースの『EYES』ではもっとも「民主的」なアルバムの製作をしていましたが、このアルバムから次第にオリジナル・ラヴ本来の姿である田島貴男のソロ・プロジェクトという方向へと流れ始めます。 メンバーもこのアルバムを挟み大きく変動します。'93年夏ツアーからメンバーとなった小松秀行がレコード初参加。メジャー後はじめてベースの正式メンバーなった彼の参加は、バンドのグルーヴにも影響を与えます。一方で、このアルバム製作の直前にサックスの森が脱退。また、このアルバム発表後のツアー終了と同時に、バンドのグルーヴの屋台骨だったドラムの宮田と最古参メンバーだった村山が脱退します。 オリジナル・ラヴの変化は、オリジナルアルバムだけを聞いていると捉えどころのないものなのですが、このアルバムのおかげで変化の過程を伺うことができます。このアルバムは、バンドのグルーヴの質の変化を捉えた貴重なドキュメントともいえるでしょう。 「接吻」のヒットにより、このアルバムでオリジナル・ラヴを知り、そしてのめりこんだ人は多いのですが、この充実した内容からすれば当然のことでしょう。オリジナル盤とともに、必聴の一枚です。 |
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