第1章 怒りっぽい隣人 (6)
最後に、ハリソン氏はジンジャー(しょうが)という名前のオウム(8)を飼っていた。アヴォンリーの住人は、オウムなどという南国の鳥は飼ったことがなかったので、オウムを飼うなんて褒められたことではないと思っていた。またそのオウムときたら! ジョン・ヘンリー・カーターの言葉を信じるなら、あんなに罰当たりな鳥もいないという。口汚い言葉で罵(ののし)るからだ。他に働き口があれば、母親のカーター夫人はすぐにでもジョン・ヘンリーをよそへ連れて行っただろう。そのうえジンジャーは、ある日、ジョン・ヘンリーが鳥カゴの間近でかがんだとき、首の後ろに、ぱくっと噛みついたのだ。カーター夫人は、不運なジョン・ヘンリーが日曜ごとに帰ると、誰彼となく傷跡を見せた。
アンの目の前に、ハリソン氏が怒りのあまり口もきけず立ちはだかったとき、こうしたもろもろすべてがアンの脳裏をよぎっていった。彼は背が低く、太っていて、はげていた。たとえどんなに上機嫌そうなときでも、美男子には見えないだろう。ましてや今、その丸い顔は頭に血がのぼって紫色にそまり、青い出目は顔から飛び出さんばかりだ。こんなにみっともない人は見たことがないとアンは思った。
突然、ハリソン氏が怒鳴った。
「もう我慢ならんぞ」早口でまくしたてた。「もう一日たりともな、聞いているのか、小娘。なんということだ、これで三度めだぞ、若造め……三度めだからな! 忍耐は美徳だなんて言うが、もう我慢ならん(9)。この前あんたのおばさんに、こんなことは金輪際、起こすなよと念を押したんだ……それなのにまたやってくれた、またしでかしたんだ。いったいどういうつもりだ。それをききに来たんだ、この小娘」(つづく)
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